化学系エンジニアの独り言

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クリーンコールテクノロジー

2006-06-15 | 石炭
石炭は旧くて新しい燃料である。液体燃料に主役の座を譲ったとはいえ、埋蔵量から見ても引き続き主要なエネルギー源になるだろう。但し、石炭の燃焼により排出される有害物質を除去する必要はますます高まる。この有害物質を取り除くのがクリーンコールテクノロジーと呼ばれている。

有害物質とは具体的にはSOx、NOxと煤塵である。最近はこれに温暖化ガスのCO2も含めて考える。日本の技術は世界でも比類無いくらい高い。発電所で1kWhの電力を発電するのに排出される有害物質の量で比較すると、日本の排出量はSOxで0.2g/kWh、NOxで0.3であるが、アメリカではSOxで4.8、NOxで2.1と桁違いである。

有害物質を取り除く装置には以下のようなものがある。NOxは排煙脱硝装置でアンモニア還元法により除去される。装置そのものは煙道のダクト内に設置され、NOxをアンモニアと反応させて、窒素と水に変える。反応のためにハニカム形状の触媒が使用される。

煤塵はフライアッシュとも呼ばれるが、石炭中に含まれる鉱物(金属)の微粒子である。大きさは0.5-50ミクロンで排煙に混じって排出される。これは電気集塵器で捕集される。

SOxは石灰石(CaCO3)スラリーに吸収されて石膏(CaSO4)となる。排煙脱硫装置は、排煙脱硝装置、電気集塵器の後段に設置され、胴体の太い塔(脱じん塔、吸収塔)より成る。
日本の発電所ではこれらの設備を備えているが、海外では必ずしもすべての発電所でこのような設備を備えているわけでは無い。

以上の装置は燃焼後のガスをクリーンにするものであるが、これに対して石炭からクリーンな燃料を製造し、これを燃料に使用する方法もまた、クリーンコールテクノロジーの一種である。石炭の液化、ガス化、ガス化したものからさらに液体燃料を合成する方法などである。

以上の技術はそこそこ完成の域にあるが、燃焼後のCO2の処理についてはまだまだ開発を進めていかなければならないことが多い。