ヨナの福音こばなし帳

オリジナルのショート・ストーリー。一週間で一話完結。週末には、そのストーリーから人生の知恵をまじめにウンチクります。

続・放蕩息子(6)ウンチク編

2008-10-26 | 欲しがり屋のヒヨコ/ 続・放蕩息子 
今回のストーリーは、知る人ぞ知る、イエス様のたとえ話の中で一番有名な(?)「放蕩息子(ほうとうむすこ)」のお話が元ネタです。ヨナ的にアレンジしてみました。(放蕩息子のはなしは、ルカの福音書15章にでています)


1.自分勝手なすがたには、簡単に、影響される。

三男は、次男のやっていることを見て、「よし、俺も」と思って、お父さんから財産を分けてもらったわけです。街では、彼らは別々でしたが、まあ、やることといえば相場が決まっているのは、お互い経験済みですね。
他の人が自分勝手に何かやっているのを見ると、なんか、その人は得をしているように思えてくる。そして、自分もやりたくなる。自分勝手なすがたには、簡単に、影響されて、流されてしまいます。


2.悪いことも、慣れてしまうと、普通になる。

次男がいなくなった後も、三男は、豚の飼育小屋で生活をしていました。最初は、とても人の住むところではない、そう思えた小屋での生活も、慣れてしまうと、それはそれで、いいように思えてくるから、よく言えば、人の適応能力はスゴイ!、ということになります。
初めて、親や先生にウソをついて、ごまかしたときのことを思い出してください(経験のない人は、今からやらなくても良いですよ)。自分が言う一言一言に、震えるくらい、ドキドキしたと思います。ところが、2回目3回目となると、それほどドキドキしません。そして、10回目くらいからは、人を騙すことが楽しくなる(?)。


3.救いを知っている人だけが、救いを伝えられる。

次男は、一大決心をして、お父さんのところに戻ります。そして、自分が期待も予想もしていなかったことですが、もう一度子どもとして迎え入れられ、幸いな生活をお父さんと一緒にするわけです。
この次男は、自分と同じ豚の飼育小屋でひもじい生活をしていた三男を思い出しまします。そして、三男を迎えに行きます。次男の体験を聞いて、三男は、安心して、期待をもって、お父さんのところに帰る決心ができました。

もし、次男が三男に会いに行かなかったら、豚の飼育小屋での生活になじんでしまった三男は、そこを離れることはなったでしょう。
もし、次男ではなく、長男が迎えに来たとしたら、自分が帰ったとき、お父さんがどのようにして迎えてくれるか、きっと不安で不安で仕方なかったことでしょう。

救いを知っている人だけが、救いを伝えられる。
反対に言うと、救いを知っている人が、黙っていたら、他の人は救われないのです。


わたし(イエス・キリスト)は、あなたに天の御国のかぎを上げます。
(マタイによる福音書 16章19節)

私たちのしていることは正しくない。きょうは、良い知らせの日なのに、私たちはためらっている。
・・さあ、行って、王の家に知らせよう。
(列王記第二 7章9節) 


次回からは、新しいストーリーです。アクセスしてくださいね。

放蕩息子Part2 もヨロシク! ←クリックすれば読めるよ


続・放蕩息子(5)

2008-10-25 | 欲しがり屋のヒヨコ/ 続・放蕩息子 
お父さんのところに立ち返った次男は、幸せいっぱいの毎日でした。

そんなある夜、寝床の中で、彼は、ふと、思い出しました。

「そうだ。弟は、いまだに、あの豚の飼育小屋で、朝から晩まで、水を運び、餌を運び、豚の排泄物を運び、また水を運び、餌を運び、そして豚の排泄物を運んでいるじゃないか。そして、仕事が終わった夜に、その日稼いだわずかのお金で、ほんの少し貧相なものを一口二口食べることができるだけで、今、きっとおなかをすかせているにちがいない」

