たわいもない話

かくすればかくなるものと知りながらやむにやまれぬ大和魂

生きる

2020年12月23日 11時15分45秒 | 雲雀のさえずり

私は、父を越え、母に近づいた。


真夜中、ふと、目が覚めると、カーテンの隙間から


星明かりが、幽かに差し込んでいた。


私は、松煙墨で塗りつぶしたような天井を、ぼんやりとながめていた。


「人間は、精が抜けると、死にとうなるんじゃけ」


“宮本輝・幻の光”の一節が脳裏に浮かんだ。


以前、誰かから訊いたことのあるようなフレーズである。


私の記憶は、ビデオテープの早送りのように、幼少時代へと遡った。


飲んだくれの亭主と、六人の子供を育てる母がいる。


母は、空の米櫃に凭れかかり、


「もう、精も根も尽きはててしもうた」


と、呟いている。


母は、この苦境を、どう乗り切ったのだろうか。


もう、母に問うすべは、私にはない。


精根つくしても、問うすべはない。

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