ヨナの福音こばなし帳

オリジナルのショート・ストーリー。一週間で一話完結。週末には、そのストーリーから人生の知恵をまじめにウンチクります。

スイート・ホーム・シカゴ(7)ウンチク後編

2008-12-14 | ガラスの器/ スイート・ホーム・シカゴ
教会では、厳しいメッセージも語られますが、愛のメッセージも語られます。教会の集まりに参加すれば、だれでも、文字通りだれでも、その愛のメッセージを聞くことができます。

無から天地を創造した偉大な神様が、こんなちっぽけなだらしない自分を、いのちがけで愛してくださっている。私自身も、そのことがわかって、とても感動して、それから聖書を真剣に読み始めました。

ポイントは、次です。

あなたとして、神様との関係をどう思っているのか。
愛を表してくださったその偉大な神様と、あなたのほうからは具体的にどういう関わりを持つのか。


いくら神様のほうがあなたをいのちがけで愛していても、
 あなたがその愛の中にとどまり続け、あなたもその方をあなたのすべてをもって愛する気がないなら、

つまりは、
 あなたは、あなたへの神様の愛を拒否していることになります。
    あなたは自分で、自分を神様との愛の関係の外に置いたのです。


もし、あなたが、神様の愛の対象であることを拒み、神様に愛され、神様に愛されるものとして生きる関係を持ちたくないなら、あなたの聞いた、その愛の言葉は、あなたにとってどんな意味があるというのでしょう。あなたがその愛の対象であることを望んでこそ、その愛はあなたに意味を持ちます。


わたしを愛する人はわたしの父に愛され、わたしもその人を愛し、わたし自身を彼に現します。
(ヨハネの福音書 14章21節)

わたしの愛の中にとどまりなさい。
(ヨハネの福音書 15章9節)





スイート・ホーム・シカゴ(6)ウンチク前編

2008-12-13 | ガラスの器/ スイート・ホーム・シカゴ
空港とか、たくさんの人が動く場所で、向こうから来る人が手を振っている。だれだかよく思い出せないけど、とてもうれしげに手を振り、親しげに近づいて来るので、てっきり自分の知り合いかと思って、手を振り返そうとしたら、実は、自分へではなく、自分の後ろにいる人にだった。

皆さんも、似たような経験をされたことがあるのではないでしょうか。私などは、数えたらきりがないので、何回あったか、まったくわかりません。

今回のストーリーは、そんな勘違いが生んだ、苦いラブ・ストーリーです。

住み慣れた土地をシングルチケット一つ手に飛び立つという寂しさの上に、とんだオマケガついてしまいました。その原因は、彼の言葉を、確証もなく、勝手に自分への言葉だと思い込んだところです。

この種類の思い込み、教会の中でも、けっこうあるのです。

「とてもいいお話でした。感動しました。」こう言って帰る方に、この勘違いが見られる傾向が多いように思います。(そう言っている人はみんな勘違いしている人、と断定しているわけではありませんから。よろしく)

ストーリーの女性は、彼の言葉が自分への言葉ではなかったと、自分の勘違いに気がついたから、まだよかったのですが、教会の中で、この手の思い込みをした方々は、思い込んだまま、帰ってしまうので、大変なのです。

(次回は、解決の糸口をウンチクります。)

スイート・ホーム・シカゴ(5)

2008-12-12 | ガラスの器/ スイート・ホーム・シカゴ
もう、私の気持ちは、はっきりしていた。でも、それを言葉にしてしまったら、そのまま彼の元に行ってしまいそうな自分が怖かった。

