野の花 庭の花

野の花や山の花は心を慰めてくれます。庭園に咲き誇る花は心をはなやかにしてくれます。

桃色の花弁に濃い紅色の縦の絞りが入る椿「天人松島」(椿シリーズ48)

2020年03月31日 12時42分04秒 | 

桃色の花弁に濃い紅色の縦の絞りが入る椿「天人松島」。一重の平開咲きの大輪で、白の覆輪はあまり目立たず、むしろ筒しべが目立つ。江戸時代後期の文献に載る。

(2020-03 東京都 神代植物公園) 

 


黄緑色の小さな花がくるくるとついてかわいい「ヤマネコノメソウ」(高尾の花08)

2020年03月31日 09時00分39秒 | 

ネコノメソウの仲間の一つ「ヤマネコノメソウ」。黄緑色の小さな花がくるくるとついてかわいい。高尾山ではいくつもの種類のネコノメソウがたくさん咲いていた。

(2020-03 高尾山) 

 

 

 

ヤマネコノメソウ Chrysosplenium japonicum は、ネコノメソウ属の植物の1つ。走出枝を伸ばさず、葉や苞葉は丸っこい。

特徴
小型の多年生草本。根出葉は全体で長さ2-7cmで葉柄にはまばらに柔らかな毛がある。葉身は円腎形で幅15-25mm、縁は浅く切れ込む。葉身の基部は心形。花茎は高さ10-20cm、葉柄のように柔らかな毛がまばらに生える。茎葉は1-2個が互生し、長い葉柄がある。花茎の基部はやや膨らみ、地上にも地下にも匍匐茎を出さないが、花が終わった後に楕円形で表面に毛の生えた珠芽を生じ、これによっても繁殖する。

花は早春に咲く。花序は径2-3cmで6-10個の花を密につける。花は径4-5mm、4枚の萼列片は淡緑色で、倒卵形で平開し、長さ約1mm、花後に直立する。雄蕊は4-8個あってごく短く、裂開前の葯は黄色い。さく果は5月頃に杯形に口を開ける。種子は黒くて楕円形、稜が1本走り、全体に表面を微細な突起が覆う。

分布と生育環境
北海道の西南部から九州まで広く分布するほか、国外でも朝鮮半島、中国大陸(東北部)にも産する。森林の林床から林縁や湿ったところ、低地の茂った石垣などにもみられる。本種は日本国内では分布域、生育環境共にもっとも幅広いものである。

 

 

 


マンサクの赤花の園芸品種「ルビー・グロー」(20-027)

2020年03月31日 07時56分01秒 | 

マンサクの赤花の園芸品種「ルビー・グロー」。早春に赤の花弁が人目を引く。マンサクについては「牧野日本植物図鑑」では、「和名は満作の意にして満作は豊作と同じく穀物の豊稔を云う。この樹花盛んに発らきて枝に満つればかく云う。人に由ればマンサクを早春先開の義に取りしなりと謂えり」とか。豊作を祈った花なのだろうか。

(2020-02東京都 神代植物公園) 

 

 


サーモンピンクの厚い花弁がずっしりと咲くバラ「アフロディーテ」(薔薇シリーズ146)

2020年03月31日 07時14分14秒 | 

サーモンピンクの厚い花弁がずっしりと咲くバラ「アフロディーテ」。美の女神の名前にふさわしいゴージャスなバラだ。剣弁ロゼット咲きの大輪の花が重たげに咲く。

(2019-11 川崎市 生田緑地バラ苑) 

 

バラ「アフロディーテ」

アフロディーテの詳細
花弁が厚く大輪で形の良いロゼット咲きと、珊瑚を思わせる深みのあるサーモンピンクがクラシカルな雰囲気を醸し出します。葉は濃緑で厚みがあり健康的で樹形はコンパクト。鉢植えにも向いています。美と愛をつかさどるギリシャ神話の女神の名前のバラです。

品種名 アフロディーテ
英語名 Aphrodite
系統 ハイブリッドティ
作出年/国 2006年/ドイツ
作出者 Tantau
香り 軽い
開花習性 四季咲き
花形 剣弁ロゼット咲き 12㎝
樹高 1.4m


八重の濃紅の花弁に白の絞りが入る椿「正義」(椿シリーズ47)

