ヨナの福音こばなし帳

オリジナルのショート・ストーリー。一週間で一話完結。週末には、そのストーリーから人生の知恵をまじめにウンチクります。

こすずめピヨの冒険(7)ウンチク後編

2007-09-09 | あきこの10円玉/ こすずめピヨの冒険
部屋の隅に追い込まれたこすずめは、本当におびえきっていました。これ以上の恐怖はありえない、そんな感じでした。まったく身動きすらできない状態でした。

でも、でもです。私は、そのこすずめをいじめようとして追い回したのでも、食べようとして捕まえたのでもないのです。

何とか出口の方向を教えようとして、散々身振り手振り、やってみましたが、ダメでした。どんなに優しく言葉で説明しても、あのこすずめ君、ちっとも聞いてくれませんでした。捕まえる時だって、つぶさないように、傷つけないように、最善の注意を払って、捕まえました。

あのこすずめにとっては恐怖以外の何物でもない、私の一つ一つの行動は、実のところ、こわがる必要などまったくなかったのです。すべては、「このこすずめを自由にしてやりたい」、そのための行動でした。


飛んでいったこすずめのことを考えていると、
はたと、「自分はあのこすずめみたいなもんだな」と、気がつきました。

神様は、あの手この手で、最善から最善へと、私を導こうとしてくださっているのに、
私のほうは、神様のことばなど聞きもしないで、ちっぽけな自分の頭で考えて、「最悪だー」と感じ、
神様が用意してくださっている出口に目も向けず、勝手な方ばかりに行って、結局袋小路、どんずまり、疲れきって、うずくまって・・
そして、起こることすべてが、なにか、悪いことばかりに思えてくる。

でも、その原因は、私が、私のことを命がけで愛してくださっている神様を信頼しないから、なんです。神様を信頼していれば、全能の神様の手に握られている、これほど安心なことはないのにね。


五羽の雀は二アサリオンで売られているでしょう。
そんな雀の一羽でも、神の御前には忘れられてはいません。
それどころか、あなたがたの頭の毛さえも、みな数えられています。
恐れることはありません。
あなたがたは、たくさんの雀よりもすぐれた者です。
(ルカの福音書 12章6-7節)


次回からは、新しいストーリーです。アクセスしてくださいね。

こすずめピヨの冒険(6)ウンチク前編

2007-09-08 | あきこの10円玉/ こすずめピヨの冒険
このストーリーの(5)の部分は、本当にあったことなんです。

普段から、鳥の鳴き声が聞こえない場所ではないのですが(といっても、いつも聞こえているほどでもありません)、そのときは鳥の声があまりにも近いので、「これは、どっかに迷い込んだな」、と思って、家の中を探したわけです。

リビングで見つけた鳥は、ストーリーのとおり、こすずめでした。単に疲れている、というよりは、弱っている感じでした。羽の様子も、あまり健康そうではありませんでした。きっと、元々弱く生まれた上に、飛ぶのもヘタ、餌を見つけても他の鳥に取られる、そんな毎日だったのではないでしょうか。自然の厳しさを思います。

そこへもってきて、わけのわからないところに迷い込み、どうにもならなくなって、へたりこんでいると、大きな動物に散々追いかけ回されたわけですから、一難去ってまた一難、恐怖の連続、でしたね。

私たちも、そんな日を過ごすことがあるのではないでしょうか。泣っき面に蜂、四面楚歌、何でこうも嫌なことばかり起こるんだろう、この先を思うと不安で不安でたまらない・・・

どうでしょうか。

(次回は、解決の糸口をウンチクります。)

こすずめピヨの冒険(5)

2007-09-07 | あきこの10円玉/ こすずめピヨの冒険
「あれ、なんか、鳥の声がすんな。」

声を頼りに、探してみると、リビングから聞こえてくるようです。

リビングに行って、あちこちのぞいてみると、いました、いました。こすずめが、迷い込んでいたのです。

「こいつ、窓から、柵ぬけて入ってきおったな。おい、そんなとこで、怖がっとらんと。あっちやって、出口は。しゃあないな。玄関も開けたるから。」

そう言いながら、こすすめを追い立てて、なんとか外に出してやろうとします。ところが、そのこすずめは、開いている窓や玄関のほうは、目も向けず、ただひたすら、逃げ回るのです。それも、部屋の奥のほうばかりを動き回ります。

