野の花 庭の花

野の花や山の花は心を慰めてくれます。庭園に咲き誇る花は心をはなやかにしてくれます。

日本人には親しみ深いチガヤ

2019年04月30日 14時49分04秒 | 
どこにでも生えているチガヤだが、これが万葉の頃から歌われている浅茅のことだとは知らなかった。
食べられたりもするんだ。
(2019-04 神奈川県川崎市、道端)








チガヤ
(千萱、茅、学名:Imperata cylindrica (L.) P.Beauv.)は、単子葉植物イネ科チガヤ属の植物である。日当たりのよい空き地に一面にはえ、細い葉を一面に立てた群落を作り、白い穂を出す。かつては食べられたこともある、古くから親しまれた雑草である。

特徴
地下茎は横に這い、所々から少数の葉をまとめて出す。地上には花茎以外にはほとんど葉だけが出ている状態である。葉には細くて硬い葉柄があって、その先はやや幅広くなり、広線形。葉はほとんど真っすぐに立ち上がり、高さは30-50cm程になる。葉の裏表の差はあまりない。葉の縁はざらつくがススキほどではない。

葉は冬に枯れるが、温暖地では残ることもある。この時期、葉は先端から赤く染まるのが見られる。

初夏に穂を出す。穂は細長い円柱形で、葉よりも高く伸び上がり、ほぼまっすぐに立つ。分枝はなく、真っ白の綿毛に包まれていて、よく目立つ。種子はこの綿毛に風を受けて遠くまで飛ぶ。

日向の草地にごく普通に見られ、道端や畑にも出現する。地下にしっかりした匍匐茎があるため、大変しつこい雑草である。河原の土手などでは、一面に繁茂することがある。

芽の先端が細く尖り、塩化ビニール製の蛇腹ホース程度なら貫通する場合もあるという[1]。

花の構造
花穂は白い綿毛に包まれるが、この綿毛は小穂の基部から生じるものである。小穂は花序の主軸から伸びる短い柄の上に、2個ずつつく。長い柄のものと、短い柄のものとが対になっていて、それらが互いに寄り沿うようになっている。

小穂は長さが4mmほど、細い披針形をしている。小花は1個だけで、これは本来は2個であったものと考えられるが、第1小花はなく、その鱗片もかなり退化している。柱頭は細長く、紫に染まっていて、綿毛の間から伸び出すのでよく目立つ。

分布
日本では、北海道から琉球列島までの全土でごく普通。国外ではアジア大陸の中西部からアフリカ、オーストラリアにわたる広い範囲に分布し、現在では北アメリカにも帰化している。なお、日本にあるものをフシゲチガヤ(var. koenigii (Retz.) Durand et Schniz) として変種とする説がある。原名変種は地中海沿岸に分布し、節に毛がないこと、小穂がやや大きく、柄がほとんどないことで区別される。

なお、チガヤ属には世界の熱帯から暖帯に約10種があるが、日本では1種だけである。

遷移との関係
遷移の上では、多年生草本であるので、1年生草本の群落に侵入すると、次第に置き換わってやや安定した草原を形成する。日本では、やがてススキなどが侵入すると、背の高さで劣るため、チガヤは次第に姿を消し、ススキ草原やササの群落から松林へと遷移が進む。

河川の土手などでは、定期的な草刈りや土手焼きなどによって、チガヤ草原が維持されている。昭和中期までは、土手の草は家畜の飼料や田畑の肥料として用いられたため、このような草刈りは定期的かつ丁寧に行われ、そのため土手の草は常に低く抑えられていた。ここにチガヤを主体として、ツリガネニンジンやツルボ、ワレモコウや、あるいは秋の七草などの草花が咲く環境が維持されていたようである。それ以後は、農業の形態が変わってこのような土手の草の需要がなくなったこともあって、草刈りや土手焼きは行われることが少なくなり、また富栄養化も進み、草丈が高くなってしまったところも多い。セイタカアワダチソウや、オオブタクサなどが侵入し、置き換わった場所もある。都市近郊では、大規模な改修が進み、芝生やコスモス畑などの人工的な緑地となったところもある。しかし道路周辺などの草刈りの行き届いた場所では、現在もよく見ることが出来、ごく普通種であることには代わりはない。

なお、日本以外の地域においては、チガヤ草原がより広範囲、恒常的に存在する場所もある。特に、熱帯から亜熱帯にかけての雨季と乾季のはっきりした地域ではチガヤは非常によく繁殖し、「世界最強の雑草」という称号すらある。世界の侵略的外来種ワースト100 (IUCN, 2000) 選定種の一つである。東南アジアなどで森林を破壊するとアランアランと呼ばれるチガヤ草原になりやすく、そうなると遷移を妨害してなかなか森林が回復しないと言われる。


人間との関わり
ごく人間の身近に生育する草である。地下にしっかりした匍匐茎を伸ばすので、やっかいな雑草である。

他方、さまざまな利用も行われた。そのため古くから親しまれ、古名はチ(茅)であり、花穂はチバナまたはツバナとも呼ばれ、古事記や万葉集にもその名が出る。

この植物はサトウキビとも近縁で、植物体に糖分を蓄える性質がある。外に顔を出す前の若い穂は、噛むと甘く、子供がおやつ代わりに噛んでいた。地下茎の新芽も食用となったことがある。万葉集にも穂を噛む記述がある。

茎葉は乾燥させて屋根を葺くのに使い、また成熟した穂を火口(ほくち)に使った。乾燥した茎葉を梱包材とした例もある。

また、花穂を乾燥させたものは強壮剤、根茎は茅根(ぼうこん)と呼ばれて利尿剤にも使われる。

他に、ちまき(粽)は現在ではササの葉などに包むのが普通であるが、本来はチガヤに巻いた「茅巻き」で、それが名の由来であるとの説がある。

もう一つの利用として、園芸方面がある。この植物はむしろ雑草であるが、葉が赤くなる性質が強く出るものを栽培する例がある。



和歌歳時記


   『万葉集』 (野遊) 作者不詳
春日野の浅茅が上に思ふどち遊ぶ今日の日忘らえめやも

   『新古今集』 (百首歌よみ侍りけるに) 藤原良経
ふるさとは浅茅が末になりはてて月にのこれる人の面影

   『新古今集』 (寄風懐旧といふことを) 源通光
浅茅生や袖にくちにし秋の霜わすれぬ夢をふく嵐かな

   『新古今集』 (五十首歌たてまつりし時) 藤原雅経
かげとめし露のやどりを思ひいでて霜にあととふ浅茅生の月

   『続古今集』 (千五百番歌合に) 藤原定家
桜花うつろふ春をあまたへて身さへふりぬる浅茅生の宿

   『あらたま』 斎藤茂吉
真夏日のひかり澄み果てし浅茅原にそよぎの音のきこえけるかも

   『白き山』 斎藤茂吉
われをめぐる茅(ち)がやそよぎて寂(しづ)かなる秋の光になりにけるかも

   『川のほとり』 古泉千樫
山原のほほけ茅花(つばな)のうちなびき乱るるが中にころぶしにけり

   『海やまのあひだ』 釈迢空
うちわたす 大茅原となりにけり。茅の葉光る夏の風かも

   『天眼』 佐藤佐太郎
ちがやなど風にふかるるもの軽し影さきだてて帰る渚に

山でみるとどこかほっとするヤマツツジ

2019年04月30日 08時00分36秒 | 
丹沢の山麓の林ではヤマツツジが満開だった。
どこでも見かける花だが、街中の毒々しい色のつつじと比べると
どこか懐かしい花である。

(2019-04 神奈川県伊勢原市、林間)






ヤマツツジ(山躑躅、学名:Rhododendron kaempferi)はツツジ科ツツジ属の半落葉低木。

特徴
高さは1-5mになり、若い枝には淡褐色の伏した剛毛が密生する。

葉は互生し、葉柄は長さ1-3mmになる。春葉と夏葉の別があり、春葉は春に出て秋に落葉し、夏葉は夏から秋に出て一部は越冬する。
春葉は長さ2-5cm、幅0.7-3cmになり、卵形、楕円形、長楕円形、卵状長楕円形など形状や大きさに変化が多く、先は短くとがり先端に腺状突起があり、基部は鋭形、葉の両面、特に裏面の脈上に長毛が生える。
夏葉は春葉より小型で、長さ1-2cm、幅0.4-1cmになり、倒披針形、倒披針状長楕円形で、先は丸く先端に腺状突起があり、基部はくさび形、葉の両面に毛が生える。

花期は4-6月。枝先の1個の花芽に1-3個の花をつける。花柄は長さ3-4mmになり、花冠の筒はやや太く、色は朱色、まれに紅紫色、白色があり、径3-4cmの漏斗形で5中裂する。花冠の上側内面に濃色の斑点があり、内面に短毛が散生する。雄蘂は5本。花柱は長さ3-4cmになり無毛。
果実は蒴果で長さ6-8mmの長卵形で、8-10月に熟し裂開する。

分布と生育環境
北海道南部、本州、四国、九州に分布し、低山地の疎林内、林縁、日当たりのよい尾根筋、草原などに生育する。日本の野生ツツジの代表種で、日本の野生ツツジでは分布域がもっとも広い。


つつじの句も多い。ヤマツツジと断らなくても、かつてはつつじと言えばヤマツツジだったろう。「かけはしやあぶないとこに山つゝし 政岡子規 つつじ」など、うまく生態を捉えている。

