化学系エンジニアの独り言

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石炭の需要

2006-06-14 | 石炭
NYTimesの記事から中国における石炭の使用に関して。中国の石炭火力発電所からの排煙が偏西風に乗ってソール経由でアメリカ西海岸のオレゴン、ワシントンまで到達しているそうだ。このような微粒子は肺疾患を初め多くの病気を引き起こす。中国からのありがたくない輸出品である。中国の石炭消費量は2025年には世界のそのほかの国の合計よりも多くなろう。

排煙中のSO2の健康被害により中国では毎年40万人が早死にするだろうという意見もある。もちろんSO2は酸性雨を引き起こす。この微粒子は太陽の熱線を宇宙に反射させる効果も有しており、これは一時的ではあるが地球温暖化を抑制する方向に働くという。
もっとも同時に排出されるCO2の温室効果は何十年も続くことになるので、SO2の温暖化抑制効果などは直ぐに帳消しになってしまう。

中国の石炭需要は過去2年間、年率14%で増加している。これは毎週、新設の石炭火力発電所が稼動していることを意味している。この電力はダラスやサンディエゴの一般家庭分に相当する、といわれてもぴんと来ないが、両市の人口はそれぞれ120万くらいです。

中国の後ろにはインドが控えていて、インドも石炭火力に力点を置いている。2030年にはインドが中国の人口を超える、という。中国の人口は13億人、インドは10.6億人である。しかし、一人っ子政策で人口抑制を図っている中国ではあるが、統計に載らない人口もいるようで、現在の中国の人口は15億人を超えているという人もいる。まー、いずれにせよ多すぎるということです。

中国などで今後の石炭利用に当たっては、日本を初めとする環境技術先進国の技術を取り入れて高効率利用をせねばならないが、安い国産の技術で済ませたいという本音もある。また、これまで建設している旧型炉の寿命は75年くらいはあり、おいそれと石炭利用効率が向上するものでも無いという現実もある。

石炭の需要に関する数値をまとめておく。全世界では年間43億トンの石炭を消費しているが、そのうち中国は20億トンです。石炭はすべて中国国内産であり、わずかながら輸出もしている。石炭の可採年数は230年といわれているが、今の調子で中国、インドでの需要が増加してしまうと可採年数は短くなる。それでも石油の40年に比べればはるかに埋蔵量は多く、また世界中にぷんぷしている(一部の地域に偏ってはいない)という利点がある。しかしCO2排出係数が大きいという、10年前には考えられないような不利な点が出てきてしまっているのが困ったところだ。
日本はというと全量を輸入に頼っているが、1.5億トンの石炭需要がある。これは鉄鋼と電力でほぼ半々に使われている。日本人一人当たりにすると年間1.2トンの石炭を使っている計算になる。1.2トンという量はちょうど自家用車1台と同じくらいの重さです。ちなみに輸入先はオーストラリアが最も多く、58%になっている。
 
次回に続く。