2020年03月30日 08時58分46秒 | 

八重の濃紅の花弁に白の絞りが入る椿「正義」(まさよし)。蓮華咲きの大輪なので、とても映えて、目立つ。花芯で整っておさまる包しべもこの花に似つかわしい。シーボルトが海外に持ち出した椿の一つと言われ、海外ではドン・ケラリーと呼ばれているという。「樹齢200年を超える古木が九州各地にある」という(「最新 日本ツバキ図鑑」より)。

(2020-03 東京都 神代植物公園) 


春に先駆けて黄金色の花をつける「サンシュユ」(20-026)

2020年03月30日 08時26分17秒 | 

春に先駆けて黄金色の花をつける「サンシュユ」。漢字の山茱萸をそのまま日本語読みした名前だ。ヤマグミという意味であり、グミに似た実をつける。漢方薬にも使われる。別名はハルコガネバナ。春に黄金色の花をつけるというまさにそのものの名前である。

(2020-03 東京都 神代植物公園) 

サンシュユ

サンシュユは葉が開くより先に開花するため、株全体が鮮やかな黄色に包まれます。花は黄色い小花が30個ほど集まり、直径2~3cmほどの小さな花房(散形花序)をつくって開花します。各花には4本の雄しべがあり、これらが花序の輪郭をぼかし、花序全体が輝いているように見えます。開花期以外も、若い枝の樹皮が薄くはがれて琥珀のように日光に映え、秋には紅葉とともにサンゴのようにつややかな赤い実が楽しめます。最近ではセイヨウサンシュユ(別種)の斑入り品種数種類も人気があります。

基本データ

園芸分類 庭木・花木
形態 高木 原産地 中国、朝鮮半島
草丈/樹高 8m 開花期 3月~4月
花色 黄 栽培難易度(1~5) 
耐寒性 普通 耐暑性 強い
特性・用途 落葉性


奇妙な名前と奇妙な花がユニークな「コチャルメルソウ」(高尾の花07)

2020年03月30日 07時47分24秒 | 

奇妙な名前と奇妙な花がユニークな「コチャルメルソウ」。写真のはまだ若い株だ。開花した様子などは、コチャルメルソウのページの多数の写真と詳細な説明をごらんいただきたい。口吻が長いキノコバエだけによって受粉するらしい。名前はラーメン屋の屋台で吹かれる楽器チャルメラホーンと花の形が似ているということらしい。想像力に富む人のつけた名前だ。参考までにホーンの画像を最後につけておく。

(2020-03 高尾山) 

 

 

「コチャルメルソウ」

コチャルメルソウ(小哨吶草、学名:Mitella pauciflora )は、ユキノシタ科チャルメルソウ属の多年草。

特徴
地中の根茎は長く横にはう。花後、地中に鱗片状の葉を互生させた走出枝を出して繁殖する。根出葉は互生し、長さ2-15cmになる葉柄があってまばらに腺毛がはえる。葉身は長さ2-5cm、幅2.5-6cmになる広卵形から卵円形で、基部は深い心形、先は鋭頭または鈍頭で、縁は浅く5裂し、さらに不整の鋸歯がある。葉の両面に立ったあらい毛と微小な腺毛がはえる。

花期は4-6月。花茎は高さ20-30cmになり、茎葉はなく短腺毛が密生し先に2-10個の花を総状花序につける。花柄は長さ2mmになり短腺毛が密生する。萼筒は浅い倒円錐形で腺状突起が密生し、萼裂片は5個あり、長さ1mmの広3角状卵形で花時には開出する。花弁は5個あり、紅紫色または淡黄緑色で、長さは4mmになり羽状に細く7-9裂して「魚の骨」状になり、外面に腺点があり、花時には反曲する。雄蕊は5個あり、萼裂片と互生して花盤上につき、裂開直前の葯は淡黄色になる。子房は下位で、1室に2個の心皮があり、花柱2個は短い。果実は蒴果で、花柱間の縫合線に沿って鐘状に開く。種子は卵状楕円形で長さ約1.2mmになり、種皮は暗緑色になる。

分布と生育環境
日本固有種。本州、四国、九州に分布し、山地の渓流沿いや湿った林床などに生育する。


花弁の表が朱色で、裏面は黄色がかるバラ「ローラ '81」(薔薇シリーズ145)