躑躅 の例句

*さるをがせに枯れけん樹々や山躑躅 河東碧梧桐
あらはれてかくれて咲ける山躑躅 日野草城
いつまでもつつじさつきの紛らはし 右城暮石 句集外 平成二年
いつも青い海見ているフランシスザベリオつつじさく 荻原井泉水
いづこにも埃の躑躅いさかひ事 中村草田男
いのち長き躑躅の紅を疎むべし 安住敦
うつうつと大嶽の昼躑躅さく 飯田蛇笏 春蘭
うつうつと大嶽の雪躑躅さく 飯田蛇笏 白嶽
うらゝかや躑躅に落つる鶴の糞 日野草城
かけはしやあぶないとこに山つゝし 政岡子規 つつじ
かたがたに人を訪ひにし山つつじ 岡井省二 有時
この音羽いでや躑躅のはな曇 馬場存義
こまがりに刈り残されて山つゝじ 政岡子規 つつじ
さゝやかな金魚の波や山つゝし 政岡子規 つつじ
せめてもの つつじ うぐいす 配流の陵 伊丹三樹彦
その先は躑躅明りにまかせけり 飯島晴子
ただ青し花終りたるつつじの木 日野草城
ぢぢばばに紫つつじ屏風なす 山口青邨
つき山のつゝじ咲く也石の間 政岡子規 つつじ
つつじなり瑠瑞光院に返り花 山口青邨
つつじの花ぶらさがり荷風先生逝く 山口青邨
つつじの赤き白き君たちそれぞれ発言する 荻原井泉水
つつじの返りさく年末の湯にきての仕事 荻原井泉水
つつじの道別れの杉は枯れにけり 角川源義
つつじより紅絹よりも濃き鉄が馳す 中村汀女
つつじを手に精薄児というこの子の笑う 荻原井泉水
つつじ咲き神の山裾庭とせり 山口青邨
つつじ咲く母の暮しに加はりし 中村汀女
つつじ執念に散らずあじさいいち早く咲く 荻原井泉水
つつじ密磊塊過ぎる造り岩 香西照雄 素心
つつじ山 点火はいまも自己命令 伊丹三樹彦
つつじ山から 男三人 呵々大笑 伊丹三樹彦
つつじ山とつとと下りて汗ばみぬ 上村占魚 球磨
つつじ挿して七つの墓を弔へる 高野素十
つつじ散り沼に憑かるる貌暗し 橋閒石 無刻
つつじ紅白少年のボート少女のボート 富安風生
つつじ赤く白くて鳶の恋高し 西東三鬼
つみこんで四角に咲きしつゝじ哉 政岡子規 つつじ
つややかに岩も生ひ出て山つつじ 上田五千石『風景』補遺
つんつんと風の躑躅の蕾立ち 富安風生
つゝじまだ咲かで淋しき園生哉 政岡子規 つつじ
つゝじ咲く巌の上に橋かけたり 政岡子規 つつじ
つゝじ咲く庭や昔の御本陣 政岡子規 つつじ
つゝじ咲く絶壁の凹み仏立つ 政岡子規 つつじ
つゝじ咲て飴売る木曽の山家哉 政岡子規 つつじ
つゝじ多き田舎の寺や花御堂 政岡子規 つつじ
つゝじ多く石碑立たる茶店哉 政岡子規 つつじ
つゝじ折るつゝじが茶屋の女哉 政岡子規 つつじ
ところどころつゝじ咲く也屏風岩 政岡子規 つつじ
どうだんにまじりて咲けるつつじかな 山口青邨
ほぼ真下より見て屏風岩つつじ 鷹羽狩行
みよしののみやまつつじの中の瀧 阿波野青畝
よぢ下りる岩にさし出て濃躑躅 杉田久女
わが前につつじむらさき屏風なす 山口青邨
われらまたつつじどきなれ法然寺 岡井省二 夏炉
メーデーの行くさきざきの赤躑躅 山田みづえ 木語
一輪のつつじ返り咲く雨ひややか 山口青邨
三十年とは大躑躅のみならず 中村汀女
下り舟岩に松ありつゝじあり 政岡子規 つつじ
中島はつつじ盛り上げ五月祭 山口青邨
中年の女ら酔へる躑躅のなか 橋閒石 無刻
九日の躑躅しはびし卯月かな 高桑闌更
二日路や高野にそふて山つゝじ 政岡子規 つつじ
五月晴うす色つつじ全山に 松本たかし
今日いはゞ爰も躑躅の石見がた 土芳
住職も犬も狷介つつじ寺 右城暮石 一芸
兄も柚弟も柚山つつじ 阿波野青畝
全山に移るつつじをうたがはず 中村汀女
其石の白みに馴て躑躅かな 十丈
冷水をしたたか浴びせ躑躅活け 杉田久女
刻は非情に僕犯しつつ緋つつじ燃え 楠本憲吉 方壺集
北岳を攀ぢ降りるなり岩躑躅 杉田久女
十六番館のつつじ風景出船入船と見る 荻原井泉水
南へは降りず躑躅を眺めけり 杉田久女
右手青空を左手つつじを指して平和像なり 荻原井泉水
名物の菎蒻黒きつゝじかな 政岡子規 つつじ
君知るや躑躅の花は下痢の因 渡邊白泉
吾子の瞳に緋躑躅宿るむらさきに 中村草田男
咲きしづむ躑躅に翔ける岩燕 飯田蛇笏 椿花集
土佐の海ぬくしつつじの返り花 右城暮石 句集外 昭和四十八年
土運びし手足燃えゐて赤つつじ 細見綾子
塀ごしに庄屋のつゝじ見ゆる也 政岡子規 つつじ
塔見えて躑躅燃えたつ山路かな 阿波野青畝
塵労の顔をつっこむ躑躅燃ゆ 伊丹三樹彦
墓つつじその花気を置く離屋かな 赤尾兜子 玄玄
大岩のつゝじ小さく見ゆる哉 政岡子規 つつじ
大岩のわれめわれめや岩つゝし 政岡子規 つつじ
大木のつゝじ名に立つ野寺哉 政岡子規 つつじ
大木のつゝじ見による野寺哉 政岡子規 つつじ
大木のつゝじ見に来る野寺哉 政岡子規 つつじ
大磯や庭砂にして松つゝじ 政岡子規 つつじ
天鵞絨の牛うつくしや躑躅原 魚日
妹が門つゝじをむしる別れ哉 政岡子規 つつじ
家庭訪問つつじまつりの中通る 木村蕪城 寒泉
小木の中芽ぶく躑躅に春の日が 右城暮石 句集外 昭和二年
小沼の牧躑躅ちりばめ水あをし 水原秋櫻子 磐梯
尼寺や卯月八日の白躑躅 飯田蛇笏 山廬集
尼寺をしのび歩くや白つつじ(中宮寺) 細見綾子
尾長来て躑躅の花を屏風とす 山口青邨
屋久の猿大きな躑躅ゆさぶれる 阿波野青畝
山から少女つつじの一花つまみもち 伊丹三樹彦
山つつじ折りとり母の衿そよぐ 飯島晴子
山つつじ折り来て活ける花器探がす 右城暮石 句集外 昭和六十年
山つつじ海をかなたに午後の凪ぎ 飯田蛇笏 家郷の霧
山つつじ照る只中に田を墾く 飯田龍太
山にある垢離場の水やむら躑躅 河東碧梧桐
山に碑が建つ藤躑躅色をそへ 山口青邨
山の娘のすこやかにゆく躑躅かな 日野草城
山の辺のみちのべの藤つつじなど 阿波野青畝
山まゆに花咲かぬる躑躅かな 荷兮
山寺や石あつて壇あつてつゝじ咲く 政岡子規 つつじ
山陰や檐より上につゝじ咲く 政岡子規 つつじ
山鳥や躑躅よけ行尾のひねり 探丸
岡にそひてつゝじの多き小道哉 政岡子規 つつじ
岡にそふてつゝじの多き小道哉 政岡子規 つつじ
岡持が干され都心の夕つつじ 木村蕪城 寒泉
岩々のわれめわれめや山つゞじ 政岡子規 夏つつじ
岩を割く樹もある宮居躑躅かな 河東碧梧桐
岩角やつゝじ花さく歯朶隠れ 政岡子規 つつじ
帰り咲くつつじやさしや紅さして 山口青邨
庭つつじ庭師の刈リし通り咲く 高田風人子
庭にある井戸に来る婢や遅つつじ 山口青邨
庭躑躅うつる鏡に湯女は泣く 高野素十
御手植の松へ躑躅屏風のいざなへる 山口青邨
思ひきや緋染めの靄に山躑躅 林翔
手を出せば舟流れ行くつゝじ哉 政岡子規 つつじ
投入て滝見顔なり折躑躅 野坡
断層に命すがりて岩躑躅 富安風生
新緑の山火となれる躑躅かも 石塚友二 磊[カイ]集
旅人のつゝじ引き抜く山路哉 政岡子規 つつじ
日の昏れてこの家の躑躅いやあな色 三橋鷹女
明かあかとれんげつつじは鬼躑躅 山田みづえ まるめろ
明日も来い柴一束の山躑躅 此筋
明樽の躑躅淋しや二百文 内藤鳴雪
月前や四月八日の白つつじ 飯田蛇笏 椿花集
木瓜躑躅世にこのもしき菴かな 井上士朗
杣の子に遅れ躑躅と夏ひばり 飯田蛇笏 霊芝
東京の花のもつとも躑躅のころ 富安風生
松や竹みどりの中に木瓜(ぼけ)つつじ 鬼貫
松伐りし山のひろさや躑躅咲く 飯田蛇笏 霊芝
松若くつゝじがちなる小山かな 政岡子規 つつじ
案内する小僧すばやし夏つゝじ 政岡子規 夏つつじ
次の仏も 笑って導く つつじ山 伊丹三樹彦
歩くたび足の裏より霜雫 佐藤鬼房
死ぬものは死にゆく躑躅燃えてをり 臼田亜郎 定本亜浪句集
母病むや闇に真紅の躑躅燃え 相馬遷子 雪嶺
水を守ることのたふとさつつじ緋に 山口青邨
水口に百姓の詩の躑躅禅す 富安風生
水口の神の白幣つつじ山 岡井省二 鹿野
泪猶其まゝそこな躑躅花 惟然
浮島で 燃え立つつつじ この世のもの 伊丹三樹彦
消火栓かくれてをりしつつじかな 清崎敏郎
温泉山みち凝る雲みえて躑躅咲く 飯田蛇笏 霊芝
湖満水きよら白つつじ返り咲く 山口青邨
湯殿残雪瓔珞躑躅ほの紅し 佐藤鬼房
満山のつぼみのままのつつじかな 阿波野青畝
漣のくづれずに寄る白つつじ 廣瀬直人
潦出来つつ躑躅映しつつ 山口青邨
瀬をはやみ舟流れ行くつゝじ哉 政岡子規 つつじ
灌仏会山に紫つつじかな 細見綾子
照つつじ抱かれゆく子の手のみ見ゆ 岡本眸
燃ゆる如きつゝじが中の白つゝじ 政岡子規 つつじ
牧の牛蓮華つつじは喰まざるや 清崎敏郎
猪の背にも生るか羊躑躅 山店
甘茶仏の顔かくすほど山つつじ 細見綾子
白つつじまだ火の消えぬ新墓域 飯田龍太
白つつじ妻の愁ひは触れ難し 安住敦
白つつじ心のいたむことばかり 安住敦
白つつじ挿して大山崎の庵 後藤夜半 底紅
白つつじ暮れて浄土のこゑとなる 飯田龍太
白つつじ村の藤棚湿り易し 廣瀬直人 帰路
白つつじ純情にさへ個性無し 香西照雄 対話
白壁につゝじ咲たる庄屋哉 政岡子規 つつじ
白躑躅すこし早目の風呂火焚く 飯島晴子
真つ白き船の浮める躑躅かな 中村汀女
真向ひて恵那山は観るべしつつじ原 松本たかし
眦につつじの色のかたまれる 上野泰 佐介
眼の前に親しやつつじ返り花 山口青邨
石に燃えかかる火のようなつつじの雨 荻原井泉水
石切場野州つつじを頂に 山口青邨
砂金や流れとゞまる赤躑躅 車庸
窓開きつつじの靄の流れ来ぬ 山口青邨
立つ人に赤色赤光躑躅燃ゆ 山口青邨
筧ありつゝじは赤く米黒し 政岡子規 つつじ
築山につゝじ咲くなり石の間 政岡子規 つつじ
築山の裏に淋しきつゝじ哉 政岡子規 つつじ
米つつじばかりとなりし山居かな 阿波野青畝
紅つつじ花満ちて葉はかくれけり 日野草城
紫の夕山つゝじ家もなし 政岡子規 つつじ
絶ゆるなき躑躅みし眼を富士に冷ます 渡邊水巴 富士
緋つつじを舟遠くしぬ瀞遊び 山口青邨
老妻に折るやまつつじ一枝のみ 山口青邨
耕作に野はとりみだす躑躅かな 露川
胸にささば和銅のやまつつじ 山口青邨
船影がつつじの上にふとくなる 中村汀女
花とてつつじのほかはなき墓の花とし 荻原井泉水
花ながら倒し躑躅や崩崖 東皐
花ふかく躑躅見る歩を移しけり 杉田久女
花散るなようらく躑躅心あらば 杉田久女
花終へしつつじ野のけふ虹立たす 大野林火 雪華 昭和三十六年
花躑躅太刀疵のある岩も有 嵐竹
花過ぎて寂かなりけりつつじの木 日野草城
茶柱やあるじの鉢に藤つつじ 石川桂郎 含羞
荘の道躑躅となりて先上り 杉田久女
菊は古るし人形つくる躑躅かな 内藤鳴雪
菎蒻につゝじの名あれ太山寺 政岡子規 つつじ
蓮如忌のつつじ染まりの谷川ぞ 岡井省二 鹿野
蓮華つつじの崖道廻る吾子の影 角川源義
蘇芳染を著れば在郷の躑躅哉 支考
蜥蜴出て 火の舌使う つつじ山 伊丹三樹彦
蝶の影大きく飛んで白つつじ 深見けん二
裏山につゝじ許りのいはほ哉 政岡子規 つつじ
谷川に朱を流して躑躅かな 村上鬼城
赤土を運びこぼせし躑躅苑 右城暮石 句集外 昭和四十三年
躑躅さける夏の木曽山君帰 政岡子規 夏山
躑躅ぬけば石ころ~と転がるよ 内藤鳴雪
躑躅もえけふ火色なき登り窯 能村登四郎
躑躅咲うしろや闇き石燈籠 桃隣
躑躅垣一つ二つは咲き残る 日野草城
躑躅山眺むるうちに父衰ヘ 飯島晴子
躑躅山茶店出したる村の者 河東碧梧桐
躑躅山遅ざくらあり白かりき 日野草城
躑躅活けて女経読む山の中 内藤鳴雪
躑躅濃し雲の高さを下り来れば 野見山朱鳥 運命
躑躅燃ゆ手の冷え伝ふ昼の刻 角川源義
躑躅白き小庭も見えて加茂の家 河東碧梧桐
躑躅赤き監獄の門明治の世 村山故郷
躑躅野の咲きのこる花に馬あそぶ 藤田湘子 途上
車窓で叫ぶ子 さくらだ つつじだ あっ墓だ 伊丹三樹彦
返りさいてすがれししべの長さが白いつつじ 荻原井泉水
返り咲くつつじ一輪の佃島 山口青邨
返り花なれど全き白つつじ 清崎敏郎
酒無しと断わられをり躑躅微笑 石田波郷
酔ひの手拍手つつじ山から日が照つて 佐藤鬼房
野の躑躅取り来てむざと挿しにけり 相生垣瓜人 明治草
野の躑躅壺にしてより光なし 橋閒石 雪
鏡山はつつじさく鏡の池がうつす空 荻原井泉水
長七郎岳舞ひいでし鷹や躑躅野に 水原秋櫻子 磐梯
雉の子を追ひつまくつゝ躑躅かな 内藤鳴雪
雪解富士蓮華躑躅に濡れにけり 渡邊水巴 富士
雲の上までもつつじの野となりぬ 阿波野青畝
雲の中春雷響き躑躅燃え 相生垣瓜人 微茫集
霧はやく行きゆく那須のつつじかな 阿波野青畝
青き中に五月つゝじの盛り哉 政岡子規 夏つつじ
風なぶるつつじつつじや那須の原 阿波野青畝
風吹てつゝじの花の流れよる 政岡子規 つつじ
風吹て花ふる竿のつゝじ哉 政岡子規 つつじ
風明るく蛭に波ある躑躅かな 渡邊水巴 白日
風走らせる眼前の白つつじ 廣瀬直人 帰路
風鈴の音なき暮の躑躅哉 紫貞女
飛石は紅簾片岩白つつじ 山口青邨
餅くふやよしずに見すく山つゝじ 政岡子規 つつじ
馬引てつゝじの小道帰り行く 政岡子規 つつじ
高台に家構へたるつゝじかな 政岡子規 つつじ
高花のつつじ燃ゆるよ日天さま 大野林火 飛花集 昭和四十六年
鬼の血といふ其土が躑躅哉 桃隣
鳴く雉子に梢震へる山つつじ 飯田龍太
鳶の輪の行宮を辞しつつじ燃ゆ 角川源義
鵯場径白きつつじの返り咲く 山口青邨
黒揚羽来てよりつつじ朱勝ちなり 細見綾子


