野の花 庭の花

野の花や山の花は心を慰めてくれます。庭園に咲き誇る花は心をはなやかにしてくれます。

白の花弁にほんのりと紅をさした紅でまり(紫陽花シリーズ29)

2019年07月31日 09時52分36秒 | 

紅でまりは真っ白な装飾花が次第に紅色にそまっていく過程を楽しむアジサイである。花弁の末端から紅をさしたように赤くなるのを観察する毎日が楽しめる。もちろん真っ白でも十分に美しいのだが。

(2019-06 東京都 神代植物公園) 

 

 

紅でまり

ヤマアジサイ:ベニテマリ(紅テマリ)
学名:Hydrangea serrata'Beni temari'
タイプ:ユキノシタ(アジサイ)科ハイドランジア(アジサイ)属の耐寒性落葉低木
樹高:100~150cm
開花期:6月~7月
植付け適期:2月~5月
用途:庭植え、鉢植え
日照:日向~半日陰向き


くっきりとした青紫が目を引くサルビア・ガラニチカ

2019年07月31日 05時41分44秒 | 

サルビア・ガラニチカは園芸種だが、今ではどこでもみかけるようになった。くっきりとした青紫は日本の野草にはあまりみられない色なので、好まれるのだろう。南米由来というが、日本の風土に新しい色彩を加えてつけくれた。なおメドーセージとも呼ばれるが、こちらは地中海原産で別の花である。念のため写真をつけておく。

(2019-06 川崎市 路傍) 

 

 

メドーセージは似ているが、少し青が薄い。

 

サルビア・ガラニチカ(メドーセージ)

開花時期 7月、8月、9月
花の色 青、紫
分布 原産地は南アメリカ
生育地 庭植え
植物のタイプ 多年草
大きさ・高さ 100~150センチ
分類 シソ科 アキギリ属
学名 Salvia guaranitica
花の特徴 花の大きさは3~5センチくらいと大型で、濃い青紫色をした筒状の花をつける。
葉の特徴 葉は卵形で、向かい合って生える(対生)。
実の特徴 花の後にできる実は分果(複数の子房からできた果実)である。
この花について ―
その他 「メドーセージ」の名でも流通しているが、分類上のメドーセージ(Salvia pratensis)は別物である。
葉の緑、萼の黒とのコントラストも美しい。
属名の Salvia はラテン語の「salvare(治療)」からきている。薬用になるものが多いことから名づけられた。
種小名の guaranitica は「(パラグアイの先住民族)グアラニ族の」という意味である。


白の八重の装飾花がゴージャスなスノーフレーク(紫陽花シリーズ28)

2019年07月30日 10時19分53秒 | 

スノーフレークはカシワバアジサイの園芸種である。ふつうのカシワバアジサイとは異なり、白の八重の装飾花がゴージャスな感じを与える。昨日のプレジオサの上に咲いていたのも、スノーフレークだ。スズランに似たスノーフレークとは大違いのどっしりとした豪奢な花である。

(2019-06 東京都 神代植物公園) 

 

カシワバアジサイ
科名 ユキノシタ(アジサイ)科
学名 Hydrangea quercifolia
原産地 北アメリカ東部
大きさ 1.5m~2m
主な開花期6月~7月
耐寒性 つよい


北アメリカ東部原産のアジサイです。葉は大きくて深い切れ込みが入り、その姿がカシワの葉のように見えるところからこの名前があります。

6月から7月に白い一重の装飾花を円すい形にまとめて咲かせます。花房は自重で枝ごとうつむくこともあります。特に八重咲きの品種は雨で水を含むとかなり重そうにぐにゃりと枝を曲げます。花は咲いてから時が経過して古くなるとピンク色に変わります。紅葉も楽しめるアジサイで、晩秋になると葉は深みのある赤色に色づきます。

園芸品種には八重咲きで花房にボリュームのある「スノーフレーク」や巨大な花房の「ハーモニー」、一重咲きの「スノークイーン」などがあり、鉢花や苗として出回ります。


はっきりとした紅色で一目で見分けられるヒメヒオウギズイセン

2019年07月30日 05時42分08秒 | 

藪の中で咲いていても、そのはっきりとした紅色で一目で分かるのが、ヒメヒオウギズイセンだ。園芸種だが、今では野生化して、どこでもみかけるようになった。葉が ヒオウギに似ていて、花が スイセンに似ていて、小型なのでヒメと呼ばれるようになったらしい。
(2019-06 川崎市 路傍) 

 

ヒメヒオウギズイセン(モントブレチア) [姫檜扇水仙]

