野の花 庭の花

野の花や山の花は心を慰めてくれます。庭園に咲き誇る花は心をはなやかにしてくれます。

白い鳥が飛んでいるような「コブシ」(早春の花 042)

2021年03月26日 09時22分47秒 | 

白い鳥が飛んでいるような「コブシ」。ハクモクレンばかりみかけて、今年はなかなか出会えなかった。例年咲いている場所まででかけてようやく撮影できた。どの花もそろって上を向くハクモクレンも優雅だが、それぞれの花が勝手な向きに咲くコブシの奔放さも捨てがたい。辛夷という漢字の名は中国のを借りたので、中国の辛夷はハクモクレンだという。コブシという和名は蕾が子供の拳に似ているからだという。俳句ではとくに好まれた季題のようで、長いリストになる。「辛夷散り白の狼藉尽しけり 能村登四郎」は後味の残る句だ。コブシの俳句の例句を読んでいるだけでも、一時間はゆったりと楽しめる。
(2021年早春 川崎市)

■早春の花シリーズ

「チロリアンデージー」(早春の花 001)
「クリスマスローズ」(早春の花002)
「ツルニチニチソウ」(早春の花 003)
「ペーパーホワイト」(早春の花 004)
「日本水仙」(早春の花 005)
「黄水仙」(早春の花 006)
「カラスノエンドウ」(早春の花 007)
「ラッパスイセン」(早春の花 008)
「ヒマラヤユキノシタ」(早春の花 009)
「ジンチョウゲ」(早春の花 010)
「ヒメオドリコソウ」(早春の花 011)
「アラセイトウ」(早春の花 012)
「オオイヌノフグリ」(早春の花 013)
「ハクモクレン」(早春の花 014)
「玉縄桜」(早春の花 015)
「タチツボスミレ」(早春の花 016)
「河津桜」(早春の花 017)
「ノースポール」(早春の花 018)
「ヒヤシンス」(早春の花 019)
「ミモザ」(早春の花 020)
「フレンチ・ラベンダー」(早春の花 021)
「シデコブシ」(早春の花 022)
「ムスカリ」(早春の花 023)
「レンギョウ」(早春の花 024)
「クロッカス」(早春の花 025)
「馬酔木」(早春の花 026)
「ヤグルマギク」(早春の花 027)
「雪柳」(早春の花 028)
「イベリス」(早春の花 029)
「オオアラセイトウ」(早春の花 030)
「スノーフレーク」(早春の花 031)
「モクレン」(早春の花 032)
「ハナニラ」(早春の花 033)
「ヤマザクラ」(早春の花 034)
「ネモフィラ」(早春の花 035)
「キンギョソウ」(早春の花 036)
「福寿草」(早春の花 037)
「ベニスモモ」(早春の花 038)
「ソメイヨシノ」(早春の花 039)
「ハルジオン」(早春の花 040)
「キュウリグサ」(早春の花 041)

 

 

コブシの基本情報
学名:Magnolia kobus(Magnolia praecocissima)
和名:コブシ(辛夷)  
科名 / 属名:モクレン科 / モクレン属

日本各地の野山を白い花で彩るコブシは、サクラとともに春の訪れを告げる花木です。ヤマザクラと同じく、コブシもタネまきや田植えの時期を知らせる花として、古くから農耕と密接な関係がありました。そのため、両種ともに田打桜、種蒔桜、田植桜と呼ばれます。
同じモクレンの仲間で、庭木としても栽培されるハクモクレンよりもコブシは花が小さく、開花時に花の下に小さな葉がつくので簡単に区別することができます。
ほかのモクレンの園芸品種(マグノリア)の台木として使われるように、生育おう盛で育てやすいのですが、大きくなるため鉢植えではなく庭木として育てます。

基本データ
園芸分類 庭木・花木
形態 高木 原産地 日本・韓国(済州島)
草丈/樹高 8~10m 開花期 4月上旬
花色 白 栽培難易度(1~5) 
耐寒性 強い 耐暑性 強い
特性・用途 落葉性,耐寒性が強い