桐の上品な青い花が咲き始めた

2019年04月30日 07時44分51秒 | 
桐の花が咲き始めた。
初夏の花とされている。今年は全般的に花が早いのではないか。
巨木にバラバラと花がつく様子は、どこか泰然自若としたところがある。
(2019-04 神奈川県川崎市、道端)





キリ(桐、学名: Paulownia tomentosa)は、シソ目のキリ科 Paulowniaceae。以前はゴマノハグサ科に分類していた(あるいはノウゼンカズラ科)。キリ属の落葉広葉樹。漢語の別名として白桐、泡桐、榮。

属名はシーボルトが『日本植物誌』(1835年)においてアンナ・パヴロヴナに献名したもの。ただしシーボルトが与えた学名はP. imperialisであり、後にツンベルクが1783年にノウゼンカズラ科ツリガネカズラ属としてBignonia tomentosaと命名していたことが判明して1841年に現在のものに改められた[1]。

名称
キリとアオギリはまったく異なる種である。中国で古くから両方に「桐」の字を用いているために混乱が生じている。『斉民要術』ではアオギリを「青桐」、キリを「白桐」と呼び分けている[2]。現在の中国ではアオギリを「梧桐」、キリを「泡桐」と呼ぶ。アブラギリも葉の形が似ているだけでまったく異なるが、おなじく桐と呼ばれる。