分布 フランスで交配によって作出された園芸品種
交配親は檜扇水仙(ヒオウギズイセン)と姫唐菖蒲(ヒメトウショウブ)で、どちらも南アフリカが原産地
日本へは明治時代の中期に渡来
現在は野生化
生育地 庭植え 草地
植物のタイプ 多年草
大きさ・高さ 50~80センチ
分類 アヤメ科 ヒメトウショウブ属
学名 Crocosmia x crocosmiiflora
花の特徴 花茎から3~5個の穂状花序を出し、それぞれにたくさんの花をつける。
花の色は朱赤色で、下のほうから順に咲き上がる。
花びら(花被片)は6枚で、内側と外側に3枚ずつあり、根元のほうでくっついている。
雄しべは3本、花柱(雌しべ)が1本ある。
花柱の先は3つに裂けている。
葉の特徴 葉は先のとがった線形で2列に並んで立ち、互い違いに生える(互生)。
葉の中央に縦の筋がある。
実の特徴 結実はせず、球根で増える。
その他 英名をモントブレチア(montbretia)という。
クロコスミアと呼ばれることもある。


色変わりが好まれたプレジオサ(紫陽花シリーズ27)

2019年07月29日 11時08分26秒 | 

プレジオサは本アジサイとヤマアジサイをかけ合わせた品種らしい。手鞠型のまとまった花はいかにも本アジサイらしいが、装飾花の形はガクアジサイを思わせる。ヨーロッパでは厚みのあるどっしりした装飾花の花弁と、白、ピンク、赤と、夏から秋まで、色変わりしながら長く咲き続けるところが好まれたらしい。

(2019-06 東京都 神代植物公園) 

 

 

プレジオサ

ヨーロッパに渡ったヤマアジサイの実生からの作出といわれていますが、真相は不明のようです。
花は手まり型で、花色は咲き始めのクリーム色から薄紫~赤紫へと少しずつ変化していきます。
イメージとしては、アジサイとヤマアジサイの中間的な感じがします。
とても育てやすいので、在来のヤマアジサイは難しそう、と二の足を踏んでいる方は是非この品種から始めてみてはいかがでしょうか。

Hydrangea 'Preziosa' 

'Preziosa' is a mophead-type hydrangea which is varyingly listed as a cultivar of H. serrata or as a cultivar of H. macrophylla or as a hybrid between the two. It is a compact deciduous shrub with a rounded habit which typically grows to 3-4' tall and as wide unless damaged by harsh winters or pruned smaller. Features small mophead-like panicles (3-4") in which the showy sterile florets progress through several different color changes (white to pink to reddish-purple) over a long summer to fall period. Serrate leaves emerge purple-tinted, mature to green and again acquire red to purple tints in fall. Dark maroon stems.


匂いたつ花は遠くからも見分けることができるクチナシ

2019年07月29日 07時59分16秒 | 

クチナシの花は咲き始めると一気に咲いて、すばらしい香りを放つ。花が終わるのも早いが、終わってからもその香りは長く残る。捩じれて開く蕾もかわいい。写真は近くの神社で植えられていた木のもの。いまかいまかと毎日待ちあぐねていて、最初に開いた花をやっと写すことができた。すぐそばに蕾も控えている。俳句の世界では匂いの強さがとくに注目されているようだ。「くちなしと教えて女子学生帰るときよく匂う 荻原井泉水」の句で最後に匂いを放っていたのは山梔子の花か、それとも乙女か。

(2019-06 川崎市 寺社) 

 

 


クチナシ(梔子、巵子、支子、学名: Gardenia jasminoides)は、アカネ科クチナシ属の常緑低木である。野生では森林の低木として自生するが、むしろ園芸用として栽培されることが多い。乾燥果実は、生薬・漢方薬の原料(山梔子・梔子)となることをはじめ、様々な利用がある。

果実が熟しても割れないため、「口無し」という和名の由来となっている説もある。他にはクチナワナシ(クチナワ=ヘビのこと、ナシ=果実のなる木、よってヘビくらいしか食べない果実をつける木という意味)からクチナシに変化したという説もある。

形態・生態
樹高1-3 メートルほどの低木。葉は対生で、時に三輪生となり、長楕円形、時にやや倒卵形を帯び、長さ5-12 センチメートル、表面に強いつやがある。筒状の托葉をもつ。

花期は6-7月で、葉腋から短い柄を出し、一個ずつ花を咲かせる。花弁は基部が筒状で、先は大きく6弁に分かれ、開花当初は白色だが、徐々に黄色に変わっていく。花には強い芳香があり、学名の種名 jasminoides は「ジャスミンのような」という意味がある。