 

辛夷 の例句 (←ここをクリック)
http://fudemaka57.exblog.jp/23764094/

辛夷 補遺

あたりには誰も居らざる辛夷仰ぐ 波多野爽波 鋪道の花
あの家の辛夷が咲いてわれは鬱 岸田稚魚 紅葉山
いつぺんに辛夷の空となりにけり 岸田稚魚 紅葉山
いづこへか辛夷の谷の朝鳥よ 佐藤鬼房
いづみ千年湛ふ白きは姫辛夷 及川貞 夕焼
おのがじし辛夷の花の雨あがる 長谷川素逝 暦日
おもしろき世の入口の辛夷の芽 能村登四郎
かゝりゐし雲なくなりぬ辛夷の芽 清崎敏郎
きみ恋ふや風に辛夷の揺られ坂 渡邊白泉
けふの日も辛夷の花に照り曇り 山口青邨
けものみち辛夷咲く見て戻りけり 石川桂郎 四温
この雹の辛夷摶ちをらむ天上忌 石田波郷
しづまるを待てる辛夷の蕾かな 阿波野青畝
すぐ晴れん空疑はぬ辛夷かな 阿波野青畝
どちらでもよしひめ辛夷しで辛夷 後藤比奈夫
どつちへも流れぬどぶなんで辛夷花さいた 中川一碧樓
なかぞらに辛夷冷えゆく嶺のうら 鷲谷七菜子 銃身
ながらへてをれば辛夷の高蕾 石田勝彦 百千
なつかしき掌のふくいくと花辛夷 原裕 葦牙
なんとなく鹿ゐて睦む姫辛夷 飴山實 句集外
によき~と花になじまぬ辛夷哉 鳳朗
のぼり来て辛夷散華のなかに逢ふ 角川源義
はつはつと白きは辛夷ここは信濃 安住敦
はつはつと礫せしかに山辛夷 上田五千石『琥珀』補遺
ひえびえと魂さまよへる花辛夷 飯田龍太
ひかりつつ辛夷は満てり朝の彌撒 弟子 星野麥丘人
ひとつづつひらく辛夷となりにけり 石田勝彦 秋興
ひとびとの喪服の空の花辛夷 飯田龍太
ひよどりの巣喰つてゐたり辛夷咲く 細見綾子
まぎれざる辛夷をもつて夕ベとす 岡本眸
みな去りし辛夷の下に立つて見る 山口青邨
みな指になり風つかむ花辛夷 林翔
もの思ひつつ見て遠き花辛夷 飯田龍太
もみくちやに辛夷は吹かれ心吹かれ 三橋鷹女
もろごゑのきこえずこぞり花辛夷 森澄雄
わが山河まだ見尽さず花辛夷 相馬遷子 山河
わさび田に散りてゐるらむかの辛夷 細見綾子
一天の深さ木の辛夷つぼみたり 中川一碧樓
一山に一樹のみある夕辛夷 能村登四郎
一瓣のはらりと解けし辛夷かな 富安風生
一辯の疵つき開く辛夷かな 高野素十
丘の辛夷の火葬を了る 三橋鷹女
中年の辛夷を愛づる限りなく 三橋鷹女
丹の宮の丹生川上社辛夷咲く 能村登四郎
乳房のごと辛夷盛りあぐ画家羨し 楠本憲吉 孤客
亜隆隆ほどの朝魔羅遠辛夷 佐藤鬼房
人日の日雀がとほる辛夷の木 岡井省二 鹿野
人間は昨日やめたり花辛夷 平井照敏 天上大風
伊勢みちの霞の空の辛夷かな 岡井省二 明野
信玄の棒道の花大辛夷 百合山羽公 樂土
修羅落す谺が残り幣辛夷 鷲谷七菜子 游影
初花の辛夷月夜を漂へり 林翔 和紙
北空に刻みの深き花辛夷 鷹羽狩行
千木の立つ家見えそめし辛夷かな 阿波野青畝
