ヨナの福音こばなし帳

オリジナルのショート・ストーリー。一週間で一話完結。週末には、そのストーリーから人生の知恵をまじめにウンチクります。

TeamABCの策略(2)

2008-11-06 | TeamABCの策略/ 砂漠の旅人
イロハ組も、レースに備えて、最後の準備段階に入っています。情報では、TeamABCは、いつも増して、調子を上げているようです。最新型のヨットの仕上がりも抜群と言われています。それで、今年も、もちろん優勝を狙うイロハ組は、念には念を入れて、新しいコーチを迎えることにしました。たくさんの候補者の中から、経験豊かで、監督と考えが合い、チームのみんなとも仲良くできる、すばらしいコーチが選ばれました。まさに、鬼に金棒、というところです。これで、今年も、優勝はイロハ組のものと、みんな喜んでいました。


レースを目前に控えたある日、レースの説明会がもたれました。
各チームから、代表たちが集まってきて、競技規定やコースについて、細かい説明を受けるのです。毎年、規定が少しずつ変わるので、それまでと同じようにすると、失格になってしまうかもしれません。

イロハ組からは、監督と新しいコーチが、その説明会に出席しました。

説明会が始まりました。競技規定とコースについて書かれた分厚いルールブックが配られ、ひとつひとつ、説明がされていきます。コーチは、その説明会は初めてでした。それで、時々、わからないことがあるらしく、小声で、監督に質問したりしました。優しい監督は、コーチの質問に答えてあげます。説明会は、そのあいだも、どんどん進んでいきます。

説明会の終わりに、質問の時間がありました。いろいろな質問が出ました。なにせ、ちょっとでも規定から外れると失格になってしまうのです。どのチームの代表も、間違って理解しないようにと一生懸命でした。イロハ組の新しいコーチは、他のチームの質問を聞きながら、「何であんなことがわからないのか」とか、「あれはこうですよね」と自分の意見を言ったりして、監督に小声で話しかけました。監督は、コーチの言うことを、ウンウンと聞いてあげました。

(つづく)