2020年03月30日 07時15分38秒 | 

花弁の表が朱色で、裏面は黄色がかるバラ「ローラ '81」。メイヤン家の作出になる大輪のバラで、半剣弁高芯咲きの花が一輪、あるいは房咲きで咲く。どっしりとした花容がみごとだ。

(2019-11 川崎市 生田緑地バラ苑) 

バラ「ローラ 81」

品種名:ローラ Laura  別名:ローラ ’81
作出国:フランス
作出年:1981年
作出者:Marie-Louise (Louisette) Meilland
系統:[HT] ハイブリッドティー
交配親:(Pharaoh × Konigin der Rosen) × {(Suspense × Suspense) × King’s Ransom}
咲き方:四季咲き
花形:半剣弁高芯咲き
花径:大輪(13cm・花弁数17~25枚)
香り:微香
樹形:半横張り性
樹高:130cm
強く太いシュートを発生させて大株に生長する


日本でもっともふつうにみられる赤い椿「ヤブツバキ」(椿シリーズ46)

2020年03月29日 09時41分11秒 | 

日本でもっともふつうにみられる赤い椿はこの「ヤブツバキ」。大島の椿もこの品種だ。花弁が開ききらずに筒咲きのままなので、茶花に好まれる。江戸時代から多くの品種の作出のために使われてきた。

(2020-03 東京都 神代植物公園) 

【ヤブツバキとは】
・ツバキ科ツバキ属に属する日本固有の常緑樹。本州(青森県夏泊半島が北限)から沖縄の各地に自生するが、東北地方では海岸沿いに多く、それ以外の場所では山地にも見られる。大島を代表とした伊豆七島はヤブツバキの名所として古くから知られる。
・日本最古の観賞用花木あるいは代表的な茶花として知られ、江戸時代には本種とユキツバキを掛け合わせるなどして数多くの品種が作られたが、単にツバキという場合は本種を示す。
・2月から4月にかけて赤又は白の五弁花を咲かせる。花は枝先に一輪ずつ、やや筒状に開くのが特徴。サザンカのように全開せず、その控えめな様子が好まれて茶花に使われる。花にはヒヨドリやメジロが集まり、花粉を運ぶ。
・野生種では咲き終わった花が丸ごと落下するのもサザンカとの違いだが、武士たちは、これが打ち首を連想させるとして忌み嫌った。花はサルの好物であり、人間社会でも花弁を天婦羅にして食べる風習がある。
・9月から10月にかけて熟す実には3~5個の種子ができる。この種子からはオレインを含む良質の油が採れ、かつては食用(てんぷら油など)、整髪用、薬用、工業用に使われた。
・葉は長楕円形で先端が尖り、周囲には細かなギザギザがある。長さ5~11センチ、幅3~8センチほどで、枝から互い違いに生じる。両面に毛がなく、年中ツヤツヤとしていることから、光沢を表す古語の「ツバ」を冠した「ツバの木」からツバキとなった(他にも「艶葉木」、「厚葉木」など諸説ある。)。
・漢字は「椿」、「海石榴」、「山茶」が当てられる。最も有名な「椿」は和字(日本ならではの使い方)であり、中国語の「椿」はチャンチンという別の木を示す。英名のカメリアは、この木を日本からロンドンに持ち帰ったチェコスロバキア人宣教師の名前。
・ヤブツバキの樹高は最大で15m以上になる。樹皮には細かな皴や模様が出ることもあるが触り心地は滑らか。材は緻密で耐久性が高く、光沢のある仕上がりはツゲに似ている。ツゲほどの高級品とは見なされないが、櫛、将棋の駒、印鑑等に利用される。

 

 


五輪の白の花弁のはかなげな風情がかわいい「ニリンソウ」(高尾シリーズ06)

2020年03月29日 09時07分29秒 | 

谷筋の道端をときに埋め尽くすほどに群生していたニリンソウ。五輪の白の花弁のはかなげな風情がなんともかわいい。紫を帯びて下を向いた蕾の頃もまたいわく言い難い可憐さだ。

 (2020-03 高尾山) 

 

ニリンソウ(二輪草、学名:Anemone flaccida)は、キンポウゲ科イチリンソウ属の多年草。春山を代表する花のひとつ。

特徴
深く裂けた根生葉を持つ。茎に3枚が輪生する葉には、サンリンソウのような柄はない。3-6月に、白い萼片を持つ直径約2 cmの花をつける。多くは1本の茎から特徴的に2輪ずつ花茎が伸び、和名の由来となっている。まれに1輪や3輪のものもある。根茎で増えるため、群落を作ることが多い。別名が、「フクベラ・ガショウソウ」。