及ばざる手をのべもして花辛夷 石田勝彦 秋興以後
友の死を仰いでゐたる夜の辛夷 森澄雄
口笛のみ日の矢ほぐれている辛夷 古沢太穂 火雲
古宮の名代の辛夷咲きにけり 政岡子規 辛夷
合掌百花を抽きて一辛夷 岸田稚魚 筍流し
向うから桜や辛夷新庄なり 金子兜太
咲きたらふ辛夷に牛の二十頭 石田勝彦 秋興
咲き出でて妻の俤花辛夷 森澄雄
咲き満てる辛夷の風をいたみけり 西島麦南 人音
咲くからに縺れてをりし辛夷かな 飯島晴子
唐人の辛夷を画く座興哉 政岡子規 辛夷
喬木の辛夷あたりを払ひけり 阿波野青畝
土塀朽ち骨の瓦よ辛夷の芽 細見綾子
夕されば誰も居らざる辛夷かな 山口青邨
夕ベ門に立つ人遠し辛夷咲く 大野林火 白幡南町 昭和三十二年
夕影の展けしところ幣辛夷 赤尾兜子 玄玄
夕空の青みわたれる辛夷かな 石田勝彦 秋興以後
夢の世と思ひてゐしが辛夷咲く 能村登四郎
大寺の合掌造り辛夷咲く 能村登四郎
大揺れの葉叢に隣り花辛夷 飯田龍太
大空に莟を張りし辛夷かな 松本たかし
大藁家辛夷がくれになき如し 富安風生
天にさへ漂ふ翳り辛夷咲く 鷲谷七菜子 銃身
天にのび白い哄笑辛夷咲く 有馬朗人 母国
天白く辛夷の花のこぞり消ゆ 山口青邨
太陽も目潰しに会ふ花辛夷 鷹羽狩行
妻の木を辛夷ときめし冬芽かな 石田勝彦 百千
尼過ぎて辛夷のどこか揺らぎだす 伊藤白潮
尾根越しの風に匂ふは花辛夷 福田蓼汀 秋風挽歌
居りよいか辛夷へ鷽のかへし来る 寥松
山に辛夷田打ちはじまる北陸路 細見綾子
山の辛夷は鬱たるみどり夏蚕飼ふ 森澄雄
山よろこべと満開の花辛夷 飯田龍太
山刀伐や*ぶなの中なる幣辛夷 岡井省二 前後
山垣の雲ひらきつつ辛夷かな 飴山實 次の花
山垣の雲ひらきつゝ辛夷かな 飴山實
山水のひゞかふ町は辛夷どき 飴山實 次の花
山越の鴉こゑなし花辛夷 石田波郷
山越ゆる夢のなかなる花辛夷 飯田龍太
山辛夷ぱらりと咲いて田ごしらへ 飴山實 辛酉小雪
山辛夷枝先に花一つづつ 右城暮石 散歩圏
山近く辛夷も咲きぬ種を蒔く 山口青邨
山陽の軸に配する辛夷かな 政岡子規 辛夷
山鳥はまだ冬で来る辛夷哉 鈴木道彦
幻の辛夷かがやく枯木中 角川源義
待たれゐる如しも辛夷咲きたけて 三橋鷹女
律院の松亭々と辛夷かな 河東碧梧桐
忘れゐし空を仰げば花辛夷 鷹羽狩行
忘恩やあまりに近く辛夷咲き 伊藤白潮
息白く辛夷のもとの夜の別れ 大野林火 雪華 昭和三十九年
揺るるより影こもごもに花辛夷 鷲谷七菜子 銃身
故里に発つべかりしを辛夷散る 中村汀女
数ならぬ身の愉しさに花辛夷 飯田龍太
旅の身に七星うるむ花辛夷 鷲谷七菜子 黄炎
旧山廬訪へば大破や辛夷咲く 飯田蛇笏 山廬集
春しくれて辛夷ちるのみ笹塘 鈴木道彦
春風や野にほや~と辛夷咲 尚白
昼も夜も風をよろこび花辛夷 飯田龍太
昼月のまぎれて高き辛夷かな 山田みづえ 木語
