そのお金持ちの主人には、一人、息子がいました。もうりっぱな若者になっていました。
ある朝、彼が馬に乗って、街まで出かけたときのことです。ある畑の横を通りかかったとき、女奴隷が、主人に鞭で打たれているのが目に入りました。
はじめは、いつものことと、それほど気にしていなかったのですが、その主人は鞭で打つことをいっこうに止めようとしません。女奴隷は、悲鳴をあげることすらできず、ただからだを丸めて、打たれるばかりです。
彼は、その様子を見て、あまりにもひどいと思い、その主人に声をかけました。
「そんなに鞭で叩いたら、奴隷がダメになってしまうぞ」
「何を、若造。わかったような口を聞くな。こいつは、いくら口で言っても働かないんだ。太った牛より頭が悪いから、こうして叩いて、仕事させるしかないんだよ」
「それだったら、叩くのを止めて、働かせればいいじゃないか」
「若造。俺様が買った奴隷をどうしようと、俺様の勝手ってもんよ。ガタガタ言ってないで、とっととうせやがれ」
その横暴な主人は、若者と話をし始めたので、その女奴隷を打つ手が止まりました。
女奴隷は、体中に走る痛みをこらえて、やっぱりからだを丸めたままでしたが、顔を少し上げました。
若者に、ちらっとその顔が見えました。
彼は、すぐにそれがだれだか気がつきました。
(つづく)
ある朝、彼が馬に乗って、街まで出かけたときのことです。ある畑の横を通りかかったとき、女奴隷が、主人に鞭で打たれているのが目に入りました。
はじめは、いつものことと、それほど気にしていなかったのですが、その主人は鞭で打つことをいっこうに止めようとしません。女奴隷は、悲鳴をあげることすらできず、ただからだを丸めて、打たれるばかりです。
彼は、その様子を見て、あまりにもひどいと思い、その主人に声をかけました。
「そんなに鞭で叩いたら、奴隷がダメになってしまうぞ」
「何を、若造。わかったような口を聞くな。こいつは、いくら口で言っても働かないんだ。太った牛より頭が悪いから、こうして叩いて、仕事させるしかないんだよ」
「それだったら、叩くのを止めて、働かせればいいじゃないか」
「若造。俺様が買った奴隷をどうしようと、俺様の勝手ってもんよ。ガタガタ言ってないで、とっととうせやがれ」
その横暴な主人は、若者と話をし始めたので、その女奴隷を打つ手が止まりました。
女奴隷は、体中に走る痛みをこらえて、やっぱりからだを丸めたままでしたが、顔を少し上げました。
若者に、ちらっとその顔が見えました。
彼は、すぐにそれがだれだか気がつきました。
(つづく)