彼は、弟のことを考えると、いてもたってもいられなくなりました。

そして、もう寝てしまったお父さんをもう一度起こして、そのことを話しました。

彼は、次の日、夜が明ける前に、家を出発し、街へと向かいました。今回は、お父さんの元を離れるためではありません。大事な弟を迎えに行くためです。お父さんも、次男に一切の希望を寄せて、三男のところに送り出しました。


街に入り、豚の飼育小屋についた次男は、すぐに弟を見つけました。

そして、お父さんがどんなにして自分を迎えてくれたか、
    お父さんと一緒に生活できるのとがどれほどの喜びか、
    自分がそれまでしてきたことがどれほど間違いであったか、
弟に、話しました。

弟は、その話にそれほど興味を持ちませんでした。すっかり豚の飼育小屋での生活に慣れてしまった彼は、それはそれで良いと思っていたからです。

それでも、次男は、決してあきらめませんでした。何度も、何度も、弟に、お父さんのこと、お父さんが自分を息子として迎え入れてくれたこと、お父さんと一緒の生活、それらを一生懸命話しました。


ついに、弟も、決心がつきました。
「兄さん。わかった。僕もお父さんの元に帰るよ。
 でも、本当に、お父さんは、僕のことを迎えてくれるだろうか」

「何も心配ないよ。おまえのことも、同じように、息子として迎えてくれるよ。
 だって、僕たちのお父さんなんだから」

二人は、豚の飼育小屋を後に、お父さんの家に向かって歩き出しました。


二人が家に着いたときには、お父さんは、もうすでに、盛大な祝宴の用意をして、二人の帰りを、今か、今かと、待っていました。次男が帰ってきたときには、すねていた長男も、今回は、とても喜んで迎えてくれました。

(週末は、このストーリーから、人生の知恵をまじめにウンチクります。)

続・放蕩息子(4)

2008-10-23 | 欲しがり屋のヒヨコ/ 続・放蕩息子 
さて、お父さんは、次男が出て行き、そして三男が出て行って以来、二人のことを忘れたことは一日たりともありませんでした。毎日、遠くが見渡せる丘に登っては、街へと続く道を見て、二人がどうしているかと案じていました。

その日も、お父さんは、いつものように、丘に登り、道を見ながら、出て行ってしまった二人の息子のことを思い巡らしていました。

お父さんは、遠くに小さな人影を見つけました。あれが、自分の息子であったら、どんなに嬉しいかと、さらに二人の息子への思いは強くなりました。

だんだん、その人影は、近づいてきます。

小さな黒い点であったのが、
  人の形になり、
    服の色がわかり、
      歩いている様子がうかがえ、
        ついには、顔がわかるにまでなりました。

お父さんは、目を凝らして、じっと見つめました。

そうです。出て行った、あの次男です。すっかりやせ衰え、汚い服を着て、力なく歩いている姿には、以前の面影はありません。でも、確かに、次男が帰ってきたのです。

お父さんは、丘を駆け出しました。手を振りながら、大きな声で名前を呼び、お父さんは、帰ってきた次男に向かって走り寄りました。彼を抱きしめ、口付けしました。

次男は、言いました。
「お父さん、本当にごめんなさい。僕は、神様に対しても、あなたに対しても、罪を犯しました。あなたの息子として受け入れられる資格のない者です。それでも、あなたのところで生活したい、あなたのいるところであなたと一緒に生きたいのです。もうあれこれ何も意見しません。ただあなたの思いのままにしてください」

お父さんは、家の雇い人たちを呼んで、言いました。
「次男が帰ってきた。急いで風呂の用意をして、最高の服を出してきなさい。私の息子のしるしである、指輪をはめさせなさい。そして、最上の子牛をほふって祝宴の支度をしなさい」

次男は、またお父さんのところで生活を始めました。雇い人としてではありません。もちろん、豚飼いとしてではありません。息子としての立場が、もう一度、お父さんから与えられたのです。