暮るゝまでこころ高貴や花辛夷 藤田湘子
曇りぐせいつよりつきし辛夷かな 安住敦
曇天へまづ白点や辛夷蕾む 香西照雄 素心
月明の闇忘れたる花辛夷 岡井省二 夏炉
朝ざくら見むと辛夷の幹に倚る 岡本眸
朝風の辛夷のひかり吹きめくれ 長谷川素逝 暦日
木末踏みちに辛夷の白き哉 白雄
未開拓辛夷の原も丘もあり 阿波野青畝
本を見て作る料理や花辛夷 細見綾子 存問
杉襖二本競ひて花辛夷 松崎鉄之介
林中の花や辛夷はひとりの木 石田勝彦 秋興
林中や辛夷花びら反りて散る 松村蒼石 雪
桃花村また李咲き辛夷咲く 相馬遷子 山河
桜狩遠山辛夷うかれ来ぬ 嵐蘭
梅辛夷三月月も太りゆく 森澄雄
歩み入る水源保安林辛夷散り 大野林火 白幡南町 昭和三十一年
死後づつとその窓開かず辛夷咲き 能村登四郎
残雪の少し汚るゝ辛夷の芽 清崎敏郎
水に手を浸けては見上ぐ花辛夷 飴山實 辛酉小雪
沖天の水煙かがやくは花辛夷 山口青邨
湖をふたたび見せし辛夷かな 阿波野青畝
湖曇る出雲に来しよ花辛夷 藤田湘子 途上
満月に目をみひらいて花こぶし 飯田龍太
満開の切なさ辛夷蒼味帯ぶ 三橋鷹女
満開の風の辛夷やいつもはるか 岸田稚魚
烈風の山の辛夷の錆びにけり 臼田亜浪 旅人 抄
烈風の日の粒たまる花辛夷 大野林火 白幡南町 昭和三十一年
生死もとよりなきごとし辛夷咲きたり 中川一碧樓
病室に見えずて匂ふ花辛夷 斎藤玄 狩眼
病院の影出て遊ぶ花辛夷 飯田龍太
白き小鳥千羽の舞か辛夷咲く 林翔
白き空白焔とのみ辛夷咲く 山口青邨
白といふふしぎな色の花辛夷 能村登四郎
白雲のつどふところに花辛夷 上田五千石『風景』補遺
白雲のわかれ去りゆく辛夷かな 山口青邨
目をあぐるたびに石見の花辛夷 飴山實 辛酉小雪
真田道辛夷の白をつづりけり 松崎鉄之介
真白に行手うづめて山辛夷 高野素十
瞼つめた辛夷初花いつ濡れしか 大野林火 潺潺集 昭和四十二年
石燈籠の位置定まらぬ辛夷かな 政岡子規 辛夷
神山の木綿四手として辛夷咲く 能村登四郎
神風の伊勢の辛夷の真白にぞ 日野草城
種叺浸しあり辛夷うつりをり 大野林火 方円集 昭和五十三年
稽古矢のそれて飛たる辛夷哉 政岡子規 辛夷
稽古矢の高くそれたる辛夷哉 政岡子規 辛夷
空冷えて来し夕風の辛夷かな 草間時彦 櫻山
空厩戸越しに見えて遠辛夷 能村登四郎
空谷の辛夷は蝦夷の春を呼ぶ 阿波野青畝
窓開けて湖は見えねど夜の辛夷 相馬遷子 山国
美濃に入り山城処々に花辛夷 松崎鉄之介
老教師酔へるを送る夜の辛夷 能村登四郎
聴き耳の旅はじまれり辛夷咲き 岡井省二 明野
能舞台裏の京壁花辛夷 松崎鉄之介
腹へつてくれば辛夷の昼となる 波多野爽波 鋪道の花
花こぶし嬬恋村の定期便 角川源義
花こぶし山河やすしと起居せよ 角川源義
花こぶし風をとりこにして騒ぐ 鷹羽狩行
