利権に群がるイラク戦争
8月31日(日)。 わたしは今、新前橋駅を見下ろす福祉総合センターに来ています。 8Fのロビーからは、北に群馬県庁と赤城山を間近に 眺望が楽しめます。
日本全国をまわり、戦争の悲惨さを訴えているアメリカ人がいます。
アッシュ・ウールソンさん(26歳)。
私たちは、イラク戦争から帰還した元兵士、ウールソンさんの講演会を開くため、ここに集まりました。
垂れ幕、案内板、カンパ箱、書籍、チラシ、アンケート箱など、今日のために準備した 手作りの品々がテーブルに山盛りです。
まずは 気合い入れ!
試行錯誤のステージ作り
ウールソンさんは大学進学を考え、学費のくめんに苦慮します。 高校在学中に軍のリクルーターが訪れ、ウールソンさんに軍隊(州兵)に入ることを勧めました。
ベトナム戦争以来、徴兵制度が廃止されたアメリカでは、軍に入隊すると学費を国防総省が負担するという制度が始まりました。 ウールソンさんはこれを利用することにしたのです。
軍隊といっても、ウイスコンシン州の州兵ですから、訓練は一年間に30日だけ。 災害が発生した時に派遣される程度ですから、戦地に行って鉄砲を持つことなど無いはずです。
2003年、ウールソンさんに極秘任務が与えられました。 何も知らされないまま、たどり着いたのは開戦直後のイラクでした。
オープニング企画は、高校生と専門学校生の担当。 パワーポイントを使って イラク戦争の経緯を紹介。
ウールソンさんらは、常に M16ライフルの銃口を 子供たちに向けていました。 「 イラクの子供は手榴弾を隠し持っているから気をつけろ! 」 と、上官に繰り返し言われていたからです。 けれど、そんな話は他では聞かないし、イラクの子供たちは天使のように純心だったと言います。
ある日、アメリカの軍用車がイラクの少女とヤギ2頭を ひき殺す事故が起きました。 その補償金を少女の家族に届ける任務が、ウールソンさんたちに与えられました。
ヤギは1頭あたり200ドルの値が付きました。 少女の命には100ドルの値が付きました。 アメリカ軍は少女の人権を無視し、「 少女は 一生かかってどれくらい稼げるか 」 で、金額が決められました。
交渉のため、上官と通訳の護衛に十数名の武装兵がその家を囲みます。 沢山の銃口が向けられる中、前日に娘を殺された父親が、たった一人で家から出てきました・・・。
何という悲しい光景でしょう !
「 この人たちを苦しめているのは、自分たちなのではないのか? 」 ウールソンさんは次第にそう思うようになったと語ります。
講演会を盛り上げようと集まってくれた、群馬子供の人権宣言合唱団のみなさん
私は今回の講演をきっかけに、ブッシュ政権について調べる機会が増えました。 そして、未だかつてこれほど私利私欲の、利権の絡んだ戦争は無かったことを知りました。
その幾つかを、キーワードに沿って紹介します。
ハリバートン社・・・ 国防総省を相手に、燃料の供給と建設会社として契約している会社。 チェイニー副大統領がかつて社長を務めていた。 共和党議員に献金し、政府から利率の良い契約を多く請けています。
イラク戦争では、世界中から貧困労働者を集め、イラク駐留軍の後方支援の人材派遣をおこない、政府から高額な契約金を得ています。
ブラックウオーター社・・・ 戦争請負い会社。 自社の訓練施設で養成した兵士をイラクに派遣して、政府から高額な契約金を得ています。
軍人ではなく民間人なので、軍法会議にかけられる事も無く、強盗も殺人も、やりたい放題。
PTSD (心的外傷後ストレス障害)・・・ イラク、アフガニスタンから帰還した米兵の60万人が うつ病だといわれています。 社会復帰が難しく、自殺者が後を絶ちません。 また、ホームレスの 1/3は 帰還兵です。
全国を講演してまわっている アッシュ ウールソンさん。
世界のどこかで紛争が起こると、アメリカが軍事介入してきます。 高額な武器を買わせ、内戦を激化させます。 軍隊と一緒に、上掲した商人たちが現地に入り、私利私欲をむさぼるのです。
同時に、アメリカは
イラクの油田を狙っています。 ブッシュ大統領がイラクに戦争を仕掛けた本当の理由は、「 イラク油田の経営権を フセイン大統領から奪い取ろう 」 というのが狙いでした。 そのために100万人ものイラクの一般人を殺し、4000人のアメリカ兵士を失いました。 戦争はまだ続いています!
静まりかえる場内、ウールソンさんの声だけが 響きます。
ブッシュ政権は日本に対して、軍事援助を求めています。 その邪魔者が、日本の 「
憲法9条 」。
これを改正させ、自衛隊を米軍と一緒に戦争させようとするアメリカ。 けれどそうなった時、日本とアジアの平和は失われてしまいます。
日本人の税金は、死の商人を潤わせる事になるだけ。 「 聖なる戦争 」、「 正しい戦争 」 なんて、ただの飾り言葉です !
「 こんな醜い現実を、知らないままでいた恐ろしさ。 知ってしまった恐ろしさ。 そして、知ってしまったのに、何もしないでいる恐ろしさ 」。 ここ数日、心の整理をつける糸口を探している。
ウールソンさんたちの全国講演ツアーは、9月中旬まで続きます。。。