化学系エンジニアの独り言

時の話題や記事の備忘録

Coal to Liquid

2006-07-12 | 石炭
日本語で言えば石炭の液化ですが、より正確に表現するならば石炭を原料として液体燃料を製造する技術、ということになります。石炭液化には直接法と間接法がありますが、今の主流は間接法です。

間接という意味は、石炭から一旦合成ガスを作ってそのガスから液体燃料をFT合成するからです。CTGとGTLを組み合わせた方法といえます。直接法に比べて回り道にはなりますが、直接法は技術的に課題を残していることから、南アフリカ(SASOL社)では間接法の商業プラントを長年にわたって操業しています。近年はGTLやガス化技術が進んで、コスト的には直接法も間接法も大差ないのではと想像されます。

米国は中東原油依存から脱却したいわけですが、その方法の一つに国内資源である石炭の利用があります。発電分野では石炭火力の割合が51%で、石油はわずかに2.5%です。日本の発電燃料は石炭24%、石油11%ですから、いかにアメリカの電力が石炭に依存しているかが分かります。

ついでに言えば各国の主要電力源は次に用になっています。カナダは水力58%、インドは石炭で70%、中国も石炭で77%、ロシアは天然ガスで43%、フランスは原子力で78%、ブラジルは水力で83%です。この主要電力源を見ていると各国のあり方の一面が分かります。

日本は天然ガス、石炭、原子力がほぼ4分の1で、石油と水力が各1割と他の国に比べてバランスの良い割合になっています。最も裏を返せばどれも自国では取れないので、分散させているわけです。

ところでいずれの国も電力の石油への依存は小さいことがわかります。(中東産油国を除く)つまり石油、液体燃料は発電ではなく輸送用燃料として使われているわけです。それは液体燃料がもっともエネルギー密度が高く、ガス燃料ではタンクが大きくなりすぎ、固体燃料は内燃機関で燃やせないからです。

アメリカのRentechという会社が、イリノイ州にある天然ガスから肥料を作るプラントを買ったとのこと。この会社はGTL技術を得意とする会社なので、肥料を作るのではなくこのプラントを改造などして、CTLを事業化しようとしています。同社はミシシッピーに二基目、ワイオミングに三基目を計画しているとも伝えられます。
同様にタルサにあるSyntroleum社もCTLを計画しているようです。シカゴのGreatPoint Energy社は、ラボスケールですが石炭をガス化して、その合成ガスからメタンリッチな都市ガスを製造する検討を行なっています。

いずれも原油価格の高騰で石炭液化の採算性が取れるようになる、と踏んでいます。石炭液化のコストはおおよそ$25/バレルといわれていますが、軽油がバレル100ドルを越えるような価格の現状ならば、充分経済的に成り立つのでしょう。

但し、CO2排出の問題がついて回っています。石炭から軽油を作るとCO2の発生が増加するという指摘があります。NYTimesの記事によれば、原油から軽油を作って使うと2.98kg-CO2/Lの発生量だが、石炭からだと5.37とほぼ2倍に増加してしまうそうです。この差の大部分は石炭から軽油を製造する段階で発生しており、困った問題になります。
ということは石炭液化工程で発生するCO2は隔離、固定化が不可欠ということになるでしょう。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