花一ツ竿でくづせし辛夷哉 政岡子規 辛夷
花咲て見れば此木が辛夷よの 寥松
花籠に皆蕾なる辛夷かな 政岡子規 辛夷
花辛夷いつか見慣れてゐる山路 稲畑汀子
花辛夷人なつかしく咲きにけり 松本たかし
花辛夷仰ぎてこころ刃のごとし 飯田龍太
花辛夷吹くや看護婦同色に 斎藤玄 狩眼
花辛夷土塀めぐらす外厠 松崎鉄之介
花辛夷散り滝水にただよへる 清崎敏郎
花辛夷晝月もまた花のごと 飯田龍太
花辛夷晩婚夫妻翳もなし 藤田湘子 途上
花辛夷月また花のごとくあり 飯田龍太
花辛夷牛飼の指うるみけり 藤田湘子
花辛夷白の浄土を崖下に 松崎鉄之介
芽吹き山残る辛夷を簪す 森澄雄
若き日の八ちまたおもへ夜の辛夷 森澄雄
茶畑の傾斜どまりに花辛夷 能村登四郎
落日の金打ちのべし花辛夷 野見山朱鳥 愁絶
落石の的ともなりし辛夷かな 阿波野青畝
葛屋奥あり針木林むら辛夷 尚白
見てここに立てば昔の花辛夷 山口青邨
谿あれば弱き夕光・夕辛夷 能村登四郎
豆まきを待つ間見つけし辛夷の芽(深大寺六句) 細見綾子
辛夷さく下道照りて通りしか 細見綾子
辛夷つばらに子の誕生日いつなりしや 安住敦
辛夷に立ち冥き湖にも心牽かれ 橋本多佳子
辛夷のキャンドル・サービス 礼拝開門に 伊丹三樹彦
辛夷の空光りの鈍き日の通る 能村登四郎
辛夷の芽風たたぬ日の光かな 古沢太穂 古沢太穂句集
辛夷ひらけて爪冷る山路なし 寥松
辛夷ふくらむ雪の北地が詩の母郷 松崎鉄之介
辛夷ふるはす屋根しづり落つ雪の音 松崎鉄之介
辛夷を吾が好むと云へば人も云へり 三橋鷹女
辛夷一つこれはといふべかり 加藤秋邨
辛夷一樹ありて遍路も山添ひに 能村登四郎
辛夷一樹花すくなきはまことなり 松村蒼石 雪
辛夷冷えはくれんぐもりつづくらむ 上田五千石『天路』補遺
辛夷咲いて我の生まるるまへの母 森澄雄
辛夷咲ききらゝひそめし曇り空 能村登四郎
辛夷咲きをとめらはピンカールなせる 三橋鷹女
辛夷咲きサイ口も辛夷がくれかな 清崎敏郎
辛夷咲き万蕾いまだ空の塵 林翔 和紙
辛夷咲き人ら相寄る水邊かな 岡井省二 前後
辛夷咲き善福寺川縷の如し 水原秋櫻子 玄魚
辛夷咲き夕ベ湯気濃き硫黄泉 大野林火 白幡南町 昭和三十一年
辛夷咲き川沿ひに町はじまれり 大野林火 雪華 昭和三十六年
辛夷咲き日暮のこころ永くせり 細見綾子
辛夷咲き浅間嶺雪を梳る 相馬遷子 雪嶺
辛夷咲き琺瑯の空ゆらぎをり 森澄雄
辛夷咲き畦の卍も青みたり 水原秋櫻子 帰心
辛夷咲き畳のうへに死者生者 岡井省二 明野
辛夷咲き胸もと緩(ゆる)し人妻は 中村苑子
辛夷咲くひかりを空へ投げ上げて 平井照敏
辛夷咲く中やキリンの顔懸る 松崎鉄之介
辛夷咲く咲くところにはかたまつて 右城暮石 天水
辛夷咲く垣根もありて家まばら 政岡子規 辛夷
辛夷咲く死の明るさもこれ位 能村登四郎