英語の「princess tree」は、属名の Paulownia の語源であるアンナ・パヴロヴナがロシア大公女であったことに基づく。

形態・生態

高さは10mほどで、初夏の頃に円錐花序に淡い紫色の筒状の花をつける。葉も特徴的であり、広卵形の大きな葉をつける。

翼(よく)のついた小さい種子は風でよく撒布され、発芽率が高く生長が早いため、随所に野生化した個体が見られる。アメリカ合衆国でも野生化して問題となっている[3]。


伝統的な樹木だけに、俳句の作品にもよく登場する。「上臈にいまも焦がれて桐の花 佐藤鬼房」など、花の上品さに誘われた句も多い。花嫁の箪笥の連想もあるだろう。

桐の花 の例句

あはあはと桐咲いて何もかも遠し 安住敦
あれを見て富貴をほめん桐の花 支考
いちにちふつか雨降りながし桐の花 大野林火 海門 昭和七年以前
いつの間に咲いたる桐や空のなか 岡井省二 夏炉
いつぽんの桐咲きくもる畑かな 大野林火 海門 昭和七年
うすじめる先代の書画桐の花 鷲谷七菜子 花寂び
おろかゆゑおのれを愛す桐の花 佐藤鬼房
きのふ逝きけふ桐咲いてゐたりけり 雨滴集 星野麥丘人
こころひもじき月日の中に桐咲きぬ 大野林火 冬雁 昭和二十一年
この世にて桐の残花の日暮見ゆ 佐藤鬼房
この家に桐咲く日々の幸不幸 村山故郷
この庄の田水びたりに桐咲けり 上田五千石 天路
こゑとうに遠のきたるに桐の花 飯島晴子
しづかさや実がちに咲きし桐の花 渡邊水巴 白日
しのゝめの星やまじりて桐の花 秋之坊
すこしづつよくなるやうに桐の花 平井照敏
すこしづつ歩みたまへと桐の花 平井照敏
そだつまもなくて木高し桐の花 尚白
たわむれの 風の加減の 桐の花 伊丹三樹彦
どこやらに硝子がわれぬ桐の花 加藤秋邨
どの山となく墓ならび桐の花 飴山實 句集外
はなれきれざるひとりの時間桐の花 加藤秋邨
はるかなる色もて桐の花過ぎ過ぐ 岸田稚魚 紅葉山
はろかなるものに昨日と桐の花 岡本眸
ほのぼのと吾あり桐の花思ひ 山口誓子
まぎれ得ぬ高さに桐の花ほろぶ 岡本眸
むらさきの花の天あり桐畠 草間時彦
もりおかの町川音の桐の花 山口青邨
もろどりのをとなひ低し桐の花 路通
わが宿は湖北山里桐の花 山口青邨
わひしさややねにころかる桐の花 政岡子規 桐の花
アスファルト隆まりて紺桐の花 香西照雄 対話
ポケットの両手の重さ桐咲けり 岡本眸
一くらゐ仰げば高し桐の花 露川
一日の旅すれば桐の花も見て(小田原) 細見綾子
一本の桐の咲きゐる植田かな 岸田稚魚
一瓢を亡父提げくる 桐の花 伊丹三樹彦
一里ほど先から見えて桐の花 成田蒼虬
三たびの餉けふうまかりし桐の花 森澄雄
上臈にいまも焦がれて桐の花 佐藤鬼房
丘の上は天にちかしも桐の花 山口誓子
九頭竜河口の彼方落日桐の花 金子兜太
井戸蓋に落ちかたまれる桐の花 星野立子
人来れば驚きおつる桐の花 前田普羅 春寒浅間山
今日は婢のひねもす裏に桐の花 星野立子
今落ちし桐花波が来てさらふ 細見綾子
仰向いてねむる背の子よ桐の花 大野林火 青水輪 昭和二十五年
伊賀盆地植田に落つる桐の花 細見綾子
何よりも水が飲みたし桐の花 右城暮石 句集外 昭和四十二年
何代の壁の壊れや桐の花 政岡子規 桐の花
偽らぬものゝ匂ひや桐の花 桃隣
八ケ岳茅ヶ嶽を二タ分けにして桐の花 石田勝彦 雙杵
冷汁に海苔のくもりや桐の花 蘆文
初夏の卓朝焼けのして桐咲けり 飯田蛇笏 霊芝
北国の桐鬱勃と咲き立てり 飯島晴子
午笛止み古き港の桐の花 鷹羽狩行
南風の浪桐咲く梢を走りつぐ 山口誓子
又次におぼつかなしや桐の花 鼠弾
友の訃に急くに振り向く桐の花 松崎鉄之介
古けれど翠簾で見たてや桐の花 車来
古城址の崖くづれては桐咲けり 細見綾子
古庭や桐の花散る井戸の蓋 政岡子規 桐の花
句碑裏は城の石崖桐咲いて(金沢市尾山神社、鶏頭の句碑除幕二句) 細見綾子
句碑除幕桐咲く時と思ふなり(金沢市尾山神社、鶏頭の句碑除幕二句) 細見綾子
句碑除幕集ふ人等に桐の花(秩父長瀞に欣一句碑成る) 細見綾子
唐紙や銀箔兀し桐の花 政岡子規 桐の花
土俗は美か桐の花打つ雨の音 金子兜太
城跡や麦の畑の桐の花 政岡子規 桐の花
堂守の妻の豊胸桐の花 佐藤鬼房
塀の内に桐の花咲く明地哉 政岡子規 桐の花
塀囲ひ多き徐州に桐咲けり 松崎鉄之介
塞神下田へとほき桐の花 角川源義
多摩川のせばまりゆきて桐の花 細見綾子
大空はいま死者のもの桐の花 飯島晴子
大雨のあとの明るさ桐咲けり 飴山實 句集外
天降峰に桐咲き浮む百姓家 松本たかし
天険の要に桐を咲かせたり 上田五千石『琥珀』補遺
天領の境に咲くや桐の花 河東碧梧桐
奥山に風こそ通へ桐の花 前田普羅 春寒浅間山
女学校の裁縫教室桐の花(回顧) 細見綾子
妣の国の水木がくれに桐の花 佐藤鬼房
妻の手の濯ぎあからむ桐の花 能村登四郎
姥どものあそび処や桐の花 荊口
婆振りもどうやらきまる桐の花 飯島晴子
少女真白く澄みゆくばかり桐の花 平井照敏 猫町
屋根の上に山風すめり桐の花 大野林火 海門 昭和七年以前
屋根低き物置小屋や桐の花 政岡子規 桐の花
屋根低き生のいとなみ桐の花 細見綾子
屑籠の昨日を捨てる桐咲けり 岡本眸
山かぞへ川かぞへ来し桐の花 飯島晴子
山水の連呼に桐の花揃ヘ 上田五千石『琥珀』補遺
山畑にいま雨がふる桐の花 山口青邨
山路めく家坂かかぐ桐の花 山口青邨
峠越え来て花桐の里を過ぐ 高浜年尾
帯に手をはさんで見上げ桐の花 森澄雄
心痩せては花桐の吹溜 斎藤玄 雁道
戦争も飢ゑもありにき桐の花 森澄雄
挟み合ふガモフ・カフカや桐の花 渡邊白泉
教へ子の縁談二三桐の花 大野林火 早桃 太白集
新道や人馬の中の桐の花 政岡子規 桐の花
旅あきんど桐咲く家を忘れずに 大野林火 海門 昭和十年
旅了へて真昼を戻る桐の花 相馬遷子 山国
旅人のふりむく山や桐の花 村山故郷
日と月を彫りし庚申桐咲けり 右城暮石 虻峠
日の出づる方のみならず桐咲けり 山口誓子
日光に底力つく桐の花 飯島晴子
日光の古き宿屋や桐の花 政岡子規 桐の花
日本に帰りて仰ぐ桐の花 山口誓子
日輪に目は当てられず 桐の花 伊丹三樹彦
晴眼を今に鵙わり 桐の花 伊丹三樹彦
曇天にまぎるる桐の咲きにけり 相馬遷子 雪嶺
朝日夙く麓家の桐花闌けぬ 飯田蛇笏 山響集
朝雲の灼けて乳牛に桐咲けり 飯田蛇笏 霊芝
木屋町の壁ぐろにちる桐の花 鈴木道彦
村人に花桐遠きゆゑしづか 飯田龍太
杜甫*きょうに還らざりけり桐の花 松崎鉄之介
来し方を見ればむらがる桐の花 山口誓子
桃すもゝ漸く桐の花もさき 万子
桐の筒花拾ひて花の高さ知る 能村登四郎
桐の花 こんなに散るとは 齢経るとは 伊丹三樹彦
桐の花あきらかに師を亡ひし 森澄雄
桐の花あまき夜ごとは子に泣かれ 石橋秀野
桐の花ある日は天を雲とざす 相馬遷子 山河
桐の花いちど悲鳴をあげてみる 飯島晴子
桐の花こぼれし土になづまざる 富安風生
桐の花さくや都の古屋敷 政岡子規 桐の花
桐の花のせて水引く山田かな 飴山實 花浴び
桐の花はや旅呆けの手足かな 小林康治 四季貧窮
桐の花ひと日もの食ひ山の姥 森澄雄
桐の花ほとほと遠き色なりし 飯島晴子
桐の花むらさきつくす出船かな 野澤節子 存身
桐の花めがけてとびぬ黒揚羽(高野山にて三句) 細見綾子
桐の花めでたき事のある小家 政岡子規 桐の花
桐の花ヴォルテール忌の夕空に 星野麥丘人
桐の花下を走るに老いつつあり 永田耕衣
桐の花人死す前もその後も 相馬遷子 山河
桐の花仰ぎ仰ぎて襤褸を踏む 波多野爽波
桐の花仰ぐ心の高さもて 後藤比奈夫
桐の花供養の席に招ばれをり 飴山實 句集外
桐の花入江に咲けり蜑が宿 山口青邨
桐の花入院の荷の二タ包み 雨滴集 星野麥丘人
桐の花刈り伏す芦の彼方にも 飯田龍太
桐の花剣ケ岳切つ先出しにけり 山田みづえ 手甲
桐の花北国の空いつも支ふ 細見綾子
桐の花古都洛陽をおほひけり 松崎鉄之介
桐の花咲く道通行禁止せり 右城暮石 散歩圏
桐の花塀にまぎれて牛ゐたり 山口誓子
桐の花夕トになと問はまほし 飯島晴子
桐の花大和の国が田を鋤けば 森澄雄
桐の花大揺れ 白雲飛ぶからに 伊丹三樹彦
桐の花妙齢の娘を如何にせむ 津田清子
桐の花妻には妻の行くところ 雨滴集 星野麥丘人
桐の花妻に一度の衣も買はず 中村草田男
桐の花妻の齢の白縮 森澄雄
桐の花姦淫の眼を外らしをり 上田五千石 田園
桐の花局に悩む美人あり三宅嘯山
桐の花島のかんざし咲きにけり 野見山朱鳥 曼珠沙華
桐の花後難妻に遺すまじく 中村草田男
桐の花揃ひ立ちして吾を蔑す 三橋敏雄
桐の花散るや牛肉購ふ列に 伊丹三樹彦
桐の花新渡の鸚鵡不言 其角
桐の花旅にあらずて昼の風呂 森澄雄
桐の花旅の衣に風通す(敦賀、色ヶ浜) 細見綾子
桐の花日傭に身は落ちにけり 下村槐太 天涯
桐の花昼餉みじかくなりにけり 齋藤玄 飛雪
桐の花昼餉了るや憂かりけり 石田波郷
桐の花朝日はあつくなりにけり 高屋窓秋
桐の花校庭に咲く五月祭 山口青邨
桐の花段々畑の高きまで 細見綾子
桐の花河口に眠りまた目覚めて 金子兜太
桐の花湯あがりの子は栗のように 古沢太穂 三十代
桐の花目にしむやうに空青き 細見綾子 桃は八重
桐の花真つ盛りにて山暗し 岸田稚魚 紅葉山
桐の花眼下より海宙を打ち 加藤秋邨
桐の花禍福果てなくつゞくかな 鈴木真砂女 卯浪
桐の花空のしろきに翳り立つ 篠原梵 年々去来の花 皿
桐の花空をさゝへてこゝ会津 細見綾子
桐の花空を暗しと囁くか 飯田龍太
桐の花窓狭き汽車汽車を待つ 山口誓子