分布と生育環境
東アジア(樺太、朝鮮、中国(北部・東北地方)、ウスリー地方、日本)に分布する。日本では北海道、本州、四国、九州に分布し、主に湿潤な山地の林床や周辺部に生育する。基準標本はサハリンのもの。

利用
根茎は「地烏(ジウ)」と呼ばれ、漢方薬として用いられる。また、若葉は山菜として食用とされ、アイヌ達は冬季の重要な備蓄食料として、5月から6月に採集し利用していた。一方で、有毒植物であるトリカブトの若葉に似ていることから注意が必要である。例えば2009年、2012年には間違えてトリカブトを口にし、死に至った事例が日本で報告されている。トリカブトとの誤認を防ぐ為には、ニリンソウの採集は蕾を確認してからが望ましいとの見解がある。

 

 

 


春一番に赤い花をつける「ヤハズエンドウ」(20-025)

2020年03月29日 07時58分40秒 | 

カラスノエンドウと呼ばれているヤハズエンドウ。春一番に赤い花をつけるので、毎年、この花が咲くのを心待ちにしている。小型の紅紫色の花はアップでみると、なかなかの迫力だ。

(2020-03 東京都 神代植物公園) 

 

ヤハズエンドウ(矢筈豌豆、Vicia sativa subsp. nigra)はソラマメ属の越年草。ヤハズエンドウが植物学的局面では標準的に用いられる和名だが、カラスノエンドウ(烏野豌豆)という名が一般には定着している(「野豌豆」は中国での名称)。俗称としてシービービーというものもある。種を取り払った豆殻を笛として使用する遊びに由来する。

特徴
本州から四国・九州・沖縄の路傍や堤防などのいたるところにごく普通に生育している。 秋に発芽し、春になると高さ60 - 150cmに達する。茎には巻きひげがあり、近くのものに絡みつくこともあるが大体は直立する。茎は全体に毛があり四角柱状。
強い臭気がある。 花期は3 - 6月でエンドウに似た小型の紅紫色の花を付ける。豆果は熟すると黒くなって晴天の日に裂け、種子を激しく弾き飛ばす。

原産地はオリエントから地中海にかけての地方であり、この地方での古代の麦作農耕の開始期にはエンドウなどと同様に栽培されて作物として利用された証拠が考古学的資料によって得られている。そのため、若芽や若い豆果を食用にすることができるし、熟した豆も炒って食用にできるが、その後栽培植物としての利用はほぼ断絶して今日では雑草とみなされている

また、未熟な果実の両端を切り落し、草笛にすることができる。

一見するとソラマメの仲間とは思えないが、よく見ると、茎が角ばっていることと、豆のへそが長いというソラマメ属の特徴を満たしている。

史記で伯夷・叔齋が山で餓死する前に食べていた「薇」(び)は、野豌豆の類ともいい、またワラビやゼンマイのことともいう。

 


大きくて厚めの花弁が惜しみなく開く白バラ「ホワイト・クリスマス」(薔薇シリーズ144)

2020年03月29日 07時31分57秒 | 

大きくて厚めの花弁が惜しみなく開く白バラ「ホワイト・クリスマス」。蕾の頃から大きな白薔薇を予感させる。甘い香りが漂う豪奢な白薔薇だ。

(2019-11 川崎市 生田緑地バラ苑) 

 

バラ「ホワイト・クリスマス」

白ばらの傑作として、今も多くのナーサリーにて生産され続けている品種です。花弁が弱くて雨により開かないことも多々あり、他にもっと洗練された白い花もないとはいえません。しかし株全体で見たとき、この品種がやはり唯一無二の存在であることを強く感じます。白い卵のように立派な蕾がいくつも上がり、花弁は雄大に展開し、漂う甘い香り。枝葉は赤みがなく清らかな明るい緑で、樹形は半直立に整います。巨大輪ながら花つきよく、大株になるとまさに雪が降り積もったかのような咲き姿。至高の愛に生きたイエス・キリストの誕生を祝うにふさわしい名花といえましょう。