次男は、お父さんと一緒に仕事をし、お父さんと一緒に生活をすることが、こんなに嬉しいことだとは、夢にも思ったことはありませんでした。彼は、ただ食べるものがあり、寝るところがあることだけで、十分だと思っていました。けれども、今、自分は、もう一度、お父さんの息子として受け入れられたのです。彼は、喜びいっぱいで、毎日を過ごしました。

(つづく)

続・放蕩息子(3)

2008-10-22 | 欲しがり屋のヒヨコ/ 続・放蕩息子 
ふたりは、豚の飼育小屋の中で、朝から晩まで、働きました。水を運び、餌を運び、豚の排泄物を運び、また水を運び、餌を運び、そして豚の排泄物を運び、それを一日続けるのです。豚たちは、いつも餌を食べています。でも、ふたりは、仕事が終わった夜に、その日稼いだわずかのお金で、ほんの少し貧相なものを一口二口食べることができるだけでした。


ある日、あまりにもおなかがすいた次男は、ついに、豚の餌を食べてみました。けれども、一口、口に入れると、それはとても食べられる味ではありません。

彼は、力尽きて、そこにしゃがみこんでしまいました。


そして、彼は、我に返りました。

「お父さんのところには、雇い人たちでさえ、食べきれないほど食事があるというのに。僕は、ここで、豚の餌を食べるまでに落ちぶれて、そして、飢えて死んでしまいそうになっている。
そうだ、お父さんのところに帰ろう。
そして、お父さんにこれまでのことを謝って、雇い人の一人として、置いてもらおう」

彼は、豚の餌の入ったバケツを両手から放し、弟のところに近づいて、その決心を伝えました。そして、弟も一緒に、お父さんのところに帰ろうと、誘いました。


ところが、三男は、お父さんのところに帰ろうとしないのです。この三男、次男の話には、いっこうに耳を傾けようとしません。次男がどれほど話しても、三男の気持ちは変わりませんでした。

ついに、次男は、ひとりで、お父さんのところに帰ることにしました。

(つづく)

続・放蕩息子(2)

2008-10-21 | 欲しがり屋のヒヨコ/ 続・放蕩息子 
そんなある日のことです。その豚の飼育小屋に、ひとりのみすぼらしい男がやってきました。彼は、どうせまた、自分のように仕事が見つからない、あぶれ者がやってきたくらいにしか思わず、ダラダラと仕事を続けていました。

「お願いです。僕に仕事をください。何でもやります。もう、ここ以外に、仕事はないんです。お金がなく、何日も何も食べていないんです。お願いです。僕に仕事をください」

彼は、その声に、はっとして、その男を見ました。

なんとその男は、自分の弟だったのです。

次男 「えっ、おまえ、なんでこんなところにいるんだ。しかも、そんな身なりをして。おまえ、お父さんのところにいたんじゃないのか」

三男 「あぁ、兄さんでしたか。実は、兄さんがお父さんから財産を分けてもらって、家を出て行った後、僕も、お父さんから財産を分けてもらって、そしてこの街に来たのです。

街には、僕の心をひきつけるものが、それはたくさんありました。初めのうちは、慎重にお金を使っていたんですが、そのうち、あれもこれも欲しくなると、とにかく買わなくてはいられなくなってしまったんです。

たくさんあったお金も、使えば減っていきました。

僕は、残りのお金を元手に、商売を始めました。けれども一度ついた遊び癖は、そう簡単に抜けはしないですよ。難しいことが起こると、すぐ投げ出してしまいます。そして憂さ晴らしに、やけ食い、やけ飲み、やけ買いです。気持ちがおさまると、また新しいい商売を始めますが、やっぱりうまくいきません。

そうこうするうちに、あれほどあったお金は、もうほとんどなくなってしまいました。

悪いことに、歴史的な大飢饉が起こりました。僕は、なんとか生き延びようと、何でもいいからとにかく仕事を見つけようとしました。けれども、どこにも仕事はありません。

そして、最後にたどりついたのが、ここ、っていうわけです」

次男は、豚の飼育小屋の持ち主に、三男も仕事ができるように頼みました。それからは、ふたりで、その豚の飼育小屋で働きました。

(つづく)