桐の花童貞の日のまぶしさに 上田五千石『田園』補遺
桐の花竹かごを編む前に落つ(伊豆) 細見綾子
桐の花翡翠のすだれ猶あらん 白雄
桐の花耶蘇下りて海の駅暮れぬ 角川源義
桐の花肩に落ちたり善光寺 細見綾子
桐の花自重説かれてゐたりけり 岡本眸
桐の花落ちて再び逢うことなし 橋閒石 卯
桐の花葉がち日輪上に照り 山口青邨
桐の花貨物車ばかり通過して 細見綾子 曼陀羅
桐の花遠くより見て忌日かな 山口青邨
桐の花遠のいてゆく過去に似て 平井照敏
桐の花遺偈(ゆいげ)に粥の染みすこし 金子兜太
桐の花雨はそろそろやむ頃か 飴山實 句集外
桐の花電線二本過ぎゆくも 山口誓子
桐の花青雲見せて葉のひねり 猿雖
桐の花鯉飼ふ町を通りけり 平井照敏 天上大風
桐まだ咲かぬ山国山人酔うて 金子兜太
桐も今五三に咲てのぼりかな 柳居 柳居発句集
桐よ橡よ咲いて日を呼べ行者塚 上田五千石『琥珀』補遺
桐咲いてねぶたき昼をねるばかり 村山故郷
桐咲いてほつそり育つ男の子 飯島晴子
桐咲いてむしゃうに寂し家なき如 下村槐太 天涯
桐咲いてよく手を洗ふ日なりけり 岡本眸
桐咲いて一夏九旬はじまりぬ 後藤比奈夫
桐咲いて久しくなりぬ眼は癒えず 村山故郷
桐咲いて働くものの夏来る 富安風生
桐咲いて昔に還る道のごとし 大野林火 方円集 昭和五十一年
桐咲いて昼うつうつと野の家居 村山故郷
桐咲いて樹上に猫をねむらせぬ 大野林火 青水輪 昭和二十六年
桐咲いて流寓のけふ新たなる 上田五千石『森林』補遺
桐咲いて混血の子のいつ移りし 大野林火 白幡南町 昭和二十八年
桐咲いて港の雲を遊ばしむ 岡本眸
桐咲いて熱いぞなもし道後の湯 百合山羽公 樂土
桐咲いて素顔うるほふわが少女 森澄雄
桐咲いて輓馬の胴に詰るもの 飯島晴子
桐咲いて雲はひかりの中に入る 飯田龍太
桐咲きし野の片隅の往き返り 橋閒石 朱明
桐咲きて茶山に花のいのちあり 平畑静塔
桐咲くやみづから濯ぐもの少し 安住敦
桐咲くや塀の向うをまだ知らず 渡邊白泉
桐咲くや瀞より昏き女の眼 上田五千石『琥珀』補遺
桐咲くや父死後のわが遠目癖 森澄雄
桐咲くや若きはすでに肘あらは 岡本眸
桐咲くを老さらぼふて驚きぬ 松村蒼石 雁
桐咲けばひとゐなくなるふしぎかな 平井照敏
桐咲けばサーカスあをぞらのみ鮮らし 大野林火 冬雁 昭和二十一年
桐咲けば桐の空あり高野谷(高野山にて三句) 細見綾子
桐咲けば烏がとまる墓地の中 山口青邨
桐咲けりあさましき下痢まぬがれず 佐藤鬼房
桐咲けり乗馬倶楽部の白き馬柵 及川貞 榧の實
桐咲けり園芸種かと思ふほど 右城暮石 散歩圏
桐咲けり天守に靴の音あゆむ 山口誓子
桐咲けり村の端より端まで夕日 大野林火 青水輪 昭和二十六年
桐咲けり漆喰しろき屋根の上 大野林火 雪華 昭和三十九年
桐咲けり灰谷村の最高所 右城暮石 天水
桐咲けり焼けし東京の丘の上に 村山故郷
桐咲けり目に集散の峡の線 加藤秋邨
桐咲や去年の台を付ながら 三宅嘯山
桐散るや小雨をさけし野毛の書肆 古沢太穂 古沢太穂句集
桐林濛濛として花開く 山口誓子
桐老いて琴にもならず花咲きぬ 政岡子規 桐の花
棚畑かくさふ桐の花ざかり 岡井省二 明野
椎樫ときそひて桐の花けぶる(東大病院に谷口秋郷さんを見舞ふ) 細見綾子
此里に后ますべし桐の花 呂丸
死後を待つ花桐の山いま明るし 中村苑子
殊に風集める枝の 桐の花 伊丹三樹彦
母てふ名よ桐花落す黒き土 細見綾子
母の日の母に雨中の桐の花(伊豆) 細見綾子
水はけのわるきこのごろ桐の花 阿波野青畝
水音を両側にして桐の花 飯島晴子
海照りに火の島見ゆれ桐の花 角川源義
淵の底つひに見えこず桐の花 加藤秋邨
濯ぎ場のゆふべ濡れゐて桐の花 松本たかし
烈風の枝ことごとく桐の花 石田勝彦 秋興
煙草にがし遠く乾きて桐の花 松崎鉄之介
熊野路に知人もちぬ桐の花 去来
爆音や桐は花散り赭の殻 石田波郷
爼板は誰が家見ぞ桐の花 諷竹
牛飼は山へと退る桐の花 佐藤鬼房
猫うまれ死に桐が咲き桐過ぎゆく 加藤秋邨
琴ひきの名や今も咲桐の花 中川乙由
田植すみ別の静けさ桐の花 細見綾子
町中に社家桐の花かかげたる 大野林火 方円集 昭和五十二年
界隈はいつもしづかや桐の花 森澄雄
病むとなく眉間が痺る桐の花 佐藤鬼房
白帝城彩雲のごと桐の花 松崎鉄之介
白河を会津へ抜けて桐の花 細見綾子
眼の疲れ癒す遠くに桐の花 松崎鉄之介
窯煙り桐咲く村はひと静か 飯田龍太
竹に雀桐に鳳凰桐咲けり 山口青邨
竹も散り桐も散り春行きなやむ 細見綾子
筒井筒いまや偕老桐の花 上田五千石 天路
築三の故郷の丘の桐の花 鷹羽狩行
紫は瑞桐の花寺に咲き 山口誓子
紫や朝風に散る桐の花 日野草城
羽根使うものらの天下 桐の花 伊丹三樹彦
老人と童女桐咲く家にあり 飯田龍太
老鳶の虱おとすな桐の花 寥松
耕牛に多摩の磧べ桐咲けり 飯田蛇笏 心像
能古はけふ風に空鳴り桐の花 森澄雄
腋毛萌え少年桐の花を噛む 橋閒石 無刻
膝立てて畳職人桐の花 森澄雄
色淡く空になじまず桐の花 高浜年尾
花はてし薄暑の桐に鴉飼ふ 西島麦南 人音
花嗅ぎて桐の梢に思ひ寄す 山口誓子
花桐が常に遠木として見ゆる 山口誓子
花桐にまひる物縫ふこゝろ憂き 桂信子 月光抄
花桐に一語を分ち愛の旅 飯田龍太
花桐に二階の人の午寝かな 原石鼎 花影
花桐に大きな家の裏手かな 松本たかし
花桐に家なき空のつづきたる 大野林火 海門 昭和七年以前
花桐に斯の民やすき湖辺かな 飯田蛇笏 山廬集
花桐に機影を惜しみ蹴鞠す 飯田蛇笏 山響集
花桐に湖の日勁し*かやを干す 西島麥南 金剛纂
花桐に無垢の日亘りゐたりけり 石塚友二 光塵
花桐に真夜の狭霧の流れけり 石橋秀野
花桐に草刈籠や置きはなし 飯田蛇笏 山廬集
花桐に草苅籠や置きはなし 飯田蛇笏 霊芝
花桐に近山ひろく渓向ひ 飯田蛇笏 家郷の霧
花桐に野の家莚織る音す 村山故郷
花桐に霊柩車ゆきこころ澄む 飯田蛇笏 白嶽
花桐のこぼれし蕗の広葉かな 川端茅舎
花桐のにぎやかにして黙りゐる 鷲谷七菜子 一盞
花桐の下に糞尿黄なりけり 山口誓子
花桐の全き終りペンキ屋来て 岡本眸
花桐の十方鐘の音響く 山口誓子
花桐の夜の戸おもたくとざし来る 角川源義
花桐の琴屋を待てば下駄屋哉 政岡子規 桐の花
花桐の真下に時を過しけり 山口誓子
花桐の蒔絵ゆかしき手箱哉 政岡子規 桐の花
花桐の蹤きくるごとき日暮かな 鷲谷七菜子 天鼓
花桐の道幾まがり神の滝 角川源義
花桐はいつも遠のく景のなか 平井照敏
花桐も雹も大地にはねかへり 川端茅舎
花桐やながれあふ鷺脚黒き 渡邊水巴 白日
花桐やなほ古りまされ妙義町 渡邊水巴 白日
花桐や一と夜を託す御師の家 角川源義
花桐や人を喩へて上品に 後藤夜半 底紅
花桐や城址虚しき高さ保つ 橋本多佳子
花桐や岩手の山をはるかにす 角川源義
花桐や島バス停めし巡礼寺 角川源義
花桐や手提を鳴らし少女過ぐ 角川源義
花桐や敦賀に波郷の一遺弟子 角川源義
花桐や敷布くはへて閨の狆 飯田蛇笏 霊芝
花桐や産屋に懸けし聖母の図 西島麦南 人音
花桐や賞を賜はる村の長 政岡子規 桐の花
花桐や越後の山に雪たまる 前田普羅 春寒浅間山
花桐や重ねふせたる一位笠 前田普羅 飛騨紬
花桐や重ね伏せたる一位笠 前田普羅 普羅句集
花桐を蒔絵にしたる手箱哉 政岡子規 桐の花
花満ちし桐のしたまで行かむとす 山口誓子
茣蓙伸べた童女の行方 桐の花 伊丹三樹彦
茫々と花眼をよぎる李花桐花 山田みづえ 草譜
茶畑に一本高し桐の花 政岡子規 桐の花
茶畠に一本立ちの桐の花 右城暮石 天水
草にみなかゝりて桐を落ちし花 山口誓子
落慶の参道に落ち桐の花 石田勝彦 雙杵
葉隠レに先こそ見ゆれ桐の花 玄梅
藪医者の玄関荒れて桐の花 政岡子規 桐の花
藪医者や玄関荒れて桐の花 政岡子規 桐の花
行雲のこぼれて咲や桐の華 露川
西方に入る日の翳の桐の花 山口誓子
見渡せばかへりみすれば桐の花 山口誓子
誕生日午前十時の桐の花 平井照敏 猫町
諸枝の天に捧ぐる桐咲けり 松本たかし
貧しき家空地をかこみ桐の花 細見綾子
賤が家の五三の桐の咲きにけり 山口青邨
通る時落ちしことなく桐の花 中村草田男
逞しき葉のさまうたて桐の花 黒柳召波
過ぎし日を桐の花さゝげゐてくれる 細見綾子
遠く濃く青哉の三国桐咲くや 金子兜太
遠の日の泣きじやっくりの 桐の花 伊丹三樹彦
遠近に子らは嫁いで 桐の花 伊丹三樹彦
郷愁のすずろに桐の花を噛む 橋閒石 雪
酒桶の脊中ほす日や桐の花 大島蓼太
野に向きて口あけば見ゆ桐の花 加藤秋邨
鉢巻の面挙げたり桐の花 石田勝彦 秋興以後
鎌倉は月出しばかり桐の花 藤田湘子 てんてん
長崎の思ひ出繋ぐ桐の花 鈴木真砂女 紫木蓮
長崎を去る日は雨の桐の花 鈴木真砂女 紫木蓮
隣なき隔離の病舎桐の花 阿波野青畝
雨戸なる二階坐敷や桐の花 車庸
雲うごき空腹うごき桐の花 加藤秋邨
雲なしのときをつめたく桐咲けり 上田五千石『琥珀』補遺
雲上に筆執るは誰 桐の花 伊丹三樹彦
電車いままつしぐらなり桐の花 星野立子
電車来る方に当つて桐の花 山口誓子
青き夜空かぎり知られず桐の花 加藤秋邨
青空のなき日も見上げ桐の花 稲畑汀子
風鐸の八隅に鳴るや桐の花 有馬朗人 天為
餅腹に半日睡い波の音 佐藤鬼房
香をこぼすことなき高さ桐の花 稲畑汀子
高いところ桐の花さきふたりが結婚する心持 中川一碧樓
高野谷桐目立たずに咲きゐたり(高野山にて三句) 細見綾子
鶏も日和まちてや桐の花 魯九
鶏舎を出て鶏ましろ桐の花 星野立子
黄金の雲一筋や桐の花 山口青邨

