ヨナの福音こばなし帳

オリジナルのショート・ストーリー。一週間で一話完結。週末には、そのストーリーから人生の知恵をまじめにウンチクります。

ハイエナがオドオドするようになったわけ(5)

2008-02-29 | 放蕩息子Part2
傷が良くなり動けるようになったハイエナに、ライオンが言いました。

「わたしは、ハイエナたちが嫌いなわけではないんだよ。あなたのことを大事にしたように、他のハイエナたちのことも大事に思っているんだよ。わたしには動物王国のどのみんなも大事なんだ。ハイエナの村に帰ったら、ハイエナのみんなに伝えて欲しい。ハイエナたちみんなが、心を入れ替えて、どの動物たちとも仲良くすると、わたしに約束しに来ることを待っている、とね。」

ハイエナは、頭をぺこぺこしながら、ハイエナの村に帰って行きました。

(つづく)

ハイエナがオドオドするようになったわけ(4)

2008-02-28 | 放蕩息子Part2
うずくまっていたハイエナも、薄暗がりの中、ライオンが近づいてくるのがわかりました。ハイエナは、恐ろしくて仕方ありません。けれども、もう身動きする力はありませんでした。ただ震えているだけでした。

ライオンは、ハイエナの前に立ちました。そして、気高い声で言いました。

「安心しなさい。わたしは、あなたを助けに来たのだ。」

そう言うと、ライオンは鋭い牙のある大きな口を開け、ハイエナに噛みつきました。ハイエナは、もう終わりだと思いました。

けれども、ライオンは、お母さん猫が子猫を大事に銜えるように、ハイエナを銜え、急な谷を上り始めました。自分だけでも登るのが難しいのに、口にはハイエナを銜えているのです。力強いライオンでも、それはとても大変でした。一歩先に進むるたびに、足はトゲトゲ石で傷つきます。それでも、ライオンは、谷を登って行きました。

谷を登りきったライオンは、ハイエナを銜えたまま、草原を渡ります。傷ついた足は、自分のからだの重さに加え、ハイエナのからだも重さもかかります。一足ごとに痛みがからだに走ります。

ライオンは、自分の住処に戻りました。そして、傷ついたハイエナを手当てしてあげました。

(つづく)

ハイエナがオドオドするようになったわけ(3)

2008-02-27 | 放蕩息子Part2
ハイエナが暗闇谷に落ちたことを、空の高い高いところを飛んでいた鷹が見ていました。鷹は、そのことをライオンに知らせました。

ライオンは、そのことを聞くと、草原を渡り、暗闇谷に向かいました。谷の上から、ハイエナを探して下を覗き込みますが、谷の底は薄暗くて、なかなかよくわかりません。それでも、ライオンは、あきらめないで探し続けました。

ついに、谷の下で傷ついてうずくまっているハイエナを見つけました。ライオンは、谷を駆けるようにして、下りて行きました。足は、トゲトゲ石で傷つきますが、そんなことはおかまいなしです。ライオンは、どんどん足を進め、ハイエナに近づきました。

(つづく)

ハイエナがオドオドするようになったわけ(2)

2008-02-26 | 放蕩息子Part2
一匹のハイエナが、何かおもしろいものはないかと、ウロウロしていました。草原の向こうまで来ると、道がだんだん狭くなってきます。両脇は、急な谷になっていて、山肌にはトゲトゲ石がたくさんあり、一度落ちたら、もう這い上がってくることはできないでしょう。動物たちは、そこを通るときは、本当に気をつけて、歩いていました。

ところが、そのハイエナは、あまりにキョロキョロしながら歩いていたものですから、うっかり足を滑らせて、暗闇谷に落ち込んでしまいました。滑り落ちながら、山肌のドゲドゲ石でからだ中傷だらけになり、谷底に着いたときには、身動きできないほどでした。

谷底は、だんだん暗くなってきました。風が吹くと、なにやら不気味な音が聞こえます。ハイエナは、がんばってからだを起こし、這い上がろうとしましたが、少し上がると、またすぐ滑り落ちてしまいます。滑り落ちると、トゲトゲ石でもっとからだに傷が増えます。助けを呼ぼうにも、近くにはだれもいません。もう、どうすることもできません。

(つづく)

ハイエナがオドオドするようになったわけ(1)

2008-02-25 | 放蕩息子Part2
これは、まだ動物たちが、他の動物を食べたりしなかったころのお話です。

あるところに動物王国がありました。ライオンが王様で、動物王国を正しく治めていました。それで、みんな仲良く暮らしていました。他の動物に食べられたりすることもないので、みんな安心して暮らしていました。

ハイエナたちは、動物王国のいじめっ子でした。自分より強い動物がいるときには、おとなしくしていますが、自分より弱い動物がいるときには、後ろからそっと近づいて大声を出して脅かしたりします。食べるものも独り占めして、分けてあげたりしません。

あるとき、ハイエナたちが他の小さい動物たちを追っかけまわしたりしていじめているところを、王様のライオンが見つけました。普段はとても優しいライオンでしたが、そのときばかりは、牙をむき、ものすごい勢いで唸り声を上げて、ハイエナたちをしかりつけました。ハイエナたちは、慌てて逃げ出しました。

それからというもの、ハイエナたちは、ライオンの眼を避け、コソコソするようになりました。そして、何をしていても、ライオンに見られているのではないかと、オドオドしていました。

(つづく)