化学系エンジニアの独り言

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ドイツは石炭を特別扱い

2006-06-30 | 石炭
ドイツは石炭産業をEU炭素トレーディングプログラムから除外すると発表した。石炭産業とは石炭を燃料として使っている産業という意味だ。炭素トレーディングプログラムとは定められた以上の量のCO2を排出する時は、その超過する分の枠を取引所で買わなければならないという仕組みです。

ドイツ首相と連立内閣はドイツのCO2排出制限を2008年から2012年の3.4%だけカットすることに同意したという。これに批判的な人は、石炭はもっとも多くのCO2を排出する(CO2排出係数が最も大きい)のだから、これを除外してしまうとCO2削減そのものが意味をなさなくなると主張している。とはいえ、石炭なんぞを入れたらば、足元一体いくらお金を払えばよいのか分からないし、そもそも石炭の分をカバーできるほどの排出権の量があるのかということだろう。
欧州委員会はドイツの今回の行動に対してコメントをする前に、よく検討するとしている。

ドイツの環境大臣は今後ともドイツは国際社会あるいはEU内において気候枠組みの中でパイオニア的な役割を果たし続けるといっている。まー、何をどうやって果たすのかはよく分かりませんが。

排出権取引において、導入初期にあっては需要の方が大きくなる。2005年に始まった第一フェーズでは石油精製、鉄鋼、セメント、窯業、紙などの産業ではCO2排出の特別な枠を必要としている。

これに対して、イギリス炭素トラストはEUメンバー各国は排出権の価格暴落を避けるために国が許可する枠(交付枠)を19%減らしたと主張している。

企業は国から交付された枠よりも多くのCO2を出す時には、排出権を取引所で買い、逆に余った時には売ることになる。どこの企業も買うほうには回りたくないので、交付枠を多くもらうように働きかける。国が各企業の枠を決めるというのは、昔の日本の護送船団方式です。国がある企業に公布する枠を決めるにあたっては、その企業あるいはその業界の実績をベースにするしか無い。ところが、昔からCO2排出削減に取り組んできた企業は、少ない排出量を基準にして決められる。一方、CO2をばんばん出してきた企業は、より多くの排出枠をもらえることになる。これでは頑張った人が存することになってしまい、これが本当にうまく機能するのかどうかという疑問がついて回る。

今回のサンクトペテルブルグサミットでは、ドイツは気候枠組み問題を避けて経済問題を中心にすえてがっているが、英国は逆にこの問題をトップに持って期待という綱引きがある。
さらには原子力発電廃棄物の国際管理にかかわるような議題も想定されている。小泉首相としては最後のサミットだが、物見遊山というわけには行かない。