化学系エンジニアの独り言

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石炭の話 その2

2006-06-01 | 石炭
石炭価格はカロリーベースで天然ガスや石油よりも安い。したがって発電に利用した場合、安価な電力を供給できるというメリットがある。また、米国の国内エネルギーなので価格の安定性、安全保障の観点からも良い燃料では有る。

しかし、CO2排出量と温暖化という課題が重石になっている。

石炭を積極的に使っていこうという意見はこうだ。

American Electric Power社はCO2排出制限を設ければ2010年以降、エネルギー供給の成長が阻害されると主張する。

石炭の消費量ではすでに数年前にアメリカを追い越している中国がCO2排出制限などせずに石炭を利用し続けているのに、米国内でクリーンコールのために時間とお金を費やすことは無いという意見もある。

ブッシュ政権はCO2排出制限には反対しているなどなど。

石炭を発電に使い続けることは経済的に理にかなっているが、CO2排出を全く無視しても言いというわけで無い。
そこで、排出されるCO2を分離して、地中に埋め戻すあるいは注入するという方法が解決策として注目される。また、CO2分離やSOx抑制のために現状の微粉炭燃焼に変わりガス化燃焼技術の導入も考えられるべきであろう。

2025年までは石炭の使用は拡大を続けるだろうから、CO2排出削減の技術開発はマーケットにゆだねられるべきで、政府の規制で行なわれるべきで無い。例えば前出のPeabody社はイリノイ南部とケンタッキー西部にそれぞれ150万kWの石炭火力発電を計画している。

このような企業を後押しするようにオハイオの公共局はクリーンコール技術のためのコストをエネルギー価格に建設完了前に転嫁することを了承した。この技術はガス化燃焼なのでSOx排出も抑制され酸性雨被害も無くなる。

微粉炭燃焼はIGCC(Integrated Gasification Combined Cycle)ガス化よりも15-20%安価であり、この点が有利である。
一方、ガス化のほうがCO2隔離には有利である。CO2隔離技術は10年以内に経済的にも技術的にも実現すると見られている。

すでにノースダコタのガス化プラントではサスカチュワンにCO2を送り、旧い油田に注入して産油量アップを図っている。BPも同様の試みをロス近郊の製油所でコークスからのCO2を用いて行なう計画である。Bush政権もFuturegenというPJで25万kW発電所からのCO2隔離技術開発を計画しているが、このPJは遅れており2012年に運転開始である。しかし、時期的に遅いし規模も小さいという批判はある。


しかし石炭の使用に消極的な意見もある。

Natural Resources Defence Councilは石炭の使用は毎年10億トンのCO2を増加させると主張する。

石炭の使用そのものに反対するのはExelonやDuke Energyなどの原子力関連企業である。

石炭は時代遅れの燃料ではなく、まだまだ活躍の場はある。その埋蔵量が石油よりも多いことや埋蔵地域が石油のように偏っていないことなどの利点もある。LPGの岩盤備蓄が出来るのだから、CO2の油層注入も技術的に可能になる日も近いと考えられる。