俳句の季題としても好まれるコデマリ

2019年04月29日 15時46分42秒 | 
コデマリの花も華麗だ。
一見したところ、春の早い時期に咲くユキヤナギかと思わせるが。
この花も人々に好まれて、多くの俳句の季題になっている。
(2019-04 神奈川県伊勢原市、道端)






https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%87%E3%83%9E%E3%83%AA(小手毬、学名:Spiraea cantoniensis)とは、バラ科シモツケ属の落葉低木。別名、スズカケ。中国(中南部)原産で、日本では帰化植物。

特徴
落葉低木で、高さは1.5mになる。枝は細く、先は枝垂れる。葉は互生し、葉先は鋭頭で、形はひし状狭卵形になる。春に白の小花を集団で咲かせる。この集団は小さな手毬のように見え、これが名前の由来となっている。日本では、よく庭木として植えられている。


コデマリの俳句を挙げておこう。俳句の世界では「小粉団」という表記も好まれる。


こでまりの花
こでまりが風に弾んで誕生日 池田文子
こでまりと酢飯の照りの間かな 金子皆子
こでまりにさす日まぶしみ夕疲れ 長谷川双魚 風形
こでまりに上衣の彩をうつし行く 長谷川かな女 雨 月
こでまりに夕かけし雨つのりけり 成瀬桜桃子
こでまりに根風の見えて雨近し 高井北杜
こでまりに端居の頃となりしかな 富安風生
こでまりに身の煩うかび消ゆるかな 八木林之助
こでまりに雨降らば降れ濡るるべし 成瀬桜桃子
こでまりのかすかに揺らぐ癒えたしや 大村富美子
こでまりのたのしき枝のゆれどほし 轡田 進
こでまりのはなの雨憂し傘雨の忌 安住敦
こでまりのふつと翳りし朝鴉 斎藤夏風
こでまりの千のこまりの子の忌かな 本宮鼎三
こでまりの愁ふる雨となりにけり 安住敦
こでまりの枝より透けて遠筑波 角川春樹
こでまりの花さき種痘よくつきぬ 金子伊昔紅
こでまりの花に眠くてならぬ犬 辻田克巳
こでまりの花のりかぬる寒さかな 八木林之介 青霞集
こでまりの花咲き吾子が駈け戻る 大町糺
こでまりの鉢買ふ提げるには長し 中村ふみ
こでまりの風を離さず弾みゐる 八幡より子
こでまりは白し子の髪剪り揃う 相葉有流
こでまりやあるじ些か仕事呆け 石塚友二
こでまりやおんなごころを描くごとし 板垣鋭太郎
こでまりやこの忌のいつも雨を呼び 鈴木真砂女
こでまりやその八重毬の虻の昼 木津柳芽 白鷺抄
こでまりや帯解き了へし息深く 岡本 眸
こでまりや床屋の裏の文士邸 赤沼登喜男
こでまりや盃軽くして昼の酒 波多野爽波
こでまりや耐ふるかぎりの雨ふくませ 前田しげ子
大でまり小でまり佐渡は美しき 高濱虚子
大でまり小でまり垣に鬼子母神 好本昌子
子沢山こでまりに風弾みゐる 藤田シゲ子
小でまりの一花づゝを賀の膳に 高野素十
小でまりの供華の仏に娘もをりて 加藤武夫
小でまりの愁ふる雨となりにけり 安住敦
小でまりの花に風いで来りけり 久保田万太郎 流寓抄以後
小でまりや裏戸より訪ふことに馴れ 高濱年尾
小でまりを活けたる籠も佳かりけり 楠目橙黄子 橙圃
心無垢の日もあり小でまり大でまり 名取思郷
急病の人こでまりの花かげに 岸本尚毅 舜
掛け衣桁こでまりの揺れ逢はずゐる 河野多希女 納め髪
池に降る雨こでまりを濡らす雨 岸風三楼 往来
薄暑来てこでまりの花散るを知らず 松村蒼石 雁
三人は家族の初め団子花 上田日差子
仲見世の空の明るき団子花 黒米満男
団子花つぶらに枯れて*もがれけり 石原舟月 山鵲
大手毬小手毬手毬ほろぶとも 矢島渚男
小手毬にものの文目の弾みけり 後藤比奈夫
小粉団の吹かれやすくて暮るゝころ 岸風三楼 往来
小粉団や寺の男の大あくび 指中 恒夫
花すぎし小手毬われを隠しけり 阿部みどり女
顔よせて鏡くもりぬ団子花 新田時子

突然に華麗な白い花を開くエゴノキ

2019年04月29日 11時53分33秒 | 
エゴノキの花はゴージャスだ。
数日前、いつもの道を歩いていると、それまで気づかなかったエゴの木に
華麗な花が一斉に開いているのに驚かされた。
突然のプレゼントのように。
(2019-04 神奈川県川崎市、道端)







エゴノキ(Styrax japonica)とはエゴノキ科の落葉小高木である。北海道~九州・沖縄まで、日本全国の雑木林に多く見られる。

和名は、果実を口に入れると喉や舌を刺激してえぐい(えごい)ことに由来する[1]。チシャノキ、チサノキなどとも呼ばれ歌舞伎の演題『伽羅先代萩』に登場するちさの木(萵苣の木)はこれである。

斉墩果と宛字するが、本来はオリーブの漢名。ロクロギとも呼ばれる。

特徴
高さは10mほどになる。樹皮は赤褐色できめが細かい。葉は両端のとがった楕円形で互生。花期は5月頃、横枝から出た小枝の先端に房状に白い花を下向きに多数つけ、芳香がある。花冠は5片に深く裂けるが大きくは開かずややつぼみ加減で咲き、雄しべは10本。品種により淡紅色の花をつける。

果実は長さ2cmほどの楕円形で、大きい種子を1個含む。熟すと果皮は不規則に破れて種子が露出する。 果皮に有毒なエゴサポニンを多く含む。ピーク時には果実にも同量のサポニンを蓄えるが、11月を過ぎると急激に減少する[1]。エゴサポニンは胃や喉の粘膜に炎症を起こし、溶血作用もある。

利用
庭木などとして栽培もするほか、緻密で粘り気のある材を将棋のこまなどの素材とする。

昔は若い果実を石鹸と同じように洗浄剤として洗濯などに用いた。またサポニンには魚毒性があるので地方によっては魚の捕獲に使ったといわれるが、同様に毒流し漁に用いられたと言われるサンショウの樹皮との比較実験からエゴノキのサポニンの魚毒性の強さは漁に使えるほどのものではないのではないかと疑問視する見解もある。

