ヨナの福音こばなし帳

オリジナルのショート・ストーリー。一週間で一話完結。週末には、そのストーリーから人生の知恵をまじめにウンチクります。

赤ずきんちゃん四姉妹(1)

2008-12-23 | さかなのナカ/ 赤ずきんちゃん四姉妹
そのむかし、ある村にひとつの家族が住んでいました。その家族は、お父さん、もう働いている大きいお兄さん、そして四人の女の子たちでした。女の子たちは、おそろいの赤いずきんをかぶっていたので、赤ずきんちゃん四姉妹と呼ばれていました。

女の子たちは、お父さんと決まりがありました。5時までに帰ってくる。帰ってきたら、手と顔を洗う。夕食までに宿題を済ませる。その決まりを1つ破れば、手にムチ一回です。それも、軽くポン、なんて具合ではありません。お父さんが力一杯叩くのです。

ある日のこと、赤ずきん春子ちゃんは、とってもきれいな、珍しいちょうちょうを見つけました。赤ずきん春子ちゃんは、そのちょうちょうをもっと見ようと、追いかけました。ちょうちょうは、野原を越え、小川を越え、畑も越えて、森の中に入って行きました。

森の中に入ったところで、赤ずきん春子ちゃんはちょうちょうを見失ってしまいました。気がつくと、もう夕方です。もうすぐ5時です。

「決まりがある家なんて、めんどくさくて、大嫌い。もっと遊んでいたいわ。」

赤ずきん春子ちゃんは、森の中で、きれいな光る虫を見つけました。木にも登りました。花を摘んでブーケを作ったりして、とても楽しく遊びました。あたりは、すっかり暗くなりました。おなかもすいてきました。おなかがすくと、イライラしてきました。そして、お父さんのことを思い出しました。

「どうしてお父さんは、ここにご飯を持って来てくれないの。私がこんなに困っていることもわからないのかしら。どうなってるの。ほんとに役に立たないお父さんね。なんてことよ。私のことをこんなにほったらかしにして。私のことなんか、どうでもいいんだわ。もうほんとに、やんなっちゃう。」

そう言って、お父さんのことをぼやいていたので、赤ずきん春子ちゃんは狼が近寄ってきたことにまったく気がつきませんでした。そして狼に食べられてしまいました。

(つづく)