品種名 ホワイト クリスマス
ローマ字 White Christmas
系統 ハイブリッド ティー (HT)
Hybrid Tea
咲き方 四季咲き
香り 強香
花径 12㎝
樹高 1.5m
樹形図 1b番 半直立
作出年 1953年
作出国 アメリカ
作出者 Howard & Smith
交配
Sleigh Bells × 実生


早春に可憐な白い花を俯きがちに咲かせるセリバオウレン(高尾シリーズ05)

2020年03月28日 11時00分56秒 | 

早春に可憐な白い花を俯きがちに咲かせるセリバオウレン。芹に似た葉ですぐに見分けがつく。雌雄別株で、写真は雄株である。

 (2020-03 高尾山) 

セリバオウレン

セリバオウレン(芹葉黄連)
多年草
本州、四国の山地に生える。葉は2回3出複葉で、小葉がセリの葉のように切れ込む。花は直径1cmほど。萼片は5-7個、花弁は8-10個。雌雄異株。雄花は花弁状の萼片が5個、雄しべが多い。葯は白色。雌花は紫色を帯び、花弁状の萼片5個、へら状の花弁と雌しべはともに10個ほど。花柄などが紫褐色を帯びる。花期は3?4月。(山に咲く花)
学名は、Coptis japonica var. major
キンポウゲ科オウレン属


整った五弁の白い花で樹木ごと真っ白になる「スモモ」(20-024)

2020年03月28日 09時56分19秒 | 

整った五弁の白い花で樹木ごと真っ白になる「スモモ」。スモモの花がこれほど清楚できれいだとは思わなかった。「わが園の 李の花か 庭に散る はだれのいまだ 残りたるかも」(大伴家持)。はだれは「斑雪(はだれゆき)」の略である。たしかに散ると雪のようにみえる。俳句では夏の季語なので、花は登場しないのが寂しい。

(2020-03 東京都 神代植物公園) 

スモモ

スモモ(李、酢桃、学名:Prunus salicina)はバラ科サクラ属の落葉小高木。また、その果実のこと。

概要
スモモの果実はモモに比べて酸味が強いことが、和名の由来となっている。漢字では「李」とも書かれる。英語では"Asian plum","Japanese plum"などと呼ばれる(ただしウメも「プラム」と呼ばれることがある)。地域によっては、ハダンキョウあるいはハタンキョウ(巴旦杏)とも呼ばれるが、同じく巴旦杏と呼ばれるアーモンドとは別種である。古くから日本に伝わっており、和歌などにも詠まれる。農園で栽培される他、自生しているものもある。

19世紀にアメリカに渡ったスモモは育種家のルーサー・バーバンクの手により「ソルダム」、「サンタローザ」、「ビューティー」などの品種として改良され、再び日本に「プラム」として輸入された。それらを元に日本では「大石早生」、「月光」などに発展させていった。

特徴

スモモの花
花期は初春で白い花が咲く。花芽分化は7 - 8月頃。果実はスモモ系は6月下旬から8月中旬、プルーンの系統は9月頃収穫できる。果実は紅や黄色、果肉は淡黄色や紅色など品種によって異なる。代表的な品種としては「大石早生」、「ソルダム」、「サンタローザ」、「メスレー」、「太陽」、「ケルシー」など。比較的新しい品種では「紫峰」、「月光」、「貴陽」、「秋姫」、「いくみ」などがあり、これらの品種は従来種より糖度が高く、生食用に品種改良されている。葉が紅色のハリウッドは受粉樹に向く。スモモは自分の花粉では結実しにくい自家不和合性なのでほとんどの品種で受粉樹が必要である。日本での主産地は山梨県など。

桃とは異なる種で、同じバラ科サクラ属の梅、杏、桃の花粉を利用して人工授粉させることができる。長果枝は開花しても結実しにくいので、中短果枝および花束状短果枝を出させる剪定を冬季に行う。開花期に霜に当たると、不完全花となり結実しないため、開花時期に晩霜に遭わない地域が適する。成木なのに収量が少ないのは受粉樹が近くにない・受粉樹との相性が悪い・低温晩霜に当たったのが原因と考えられる。発芽する前に石灰硫黄合剤を散布して葉や果実が膨れ上がるふくろみ病を防ぐ。シンクイムシ・アブラムシ・カイガラムシ・イラガ等がつく。