動物との関係
ヒゲナガゾウムシ科の甲虫・エゴヒゲナガゾウムシ(ウシヅラカミキリ) Exechesops leucopis(Jordan, 1928)が果実に穴を開けて産卵し幼虫が種子の内部を食べて成長するが落下種子内で休眠中の成熟幼虫を「ちしゃの虫」と呼び1935年ごろからウグイ、オイカワなどの川釣りの釣り餌として流通している。この昆虫の発生が見られる地点は散在的でありかなり稀であるが、発生地の種子の寄生率は70%にも及ぶという。

新梢にはしばしば菊花状の構造が認められるが、これはエゴノネコアシと呼ばれる虫こぶである。イネ科のアシボソを一次寄主としエゴノキとの間で寄主転換を行うアブラムシ、エゴノネコアシアブラムシ Ceratovacuna nekoashi(Sasaki, 1907)が春に二次寄主であるエゴノキに移動してきて新芽を変形させてこれを形成する。

童謡にも歌われた桑

2019年04月29日 09時10分28秒 | 
桑の木は養蚕に使われるので、いろいろなところに見かける。
花は地味で注意してみないと、気づかない。どこか毛虫のようにも見える。
「桑の実の毛虫に似たる恨み哉 正岡子規」と歌われているが、
毛虫に似ているのは実ではなく、花かもしれない。


(2019-04 神奈川県川崎市、道端)






クワ(桑)は、クワ科クワ属の総称。カイコの餌として古来重要な作物であり、また果樹としても利用される。

特徴
落葉性の高木で、大きいものは15mに達するが、普段見かけるのは数m程度のものが多い。樹皮は灰色を帯びる。葉は薄く、つやのある黄緑色で、縁にはあらい鋸歯がある。大きい木では、葉の形はハート形に近い楕円形だが、若い木では、葉にあらい切れ込みが入る場合がある。葉には直径25-100μmほどのプラント・オパールが不均一に分布する[1]。

雌雄異株だが、同株のものがある。春に開花する。雄花は茎の先端から房状に垂れ下がり、雌花は枝の基部の方につく。果実は初夏に熟す。キイチゴのような、柔らかい粒が集まった形で、やや長くなる。熟すと赤黒くなり、甘くて美味しい。果実には子嚢菌門チャワンタケ亜門ビョウタケ目キンカクキン科に属するキツネノヤリタケ(Scleromitrula shiraiana)、キツネノワン(Ciboria shiraiana)が寄生することがあり(クワ菌核病)、感染して落下した果実から子実体が生える。

養蚕とクワ

地図記号「桑畑」
桑を栽培する桑畑は地図記号にもなった[3]ほど、日本で良く見られる風景であった。養蚕業が最盛期であった昭和初期には、桑畑の面積は全国の畑地面積の4分の1に当たる71万ヘクタールに達したという[4]。しかし、現在、養蚕業が盛んだった地域では、生産者の高齢化、後継者難、生糸産業全般の衰退の中で、株を抜いて畑等に転用されたり、放置された桑畑も多く残る。クワの木は成長が早く、大きく育つが、幹の中が空洞であり、若い枝はカイコの餌にする為に切り続けてきたので製材できる部分が少ない。養蚕業が盛んだった頃は、定期的に剪定等の手入れが行われていたクワ畑であるが、樹木としての利用は前述の様に、幹の中が空洞で製材できる部分が少ない故に、養蚕以外でのこれといって有益な、あるいは利益の高い利用法が無い。放置された結果として、現在、森の様になっている畑も多い。しかも、こうなってしまった以上、前述の様に高齢化した管理者にとっては、これを整理することを物理的に更に難しくしている。毛虫がつきやすい樹種でもある為、憂慮すべきことである。このように養蚕業が衰退する中、利用される桑畑も減少し、平成25年2万5千分の1地形図図式において桑畑の地図記号は廃止となった。新版地形図やWeb地図の地理院地図では、桑畑は同時に廃止された「その他の樹木畑」[5]と同様、畑の地図記号[6]で表現されている。


わたしたちには、「赤とんぼ」の童謡でなじみである。今では桑の実を食べる子供もすくないようだが。

赤とんぼ
夕焼、小焼の、
あかとんぼ、
負われて見たのは、
いつの日か。
山の畑の、
桑の実を、
小籠(こかご)に、つんだは、
まぼろしか。
十五で、姐(ねえ)やは、
嫁にゆき、
お里の、たよりも、
たえはてた。
夕やけ、小やけの、
赤とんぼ。
とまっているよ、
竿の先。


伝統に根付いた藤の花

2019年04月29日 09時03分06秒 | 
藤の花が満開になった。
藤は個体ごとにまちまちな咲き方をする。
あちらでまだつぼみだと思ったら、こちらではすでに咲き終わっているという具合だ。
それでも伝統の中に根付いている花である。

いくつか俳句を。
(2019-04 神奈川県川崎市、公園)





くたびれて宿借るころや藤の花
芭蕉 「笈の小文」

月に遠くおぼゆる藤の色香かな
蕪村 「連句会草稿」

藤の花雲の梯(かけはし)かかるなり
蕪村 「落日庵句集」

藤の花長うして雨ふらんとす
正岡子規 「子規全集」


身近にあったホウチャクソウ

2019年04月27日 15時43分22秒 | 
近くの林で、ホウチャクソウを発見した。
丹沢まで出かけなくても、探せば身近な場所で生えているのをみつけることができて、
うれしかった。
こまめに探せば、まだまだ身近に多くの野草が生存しているのかもしれない。
(2019-04 神奈川県川崎市、林間)





このサイトには、ホウチャクソウのたくさんの写真がある。

どこにでも生えるので嫌われ者のノゲシ

2019年04月27日 11時52分10秒 | 
どこにでも咲いているノゲシだが、たんぽぽのようにのんびりした感じはない。
嫌われ者のようだが、野草の独立独歩の雰囲気があって、そんなに嫌わなくてもと思う。
(2019-04 神奈川県川崎市、道端)






ノゲシ(野芥子、Sonchus oleraceus)とは、キク科ノゲシ属の植物の一種。別名ハルノノゲシ、ケシアザミ。

和名に「ケシ」が付くが、ケシ(ケシ科)と葉が似ているだけで分類上は全く別系統である。

特徴
日本各地の道端や畑に自生する。ヨーロッパ原産で世界各地に広まったと考えられている。日本には史前帰化植物として入ってきたものと思われる。

花期は春から秋で黄色のタンポポのような花が咲く。葉には刺があるが柔らかく触っても痛くない。葉色は少し白っぽい緑で光沢はない。葉は茎を抱く。茎の高さは50-100cm程で軟らかく中に空洞がある。

道端で人知れず青い花を咲かせているキュウリグサ

2019年04月27日 11時39分39秒 | 
キュウリグサとはひどい名前である。
道端に咲いていても、ほとんど目に留まらないほどの小さな草だが
よく見てみると、ムラサキ科の花らしい青い小さな花を咲かせている。
この花はサソリ型花序という独特な花のつけかたをするのが特異である。
わたしたちが見過ごしているところで、こんな小さな美しい花を咲かせているのはけなげだ。
(2019-04 神奈川県川崎市、道端)






キュウリグサ(胡瓜草、学名: Trigonotis peduncularis)は、ムラサキ科キュウリグサ属の雑草。和名は、葉をもむとキュウリのようなにおいがすることに由来する[2]。タビラコともいうが、キク科のコオニタビラコと紛らわしい[2]。

形態・生態
ムラサキ科の雑草としては、もうひとつハナイバナがある。いずれもごく小さなワスレナグサのような花がつくが、キュウリグサは細長い穂が特徴。

キュウリグサについては次のページが詳しい。
サソリ型花序については、次のページが参考になる。

とても身近な野草ハルジオン

2019年04月26日 11時36分19秒 | 


もっとも身近な野草の一つとも言える帰化植物のハルジオン。
つぼみが頭を垂れているので、ヒメジョオンと区別できる。
写真を撮っていると、しばらく声を聞かなかった画眉鳥の声が聞こえて、急になつかしくなった。
この中国産の鳥は「それでいいよ、それでいいよ」と、大きな声でわたしたちを肯定してくれる頼りになる鳥である。
(2019-04 神奈川県川崎市、道端)





ハルジオン
(春紫菀、学名:Erigeron philadelphicus L.[1])は、キク科ムカシヨモギ属に分類される多年草の1種[2]。北アメリカ原産で、日本では帰化植物となっている。ヒメジョオンと共に、道端でよく見かける。一部の地域では「貧乏草」と呼ばれ、「折ったり、摘んだりすると貧乏になってしまう」と言われている。

分布
北アメリカを原産地とする[3]。日本を含めた東アジアに外来種として移入分布している[4]。

形態
多年草で、背の高さが30 - 80センチくらいになる[4]。

根元には篦型の根出葉があり、花の時期にも残ることが多い。葉と茎は黄緑色で、まばらに毛が生える。茎はあまり枝分かれせずに伸び、先の方で何回か枝分かれして、花をつける。花はヒメジョオンと同じく、細い舌状花を持つヒマワリのような花だが、白とピンクのものがある。また、ヒメジョオンより一回り花が大きい。

ヒメジョオンとの見分け方

上:ハルジオン(花弁の幅が細い)
下:ヒメジョオン(花弁の幅が太い)
ハルジオンとヒメジョオンは、花がよく似ていて混同してしまうことがある。 花びらの幅の違いで見分ければ直ぐに解る。1㎜以下の細い花びらがハルジオンで 約1.5㎜で幅が広いのがヒメジョオン。花びらの幅で見分けるのが一番解りやすく誰にでも簡単にできる方法。

標準的には、ヒメジョオンの方が背が高く、花は小さくて数が多く、根本がすっきりしている。これに対して、ハルジオンは背は低く、花は大きくて少なく、根本に葉がある。また、ハルジオンの蕾は下を向いて項垂れているような特徴がある。従って、しっかりと比べて見れば、はっきりと見分けがつく。

