ヨナの福音こばなし帳

オリジナルのショート・ストーリー。一週間で一話完結。週末には、そのストーリーから人生の知恵をまじめにウンチクります。

木こりの娘(4)

2008-11-14 | 花さかじいさんII/ 木こりの娘
手紙には、次のように書かれていました。

「親愛なる娘さん。
突然、このような手紙をお渡しすることをお許しください。あなたにとっては、突然のことであるかもしれませんが、私にとっては、あまりにも長い時間でした。
あの日、私は、お城には内緒で、ひとりで馬に乗り、森に入りました。いつもお城から出るときには、必ず、兵隊が一緒でしたから、自由に森を駆け抜けてみたかったのです。
森の中をしばらく馬でかけた後、私は、馬を休ませ、また自分も一息入れようと、馬を止めました。そして、ハンカチを取り出して、額の汗を拭こうとしたとき、風にハンカチをさらわれてしまったのです。
そこにあなたが現れました。ハンカチを差し出すその姿のしとやかで清楚であったこと。お城にも美しい女の人はたくさんいますが、みんな自分の美しさを競い合ってばかりいるのです。そんな女性たちに、私は飽き飽きしていました。
ハンカチを受け取るときに、あなたの手が私の手に触れた、その瞬間に、私の心は、まるで魔法にでもかかったように、あなたへの思いでいっぱいになってしまいました。
私は、その思いを、王様であるお父様やお母様に、話しました。けれども、身分が違うというそれだけで、それ以上話を聞いてくれませんでした。そんなことで、あきらめるようであれば、本当の思いではありません。私は、何度も何度も、お父様やお母様に話をしました。
1年、また1年経ちました。そして、ついに、お父様とお母様に、私のあなたへの思いを理解してもらうことができたのです。
X月X日、私たちは、お城で結婚式をしましょう。
衣装も何もかも、必要なものは、私が用意しています。あなたは、その日に、ただお城に来てくださりさえすればよいもです。もちろん、あなたのお父様、お母様も、ご一緒にお越しください。

だれよりもあなたを愛する
王子より。」

(つづく)