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石炭ガス化複合発電

2006-12-01 | 石炭
資源埋蔵量が豊富で安価な石炭は、日本を初め米国、中国など多くの国で発電用燃料として消費されています。他の化石資源に比較して産出地域が広く世界に分布していることも利用を促進する理由です。

しかし石炭は熱量ベースで比較すると天然ガスの1.8倍のCO2を排出します。従って石炭火力発電を推し進めるためには発電効率を向上させる必要があります。熱力学の第二法則が教えるところによれば、熱効率は高温部と低温部の温度差が大きいほど大きくなります。低温部を大気温度以下に下げるには多大なエネルギーが必要となりますから、熱効率向上のためには高温部の温度を上げる方策を採ることとなります。

蒸気タービンの温度は実用上600℃程度です。さらに高温とするにはガスタービンを回すこととなります。燃焼ガスの温度は1300℃から1500℃ですから蒸気タービンよりも発電効率の向上が期待できます。また、排熱回収ボイラーで蒸気を作って蒸気タービンを回す、いわゆる複合発電をすればさらに発電効率を上げることが可能です。しかし石炭は固体ですからガスタービンの燃料にするには石炭ガス化技術が必要になります。

日本で行なわれている石炭ガス化複合発電といえば、Jパワー/日立のEAGLEプロジェクトが有名です。本年度で研究運転を終える計画のこのプロジェクトでは商業規模の10分の1のパイロットプラントを稼動させています。石炭の微粉炭燃焼では発電効率は38%ですが、EAGLEプラントでは55%が達成可能といいます。しかし石炭ガス化炉、酸素製造プラントやガスタービンなどを加えて建設しなければならず、発電効率向上によるCO2削減効果は期待できるものの、経済性に見合うかどうかに注目が集まるところです。三菱重工が東電と計画しているプロセスでは燃焼に酸素を用いずに空気をそのまま用います。空気のままでガス化させるのは技術的に難しい面もあるようですが、酸素プラントが不要になる分、総合的に見た発電効率は5%上がるとの試算もあります。

実用化では先行している欧米での実績は発電効率47%です。日本の技術でさらに発電効率の向上を達成して欲しいものです。

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