分かりにくい場合は、茎を折ってみるとよい。ヒメジョオンの茎には空洞がないが、ハルジオンの茎には真ん中に空洞がある[4]。葉の付き方も違い、ヒメジョオンの葉は茎を抱かないが、ハルジオンは茎を抱くように付く[4]。

最近では、デジタルカメラで花をマクロレンズで撮影する人が増え、花だけを拡大して写すことがよくある。そのような花だけの写真では、この両者の区別がとても難しい。標準的な花では、ハルジオンはヒメジョオンより花が一回り大きく、舌状花の数も多いので、見分けられるが、判断が難しい場合もある。

なお、ハルジオンとヒメジョオン以外にも、近縁のものがあるので、注意が必要。

また、花弁の白い部分がやや紫がかる個体が見られることもあるが、これは清浄な空気の中で育った時にできるものである。

生態
牧草地や畑、道端など窒素分の多い場所を好んで生育する[3]。花の時期は4-6月頃で、ヒメジョオンの6-10月頃よりも早い[2]。

利用
葉、茎、新芽や若芽、蕾など大半が可食部位となる。野草と同じように天ぷら、お浸しなどにして食べることが出来る。春菊のような苦みとアクの強さが特徴。

外来種問題
日本では1920年代に観賞用として持ち込まれた[3]。1980年代には除草剤に耐性のある個体が出現し、関東地方を中心に全国へ分布が拡大した[3]。

農作物や牧草の生育を妨害するため、厄介な雑草として扱われている[4]。さらに、在来の植物と競合し駆逐する恐れがある[4]。

特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律により要注意外来生物に指定されている。また、日本生態学会では本種を日本の侵略的外来種ワースト100に選定している。

名前の由来
「ハルジオン」を漢字に直すと「春紫苑」となる。「春に咲く、キク科のシオン(紫苑)」という意味。

また、標準和名はハルジオンであるが、同類のヒメジョオンと混同して、ハルジョオンと呼ぶ間違いが見られる。見た目が非常に似ている上に、名前も紛らわしい。同じように、「ヒメジョオン」を「ヒメジオン」と呼ぶ間違いも見られる。

林の暗いところを好むシャガ

2019年04月26日 11時26分49秒 | 


林の暗いところを好むシャガ。
中国から渡来した帰化植物だが、すっかり日本の環境になじんでいる。
花弁の紫と黄色の模様は、蜂を蜜のありかに導く標識、ネクターガイドだという。
飛行場に着陸する信号灯を思わせる。
これについては次のページが面白い。
(2019-04 神奈川県川崎市、林)






シャガ(射干、著莪、胡蝶花、学名:Iris japonica)は、アヤメ科アヤメ属の多年草である。
特徴
人家近くの森林周辺の木陰などの、やや湿ったところに群生する。開花期は4 - 5月ごろで、白っぽい紫のアヤメに似た花をつける。花弁に濃い紫と黄色の模様がある。根茎は短く横に這い、群落を形成する。草丈は高さは50 - 60 センチ・メートル程度までになり、葉はつやのある緑色、左右から扁平になっている。いわゆる単面葉であるが、この種の場合、株の根本から左右どちらかに傾いて伸びて、葉の片面だけを上に向け、その面が表面のような様子になり、二次的に裏表が生じている。

分布と生育環境
シャガは中国原産で、かなり古くに日本に入ってきた帰化植物である[1]。三倍体のため種子が発生しない[1]。このことから日本に存在する全てのシャガは同一の遺伝子を持ち、またその分布の広がりは人為的に行われたと考えることができる。したがって、人為的影響の少ない自然林内にはあまり自生しない。スギ植林の林下に見られる場所などは、かつては人間が住んでいた場所である可能性が高い。そういう場所には、チャノキなども見られることが多い。中国には二倍体の個体があり花色、花径などに多様な変異があるという。

名前について
学名の種小名はjaponica(「日本の」という意味)ではあるが、上記のように中国原産である。また、シャガを漢字で「射干」と書くことがある。しかし、ヒオウギアヤメ(檜扇)のことを漢名で「射干」(やかん)というのが本来である。別名で「胡蝶花」とも呼ばれる。

どこにでも生えるオニタビラコ

2019年04月25日 11時52分18秒 | 
オニタビラコは種を飛ばして、庭の小さなところにも花を咲かせる。
全長5cmくらいでもちゃんと花をつけるから感心する。
ふつうは50cmくらいは成長して、堂々と自己主張しているのだが。
(2019-04 神奈川県川崎市、道端)





オニタビラコ(鬼田平子、学名:Youngia japonica)は、キク科オニタビラコ属の越年草。道端や庭に自生する雑草。

形態・生態
葉を含め、植物全体に細かい毛を密生する。茎は高さ20cmから1m程に生長し、所々に小さな茎葉をつける。

葉は地面近くに集中し、ロゼット状についている。長さ8 - 25cm、タンポポの葉のように羽状に裂けた複葉となるが、先端の小葉が丸っこい三角で大きい。

茎の上部が枝分かれして複散房状に分枝し、多数の黄色の花を咲かせる。花は直径7 - 8mm程度で、小さなタンポポといったところ。春から秋にかけて開花するが、暖かい地域では年中花をつける例もある。冠毛は白色。


根生葉はロゼット状



なお、この植物の花茎が妙にふくらんでねじれるものを見かけることがよくあるが、これは原始的な子嚢菌類のプロトミケス(Protomyces inouyei)の寄生によるものである。

分布・生育地
日本全土、中国、インド、ヒマラヤ、ミクロネシア、オーストラリアにわたって広く分布する。

人間との関わり
和名の「オニタビラコ(鬼田平子)」は、「大柄なタビラコ」の意であろう。タビラコはコオニタビラコのことである。たしかに、タビラコより大柄な植物であるが、個々の頭花についてはむしろこちらの方が小さい。しかし、現在の標準和名が「小オニタビラコ」であるから、話は循環してしまっている。なお、コオニタビラコは春の七草の「ほとけのざ」のことなので、混同されてオニタビラコも七草がゆに使われることがある。間違いではあるが、食べられるようである。

それ以外では、オニタビラコはありふれた雑草である。

類似種との区別
オニタビラコは、上記のコオニタビラコやその近縁種であるヤブタビラコと混同されることがある。いずれも大きい鋸歯のある根出葉を持ち、細い茎を立てて黄色いタンポポ様の小さな花をつける点では共通する。生育環境としてはコオニタビラコはより湿潤な地を、ヤブタビラコは山林寄りを選ぶが、混成する場合もある。

外見的にはオニタビラコは花茎をまっすぐに立て、多数の花をつけるのに対して、他2種は花茎を斜めにあげて少数の花をつける。より正確には花後の様子を見ればよい。オニタビラコの場合、そのまま上を向いて熟し、種子が熟すると綿毛を持つ種子(果実)が現れるのに対して、他2種では花が終わると総包は下を向き、丸く膨らんで熟する。また、種子には綿毛がない。本種はオニタビラコ属であるのに対し、他2種はヤブタビラコ属で、分類的にもやや離れる。

おままごとのご馳走に役立つヘビイチゴ

2019年04月25日 11時47分07秒 | 
食べられないが、野原の装飾とはなるヘビイチゴ。
実はかわいく、おままごとのご馳走に役立つ。
(2019-04 神奈川県川崎市、道端)





ヘビイチゴ(蛇苺、学名:Potentilla hebiichigo Yonek. et H.Ohashi)は、バラ科キジムシロ属に分類される多年草の1種。和名の語源については実が食用にならずヘビが食べるイチゴ[1]、ヘビがいそうな所に生育する[2]、イチゴを食べに来る小動物をヘビが狙うことからなど諸説がある。毒があるという俗説があり、ドクイチゴとも呼ばれるが、無毒。以前はヘビイチゴ属に分類されDuchesnea chrysanthaと呼ばれていた。ヘビイチゴは人間が食べても体に害はない。


特徴
畦道や野原などの湿った草地に自生し、アジア南東部と日本全土に広く分布する[1][2]。

茎は短く、葉を根出状につけるが、よく匍匐茎を出して地面を這って伸びる。葉は三出複葉、楕円形の小葉には細かい鋸歯があって深緑。

初夏より葉のわきから顔を出すように黄色い花を付ける。花は直径1.5cmほどで、花弁の数は5つと決まっている。花期は4月から6月[1][2]。

花のあとに花床が膨らんで光沢のない薄紅色の花床となる[1]。果実の表面には多数の痩果が付き[1]、赤色で球形、イチゴに多少似たものがなる。毒は含まれないので食用可能だが、ぼそぼそとした食感で、あまり味が無いため食用(特に生食)には好まれない[1][2][3]。ジャムに加工可能。

全草や果実を乾燥させたものは漢方の生薬として利用される。

誰にも馴染みのシロツメクサ

2019年04月25日 07時01分10秒 | 
クローバーの名前で知られるシロツメクサ。もともとは牧草として渡来したものだ。
花はたしかに外来種の雰囲気だが
子供のころからなじみの花なので、帰化植物とも感じなくなっている。
四葉のクローバー探しをした人も多いだろう。
(2019-04 神奈川県川崎市、道端)





シロツメクサ(白詰草、学名:Trifolium repens)はシャジクソウ属の多年草。別名、クローバー。原産地はヨーロッパ。花期は春から秋。

特徴
「シャジクソウ属」も参照
茎は地上を這い、葉は3小葉からなる複葉であるが、時に4小葉やそれ以上のものもあり、特に4小葉のものは「四つ葉のクローバー」として珍重される。花は葉の柄よりやや長い花茎の先につく。色は白(ほんの少しピンクのものもある)。雑草防止、土壌浸食防止等に利用されることもある。

由来と歴史
漢字表記は、「白詰草」。詰め草の名称は1846年 (弘化3年)にオランダから献上されたガラス製品の包装に緩衝材として詰められていたことに由来する。

日本においては明治時代以降、家畜の飼料用として導入されたものが野生化した帰化植物。根粒菌の作用により窒素を固定することから、地球を豊かにする植物として緑化資材にも用いられている。