辛夷咲く空へ嬰児の掌を開く 有馬朗人 母国
辛夷咲く遥かな丘ゆ啄木来る 村山故郷
辛夷咲く黒雲の風青空へ 飯田龍太
辛夷揉む風乙女子を叫ばしぬ 大野林火 雪華 昭和三十六年
辛夷散りしあとの林の風を聞く 細見綾子
辛夷散り十日の沼の萌黄なす 能村登四郎
辛夷散り白の狼藉尽しけり 能村登四郎
辛夷散るうごくものなき水の上 野澤節子 八朶集以後
辛夷散る烈風ベートーヴエン忌なり 野見山朱鳥 荊冠
辛夷散る百の白磁を打ち砕き 後藤比奈夫
辛夷活け山鳩鳴けば鄙めきぬ 山口青邨
辛夷白し雨脚もその高さより 大野林火 方円集 昭和四十九年
辛夷見て夕日諏訪湖に落つるなり 細見綾子
追分の辛夷の山となりにけり 星野麥丘人 2002年
酔眼に発矢発矢と夜の辛夷 伊丹三樹彦
野の池を十目見ざりき咲く辛夷 水原秋櫻子 古鏡
鈴鳴らしゆく旅もがな辛夷咲き 能村登四郎
長かりし辛夷の空の終ひの頃 岸田稚魚 紅葉山
開山忌辛夷の白の蝶結び 石田勝彦 百千
降りしきる雪をとどめず辛夷かな 渡邊水巴 白日
陶工の見てをる辛夷空の藍 森澄雄
隠沼の面ととのはず辛夷咲く 山口青邨
雨ふふむ辛夷をくれし美男僧 能村登四郎
雨足りて山田息づく花辛夷 相馬遷子 山河
雪前雪後今年の辛夷暗かりき 加藤秋邨
雪敷くや深山辛夷のやつれ咲き 上田五千石『琥珀』補遺
雪片の過ぐ花辛夷うすみどり 大野林火 飛花集 昭和四十五年
雲湧きてよりの旅愁や花辛夷 鈴木真砂女 夏帯
雲表に雪の嶺のぞく辛夷かな 阿波野青畝
霞みつゝ辛夷の花けなほも白く 山口青邨
青さすや辛夷にどこか月ありて 加藤秋邨
青天と辛夷とそして真紅な嘘 三橋鷹女
青天の辛夷や墓のにほひする 森澄雄
青空ゆ辛夷の傷みたる匂ひ 大野林火 青水輪 昭和二十七年
題目の碑がある寺の辛夷かな 政岡子規 辛夷
風あたりいたみよごれし辛夷かな 高野素十
風あふれ辛夷樹上の花の舞 林翔 和紙
風のなき日々の辛夷の照り疲れ 岸田稚魚 紅葉山
風の出て来し揺れざまの姫辛夷 清崎敏郎
風摶つや辛夷もろとも雑木山 石田波郷
風花や日あたる辛夷昃る沙羅 石田波郷
風落つるさまなき夕日照る辛夷 臼田亜郎 定本亜浪句集
風邪の神月の輪を出て花こぶし 飯田龍太
飛び翔たんばかりに白し山辛夷 右城暮石 虻峠
馬や牛ども糞落す辛夷かな 阿波野青畝
高く咲く辛夷の花のごとくあれ 山口青邨
高嶺星今宵はうるむ辛夷かな 阿波野青畝
鮠の上こぶしの花を流しけり 飴山實 辛酉小雪
鱒池のほとりに咲くは幣辛夷 細見綾子
鴉来て踏落したる辛夷哉 政岡子規 辛夷
鵯の喧嘩辛夷の花を散らしたり 細見綾子
鵯ひとつ過ぎしそよぎの花辛夷 鷹羽狩行
鶏鳴く青梅ひそけく辛夷咲く 角川源義
鶏鳴や風まださむき辛夷の木 百合山羽公 故園



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