化学系エンジニアの独り言

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バイオマスタウン

2006-06-07 | バイオマス
アメリカのバイオマスタウンの話。

シカゴからインディアナポリスに抜けるI65の間にあるRaynoldsという人口533人の小さな町。この町はとうもろこしと大豆と養豚農場が主な産業で、高齢化も進んでいる。この町が中東原油と決別し、バイオマスタウンとして自立するという。

インディアナ州はバイオマスからのエネルギーのみで成り立つバイオマスタウンのモデル地域を探していた。条件は、人口が少なく、家畜が多く、大学から近く、大きな道路に面しているというものだった。担当者は地図を広げてRaynoldsをその候補にした。バイオマスタウン構築に当たっては、州政府や連邦政府からも交付金が出される。

当初は計画に積極的でなかった住民たちも、ガソリンの高騰を受けて自分たちの考えとしてバイオタウン構築に当たるようになった。
全米のエネルギーと電力のグリッドから切り離し、完全に再生可能エネルギーのみによる生活を送ろうというものである。カリフォルニアのような先進的な地域でなく、むしろ保守中の保守の町といったふうのRaynoldsがこのような取り組みを始めるのは驚きとして見られている。

本当のモデルケースにするために、補助金をあてにするのではなくPrivate financeで発電所を作ろうとしている。資金は徐々に集まりだしており、今秋には建設が始まる。豚や牛の廃棄物、あるいは都市廃棄物からメタン発酵によりメタンガスを製造し、これによりガス発電を行なって町全体の電力をまかなう。

一方、住民たちはE85の車を購入し、ガソリンの代わりにバイオエタノールを利用しようという。すでに100台のアルコール対応車が購入されている。町の公用車3台もアルコール対応車とBDF対応車に変更されるという。

しかし、全く障害が無いというわけでは無い。
町にはE85のガソリンスタンドが無い。町で唯一のスタンドのおじさんは言う。確かにバイオタウンは長期的に見ればよいことであり賛成。でも、俺にはもう1基の地下タンクとノズルを増やすだけの資金が無い。仮に増やせたとしても、遠くからE85ガソリンを受け入れねばならず、通常ガソリンよりも安く販売出来るという保証は無い。ということで、自分のお店をE85で商売が出来ると考える人に売るという。もう一件の雑貨屋さんも閉店。床屋さんも移転したそうだ。

E85の導入が床屋さんの移転の原因であるというのは妙な話ではあるが、未来は明るいが足元は暗いということを言いたいのでしょうか。
バイオマスエネルギーの導入=既存エネルギーからの完全脱却と一足飛びに考えるのは、やはり無理があるということです。

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