手にすると、それは上等な絹でできた、手の込んだ刺繍の入ったハンカチでした。
はっとして、娘は、立ち上がり、後ろを振り替えました。
藪の向こうに、白い立派な馬に乗った人がいるのが見えました。そのハンカチは、その人のものでしょう。取り出したハンカチが、風に飛ばされて、娘のところまで来たのに違いまりません。
娘は、ハンカチを持って、藪を抜けて、その人のところに進みました。
近づいてみると、白い馬に乗ったその人は、王子様でした。
娘は、何も言わず、手に持っていたハンカチを差し出しました。
王子様も、何も言わずに、娘が差し出したハンカチに手を伸ばしました。
そのとき、わずかに二人の手と手が触れ合いました。
王子様は、ハンカチを受け取ると、上品に会釈をして、そして、馬を進めて、森の中に消えて行きました。
娘は、その日以来、王子様のことが頭から離れません。でも、そんなことおとうさんやおかあさんに話しても、笑われるだけでした。なんといっても、相手は、王子様なのです。そして自分はと言えば、貧しい木こりの娘でした。
娘が、王子様のことを忘れようとすればするほど、王子様のことが思い出されてきます。おかあさんを手伝って家の仕事をしている時も、王子様のことばかり考えていました。森に木の実を拾いに入ったときには、いつもかならず、王子様に出合った、切り株のところに行きました。でも、王子様の姿を見ることは、再びありませんでした。
一年、また一年と、月日は流れましたが、娘の王子様を思う思いは大きくなるばかりでした。
(つづく)
はっとして、娘は、立ち上がり、後ろを振り替えました。
藪の向こうに、白い立派な馬に乗った人がいるのが見えました。そのハンカチは、その人のものでしょう。取り出したハンカチが、風に飛ばされて、娘のところまで来たのに違いまりません。
娘は、ハンカチを持って、藪を抜けて、その人のところに進みました。
近づいてみると、白い馬に乗ったその人は、王子様でした。
娘は、何も言わず、手に持っていたハンカチを差し出しました。
王子様も、何も言わずに、娘が差し出したハンカチに手を伸ばしました。
そのとき、わずかに二人の手と手が触れ合いました。
王子様は、ハンカチを受け取ると、上品に会釈をして、そして、馬を進めて、森の中に消えて行きました。
娘は、その日以来、王子様のことが頭から離れません。でも、そんなことおとうさんやおかあさんに話しても、笑われるだけでした。なんといっても、相手は、王子様なのです。そして自分はと言えば、貧しい木こりの娘でした。
娘が、王子様のことを忘れようとすればするほど、王子様のことが思い出されてきます。おかあさんを手伝って家の仕事をしている時も、王子様のことばかり考えていました。森に木の実を拾いに入ったときには、いつもかならず、王子様に出合った、切り株のところに行きました。でも、王子様の姿を見ることは、再びありませんでした。
一年、また一年と、月日は流れましたが、娘の王子様を思う思いは大きくなるばかりでした。
(つづく)