2014年(平成22年)より、ウメ輪紋ウイルス(プラムポックスウイルス)の緊急防除の規制対象植物に指定され、指定地域からの種子、果実以外の持ち出しが禁止されている。

 

李 の例句 

しばらくは李と吾とまろびけり 岡井省二 鯨と犀
すもも甘し瞋りにとほくとほくゐて 上田五千石『天路』補遺
すもも祭十七八の巫女なりし 細見綾子
すもも食む午前の汗を流しきり 野澤節子 鳳蝶
たそがれを濃くすすももの香に立ちて(大国魂神社すもも祭三句) 細見綾子
なつかしき思ひに李青かりし 高野素十
むらむらと闇にみたるゝ李かな 正岡子規 李
一人づつまた一つづつ巴旦杏 古舘曹人 樹下石上
一休と笑ひたりけり巴旦杏 岡井省二 前後
七月や海の店にも李出て 森澄雄
丘の上に李あり愛の日の君も 金子兜太
八月の梅落ち李むらさきに 山口青邨
地いきれのはげしき日なりすもも祭 細見綾子
夏が深くて山に村村もゝすもも 高屋窓秋
夕立にふりまじりたる李かな 正岡子規 李
妻はいま小さき位牌巴旦杏 森澄雄
子を負へる子のみしなのの梨すもも 橋本多佳子
子鴉の母呼ぶ李月夜かな 内藤鳴雪
密教と李とインク壷の夜 岡井省二 鯨と犀
巴旦杏*もぐ庭にある八ケ嶽 木村蕪城 一位
巴旦杏かじり陶師の家に憩ふ 山口青邨
巴旦杏の影なす妻の若さ過ぐ 森澄雄
巴旦杏幼な古ごと皆似たり 水原秋櫻子 残鐘
巴旦杏水田平らな風送る 森澄雄
巴旦杏相鬩ぐ瞳がかなしけれ 加藤秋邨
巴旦杏祭の夏は来たりけり 阿波野青畝
巴旦杏落ちゐる道へ山下る 木村蕪城 一位
巴旦杏襁褓日和に蕾み初む 上田五千石『森林』補遺
広州に着きてすぐ買ふ巴旦杏 松崎鉄之介
店さきに幾日を経たる李哉 正岡子規 李
持ち重りするを知りつつすもも買ふ(大国魂神社すもも祭三句) 細見綾子
掌に李ひとうたがへばきりもなし 伊丹三樹彦
旅人にお愛宕さまの落李 上田五千石『琥珀』補遺
暑き日や買ひしすももの甘酸つぱ(大国魂神社すもも祭三句) 細見綾子
木のうれの紫にして李かな 右城暮石 句集外 昭和二年
李盛る見世のほこりの暑哉 万乎
李食ふ少年のいまわれが食ふ 森澄雄
溝ありて一と跳びするや桃すもも 岡井省二 鯛の鯛
熟れきつて裂け落つ李紫に 杉田久女
畑中に三輪の染屋の李かな 河東碧梧桐
病間や桃食ひながら李画く 正岡子規 桃の実
痩せ男野犬男に李のような妻 金子兜太
禿頭の悪童もいるすももの里 金子兜太
籠居のゆふべたのみし巴旦杏 岡井省二 五劫集
肉付きの種なほ吸ひて巴旦杏 鷹羽狩行
花火あげすもも祭を囃すなり 細見綾子
虫はみて一枝赤き李かな 正岡子規 李
虫喰ひすもも赤犬人をなつかしむ 細見綾子
血肉噛むかに巴旦杏甘く渋し 津田清子 礼拝
貴金属など持ちませぬ李噛む 三橋鷹女
賞与得てしばらく富みぬ巴旦杏 草間時彦 中年
赤いすもも青いすももと並べたる 細見綾子 牡丹
門川のほとばしり落ち李熟る 山口青邨
黒揚羽すもも祭を飛びまはる 細見綾子


たおやかな白の千重咲きの椿「白菊」(椿シリーズ46)

2020年03月28日 08時47分41秒 | 

たおやかな白の千重咲きの椿「白菊」。ほんとうに白い菊の花のような雰囲気をまとっている。厚い花弁が重なるのがしっとりとした感じをだしている。花芯のまとまりもきれいだ。「細長い樋状弁はときに列弁咲きにもなる」という(「最新 日本ツバキ図鑑」より)。1695年の江戸初期の文献に名前が記録されているという。