化学系エンジニアの独り言

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カーボンフリーの石炭火力発電所

2006-06-20 | 石炭
ワールドカップ開催中のドイツでの話し。Schwarze Pumpeという所にスウェーデンのVattenfall社がカーボンフリーの石炭火力発電所を建設した。石炭燃焼により生成する二酸化炭素を分離回収し、地中に圧入して大気に放出しないという方法である。プラント運開のセレモニーにはドイツ首相も参加したという。しかしこのプラントはデモンストレーションで、ドイツは今後5年間で8箇所の石炭火力発電所の建設を計画している。もちろん経済性の観点からそれらは二酸化炭素を回収する設備は有していない。

ヨーロッパの国は一般に温暖化対策に積極的だと思われているし、事実その通りだろう。ドイツやイギリスは今日とプロトコルでの削減量をたいした努力もせずに(失礼)、達成できる見通しという。このことからそもそも削減量の設定が不当に低いのではないかという批判がある。もっとも欧州は90年以降の経済成長が緩やかで、つまりは経済的にはあんまり発展しておらず、旧式の石炭火力を新型石炭火力に更新するだけで大幅なエネルギー効率の向上が見込まれ、それによりCO2削減量が達成できてしまうという。

しかし石炭に大きく依存していることもまた事実であり、そのことは広く認識されているとはいえ無い。例えばドイツは石炭火力により発電の50%をまかなっている。日本は24%だから如何に石炭への依存度が高いかが分かる。中学校の頃習ったようにドイツではライン地方やルール地方(だったか?)で石炭が取れるので、国内資源の石炭を利用すること自体は自然だ。

さらに近年の原油価格の高騰や、ロシアがウクライナとの天然ガス価格交渉時においてパイプラインのガス供給を停止するという強硬手段(売り手のロシアにすれば当たり前の作戦か)を目の前で見せられては、経済面やエネルギー安全保障の両面から石炭の比重をあげるのは当然とも言える。

石油は中東に偏在しているし、天然ガスはロシア、イラン、カタールで58%を占めているのに対して、石炭はどこの国にもある。アメリカにも中国にもあるので、取り合い合戦にならずに済んでいる。唯一の輸入大国は日本になるのでしょう。日本の炭鉱も石炭を掘りつくしたので閉山となったのではなく、価格面で海外炭にまけ、石油へのエネルギーシフトが起きたので閉山したのであり、資源としてはまだ埋蔵量はかなりあるものと思われる。もっとも現在の石炭輸入量は1.5億トン/年で、1961年のおける最高産出量は5500万トンなので国内炭だけでまかなうのには無理があることも事実。それにしても、国内の炭鉱に後どれくらい石炭の埋蔵量があるのかは興味深いところではある。