さめかけたコーヒーを口いっぱいに飲んだ。今、彼に伝えなければ、一生後悔する。それだけはしたくない。


思い切って、口を開こうとした、そのとき






「必ず、帰ってくるわ」

小さいけれど、はっきりとした声がした。震えるような女性の声だった。


彼は、ゆっくりと立ち上がり、私を通り過ぎ、私の隣に座っていた女性に歩み寄った。

その女性も立ち上がった。

二人は、まるで美しい映画のラスト・シーンのように、抱き合った。



その一瞬は、時が止まった。少なくとも、私には、そう感じられた。

  なんとなく彼に似ていただけだったのだ。


     彼のことばは、私へのものではなかった・・




すっかり冷めてしまったエスプレッソの苦味の中で、少しずつ、空港内の雑踏の音が、よみがえってきた。

MTVでは、エリック・クラプトンが、おきまりのストラトを手に、若い頃と変わらず、陽気に歌っていた。

 Come on
 Oh baby dont you wanna go・・

(週末は、このストーリーから、人生の知恵をまじめにウンチクります。)

スイート・ホーム・シカゴ(4)

2008-12-11 | ガラスの器/ スイート・ホーム・シカゴ
私は顔は動かさないようにしながら、目だけを彼に向けた。すっかり立派な青年になっていて、体格も顔つきも変わっているが、少年だった頃の面影が、目のあたりに残っている。それに、とつとつとした、はにかんだ、この話し方。間違いない、彼だ。

「君と離れてからも、君のことを忘れたことは、一日もない」

何年ぶりだろう。ハイ・スクールに上がるときに離ればなれになって以来だから、7、8年会っていなかったことになる。

「最後の最後になってしまったけれど・・こうして、僕の気持ちを伝えられてよかった」

カレッジの友だちの中には、同じジュニア・ハイだった人が何人かいたので、きっと彼らから、私の帰国のことを聞いたに違いない。

「君が、まったくいなくなってしまうなんて、僕には想像できない」

私が帰国することとなって、初めて、彼は、彼にとっての私の存在の意味に気づいたのだ。

「いつ、とまで約束して欲しいとは言わない。でも、必ず、僕のいる、この都市に帰ってくると・・・約束して欲しい」

彼は、いつまでも私のことを待ってくれるつもりなのだ。私の気持ちを、大切に思ってくれている。

「君が戸惑っているのはわかっている。でも、僕には、君の直接の言葉が必要なんだ・・君が行ってしまう前に」

(つづく)

スイート・ホーム・シカゴ(3)

2008-12-10 | ガラスの器/ スイート・ホーム・シカゴ
「今度会う時には、僕はもっとうまく演奏できるようになっている、これが僕の約束だ。君の好きな、あのエリック・クラプトンのようには、いかないけどね」

エリック・クラプトン?私のお気に入りのギターリストじゃないか。

「初めて君が僕のために作ってくれた、あのランチに入っていた、玉子焼きのことは、今でも忘れないよ。あの時は、僕のほうがうまく作れるなんて言って、本当に悪かった。本当のことを言うと、とてもうれしくて、なんて言っていいかわからなかったんだ。でも、あんなに焦げた玉子焼きを食べてのは、あれっきりだよ」

焦げた玉子焼き?初めてのランチ?


私の中で、遠い記憶が少しずつよみがえってきた。

あれは、私がこの都市に来て2年くらい経ったときのことだ。英語にも慣れ、学校の勉強にもようやくついていけるようになり、学校生活が楽しくなってきた。友だちも、少しずつ増えた。

クリスマス・ブレイクに入る前に、学校でパーティーがあった。パーティーでは、学校の子たちのバンドが演奏していた。いくつバンドが出たとか、どんな曲を演奏していたとか、今ではまったく覚えていない。ただ一つ覚えているのは、一つのバンドが私のお気に入り、エリック・クラプトンの曲を演奏したことだ。

歌はへたくそ、ギターなんかとても聴いていられなかった。でも、彼は、楽しそうだった。気がつくと、私はステージの真ん前で、リズムに合わせてからだをゆすっていた。そのバンドが終わってからも、パーティーは、まだまだ続いた。

ステージを終えた彼が、はにかみながら、私にオレンジ・ジュースを差し出した。それが、私たちの始まりだった。


当時、私たちは、ジュニア・ハイだった。彼と学校で顔をあわせるだけで、とてもうれしかった。

サマー・ブレイクのときに、初めて二人きりでピクニックに行った。そのときに作ったランチに、玉子焼きを作って入れたのだが、それが大失敗。真っ黒焦げになってしまったのだ。

(つづく)