化学系エンジニアの独り言

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科学雑誌 編集者の意見

2006-02-13 | 社会
韓国の人クローン細胞製造に関する偽の発表に関連して、NatureやScienceといった科学雑誌の編集者(Reporter)の意見がNew York Timesに載っていました。
日本でもつい先日、東大のRNA研究に関して研究結果の追試が出来ないという大学当局の発表があったばかりである。

まー、いつの時代にも大発見をしたといって吹聴する科学者(その時点でもはや科学者とは呼べませんが)というものはいました。今に始まったことではありません。これらの事件は、先端の生命科学に関することだったため、韓国の研究はScience誌に、東大の研究はNature誌という世界的に権威ある科学雑誌に乗ったことから、反響を呼び、それがウソと分かったため逆に反響も大きかった。

科学雑誌の編集者は記事を同僚にチェックしてもらったり、専門家に意見を聞いたりして信憑性をチェックはするが、記事の真偽を保証するものではない、ということのようです。そりゃそうだ、科学雑誌の記者さんはいろんな分野を扱っているのだから、そのすべてについて専門的な知識や判断が出来るわけじゃありませんもんね。

新聞などに載っている科学記事、技術記事で自分の専門領域に関するものを読むといつも思うのは、記事にはウソが多いなということです。裏返せば、自分の専門ではない経済記事などにも同じように専門家が見れば、ウソと思えることが書いてあるんだろうな、ということです。

韓国の例では国を挙げて某博士の研究をバックアップしているので、もはや出来ないなどということは許されず、出来ましたと発表してしまった。某博士に同情する余地もあるのかなあ。いやいやそうやって国の予算をほしいままにもらっていたのだから、他の研究者から見ればなんら同情の余地などないでしょう。

東大の例では、発表された実験結果の再実験を例の助手と外部機関が行ったところ、例の助手は発表と同じ結果が出たが、外部機関では異なる結果が出たとのこと。教授は「10年来信頼してきたが、ここ数日のやり取りで助手を疑わざるを得ない」と、疑惑を否定できない可能性もあると認めたそうだ。なんだそりゃ。10年来の信頼がたった数日で壊れるのかい。10年間も私の目は節穴でしたといっているようなもんだろうと思うのは小生だけでしょうか?
全く、何とかの巨塔を見ているようです。

大学の役目は何でしょうか?確かに、大学病院は病気を治すところですが、その大前提として優秀な医者を育てることがあるでしょう。一般学部でも世界的な研究成果を上げるために、タダで学生をこき使って研究をすればいいのではなく、いっぱしの科学者や技術屋を教育することがその目的です。大学のプロダクツは卒業生のはずです。研究ならば国の研究所に任せておけばいい。第一線で活躍するためには、最新の技術や研究に触れておく必要があるので、大学では最新の研究を教育の題材としてやっているのでしょうが。研究を進めるための考え方を身に着けるために、研究をやっているのでしょう。目的と手段を逆にしてもらっては困る。したがって、教育という観点から言えば、データ偽造なんて問題外です。データの解釈の仕方に随分と屁理屈をつけるというか、結論が飛びすぎている、例えば少ない実験例ですべてのケースに当てはまるような結論を出す、たまにそんな間違いを犯すこともあるでしょう。しかし、偽造となるとなんとかエモンと同じことですよ。

こういう言い方をすると、大学は職業訓練所ではないとかの反論があります。職業訓練所を馬鹿にしないで欲しいといいたい。大学と職業訓練所は機能としては同じでしょう。ただ、通ってくる人が違う(年齢とか、もろもろ)、身に着けようとしている技術の種類が違う、のでおのずと大学と訓練所の有り様は違ってくるが、求められている機能は同じはずです。小生は研究に対する姿勢や物事の考え方を教えてくれる大学教授も如何に精度良く旋盤加工をするかを教えてくれる訓練所の教官も同じように尊敬しています。いずれもその道のプロというか、匠ですからね。
こういう方々はフィロソフィーも持っていますし。

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