しばらく、格闘して、ついに、部屋の隅っこに追い込みました。

「なにやってんねん。ほんま。わけわからんやつやな。変に動くなよ。つぶれるから。」

そして、震えるこすずめをつかんで、玄関から外へ離してやりました。

「時々、遊びにきぃや。ほいでも、もう、入ってくんなよ。」


こすずめは、しばらく門の上にとまって、歌声を聞かせてくれました。そして、一礼したかと思うと、元気に飛び立っていきまた。

(週末は、このストーリーから、人生の知恵をまじめにウンチクります。)

こすずめピヨの冒険(4)

2007-09-06 | あきこの10円玉/ こすずめピヨの冒険
ピヨは、だんだん恐ろしくなってきました。それに、もう飛ぶ元気もありません。

ピヨは、おかあさんを呼びました。

「ママ、助けてよ。ボクは、ここだよ。早く見つけてよ。」


しばらくすると、音が聞こえてきました。聞いたことのない音です。

「なんだろう。」

ピヨは、おかあさんを呼ぶのを止めました。


だんだん、だんだん、その音は近づいてきます。




そして、ついに、その姿を現しました。

大きな大きな怪物です。


その怪物は、なにかを探しているようです。辺りをきょろきょろ眺めています。

ピヨは、息を潜めました。隠れようと思いましたが、今、動くのは、かえって危険です。ピヨは、できるだけ小さくなりました。



けれども、その怪物は、ピヨを見つけました。

そして、ピヨに、近づいてきます。


ピヨは、めちゃくちゃに逃げました。

その怪物は、どこまでも、どこまでも、ピヨを追いかけてきます。猫より動くのがのろいのですが、大きな唸り声を上げながら、追いかけてきます。

ピヨは、逃げて、逃げて、逃げました。


もう、飛ぶ元気も、逃げる元気もなくなってしまいました。そして、ついに、ピヨは、隅っこに追い詰められてしまいました。


怪物は、唸り声を上げたかとおもうと、ピヨに襲い掛かってきました。

そして、とうとうピヨは、怪物に捕まってしまったのです。きっと、頭から丸呑みに、食べられてしまうのでしょう。ああ、かわいそうなピヨ。

(つづく)

こすずめピヨの冒険(3)

2007-09-05 | あきこの10円玉/ こすずめピヨの冒険
猫は、閉じていたもう片方の目を開けると、ゆっくりとのびをひとつしました。

それから、もうひとつのびをして、静かに立ち上がりました。

そして、音を立てないで、ピヨに近づいてきました。


花たちは、猫が近づいてくることに気がつきました。風と協力して、ピヨに危険を知らせました。

猫は、もうピヨに手が届くギリギリのところまで近づいていました。

ピヨは、おおあわてで、飛び立ちました。

ピヨが飛び立つと、猫も、いっしょにジャンプしました。


ピヨは、あまりにもあわてていたので、自分が高く飛べることを忘れていました。いっしょうけんめい、遠くへ、遠くへ、速く、速く、飛びました。猫も、やっきになって、ピヨを追いかけてきます。

ピヨは、自分がどこに向かっているのか、まったくわかりませんでしたが、目の前に現れた柵の間をくぐって、そのまま、真っ直ぐ飛びました。

猫は、柵の間を抜けられないので、くやしそうに、ピヨの行き先をにらみつけていました。


ピヨは、猫が追いかけてこないことに気がつきました。そして、やっと、自分がどこにいるのか、周りを見渡しました。

そこは、薄暗くて、少しひんやりしています。木もなければ、花もありません。その代わりに、冷たい箱のようなものが、いくつかありました。見たことのあるものは、何一つありませんでした。

「ボクは、どこに入り込んでしまったんだろう。」

ピヨは、その薄暗くて、ひんやりしたところから、早く出たいと思いました。飛び上がってみましたが、少し行くと、硬くて、大きなものが、目の前に現れます。がんばって、一番高く、飛んでみました。でも、上にも、硬くて、大きなものが現れました。

ピヨは、あっちにも、こっちにも、とにかく、思いつく方向全部に、飛んでみました。でも、どこに行っても、少し行くと、硬くて、大きなものがあって、先に進めないのです。

ピヨは、出口のない洞窟の中に、迷い込んでしまったのです。

(つづく)