ヨナの福音こばなし帳

オリジナルのショート・ストーリー。一週間で一話完結。週末には、そのストーリーから人生の知恵をまじめにウンチクります。

自由だから愛(5)

2008-11-21 | 自由だから愛/ お父さんの橋
朝、鞭で叩かれたからだは、まだ痛みがあります。その上、一日中、炎天下で働き通しでした。しかも、奇妙な主人が現れました。相場の2倍も出して、自分を買ったのです。きっと、とんでもないことが起こるに違いありません。その女奴隷は、からだの震えを押さえることができませんでした。

「娘さん。僕がだれだかわかりますか?あなたが小さかった頃、あなたの両親が働いていた家の息子です。逃げ出した後、ずいぶん探しましたが、見つからないので、あきらめました」

やっぱりそうです。この主人は、両親が逃げ出したその罰を自分に与えようとして、自分を買い取ったに違いありません。いったい、どんな仕打ちを受けるのだろうかと考えるだけで、その女奴隷は、恐ろしさで倒れそうになるのを必死で我慢しました。

「僕は、あなたのことを心から愛しています。あなたが奴隷でいるなんて、そして鞭で打たれるなんて、とても耐えられない。だから、あなたを買い取ったのです。あなたが自由になるためだったら、一日の畑仕事なんて、なんでもありません。どれほど、あなたのことを愛しているか、わかってください」

その女奴隷は、自分の目の前で、何が起こっているのか、よく理解できませんでした。

「僕があなたを買い取りました。これがあなたの奴隷の書類です。これをあなたに渡します。もう、あなたは自由です。だれの奴隷でもありません」

若者は、その女の人を見つめながら、話し続けました。

「あなたは、僕の奴隷ではありません。だから、僕の言いなりになる必要はないのです」



そして、若者は、大きく、息をひとつして、
それからはっきりと言いました。

「娘さん。僕はあなたを心から愛しています。どうぞ、僕と結婚してください。僕のできる全てをもって、あなたを幸せにします」


その後、二人は結婚し、幸せに暮らしました。

(次回は、このストーリーから、人生の知恵をまじめにウンチクります。)