10-11月ごろに赤黄色の果実をつける。果実の先端に萼片のなごりが6本、針状についていることが特徴である。また、側面にははっきりした稜が突き出る。


スズメガに典型的な尻尾(尾角)をもつイモムシがつくが、これはオオスカシバの幼虫である。奄美大島以南の南西諸島に分布するイワカワシジミ(シジミチョウ科)の幼虫は、クチナシのつぼみや果実等を餌とす。クチナシの果実に穴が開いていることがあるが、これはイワカワシジミの幼虫が中に生息している、または生息していた跡である。

分布
東アジア(中国、台湾、インドシナ半島等)に広く分布し、日本では本州の静岡県以西、四国、九州、南西諸島の森林に自生する。

人間との関わり
人家周辺に栽培されることが多いが、クチナシを植えるとアリが来るといって敬遠する例もある。品種改良によりバラのような八重咲きの品種も作り出されている。
果実にはカロチノイドの一種・クロシンが含まれ、乾燥させた果実は古くから黄色の着色料として用いられた。また、同様に黄色の色素であるゲニピンは米糠に含まれるアミノ酸と化学反応を起こして発酵させることによって青色の着色料にもなる。これは繊維を染める他、食品にも用いられ、サツマイモや栗、和菓子、たくあんなどを黄色若しくは青色に染めるのに用いられる。大分県の郷土料理・黄飯も色づけと香りづけにクチナシの実が利用される。クロシンはサフランの色素の成分でもある。
乾燥処理したクチナシの果実は、山梔子(さんしし)または梔子(しし)とも称され、日本薬局方にも収録された生薬の一つである。煎じて黄疸などに用いられる。黄連解毒湯、竜胆瀉肝湯、温清飲、五淋散などの漢方方剤に使われる。
埼玉県八潮市、静岡県湖西市、奈良県橿原市の3市で「市の花」に指定されている。
花言葉は、「幸せを運ぶ」「清潔」「私は幸せ」「胸に秘めた愛」。
黒人ジャズ歌手のビリー・ホリデイは、しばしばクチナシの花を髪に飾って舞台に立った。
足つき将棋盤の足はクチナシを象っている。第三者は勝負に口出し無用=口無し、という意味がこめられている。

 

山梔子 の例句 

くちなしと教えて女子学生帰るときよく匂う 荻原井泉水
くちなしに傘さしいづるあめのおと 飯田蛇笏 春蘭
くちなしのぽつたりとある机かな 石田勝彦 百千
くちなしの三歩離ると匂ひけり 上田五千石『森林』補遺
くちなしの匂ひて雨も小降りかな 大野林火 方円集 昭和五十二年
くちなしの夕となればまた白く 山口青邨
くちなしの白の黄にさびあざむかれ 松崎鉄之介
くちなしの硼酸水のごときかな 平井照敏
くちなしの褪せぎはの酸い浜通 佐藤鬼房
くちなしの開く軋みに雨意こもり 能村登四郎
くちなしの香の間近なるピアノかな 中村汀女
くちなしの香を嗅ぎて寄るひとのあと 山口誓子
くちなしは六弁にして雪車 山口青邨
くちなしや寺門を出でてつねの我 角川源義
くちなしや讃美歌にのる風ありて 星野麥丘人
くちなしを剪るやその顔さだまりぬ 加藤秋邨
くちなしを手折る女の腋くらし 岸田稚魚 負け犬
はなれゆくほどくちなしの香となりぬ 加藤秋邨
ゆさぶりてくちなしの香をにぎはすよ 上田五千石『琥珀』補遺
三鬼読む夜をくちなしの匂ふかな 松崎鉄之介
中山道山梔子こそは人の魂 金子兜太
子規庵も近く山梔子籬に匂ふ 山口青邨
山梔子にいりあひの宙闢くなり 飯田蛇笏 雪峡
山梔子に奥ひろがりの冬景色 中村汀女
山梔子に提灯燃ゆる農奴葬 飯田蛇笏 霊芝
山梔子の匂はゞ匂へ中年過ぎ 鈴木真砂女 夏帯
山梔子の実に雨の日よ晴の日よ 高田風人子
山梔子の実に黄飯の話など 後藤比奈夫
山梔子の白百合の白雨季長し 後藤比奈夫
山梔子の蛾に光陰がたゞよへる 飯田蛇笏 霊芝
山梔子の賤しからざる旧居かな 清崎敏郎
山梔子の香が深き息うながしぬ 中村汀女
山梔子は水取頃の野のよごれ 右城暮石 句集外 昭和八年
山梔子や合壁に人形師仏壇師 福田蓼汀 秋風挽歌
山梔子や吹雪とこもる一顆あり 石橋秀野
山梔子や植木畑を田のかこみ 石川桂郎 四温
留守の戸はくちなしの香がかはりかな 加藤秋邨
粉雪はくちなしの実にとまりそめ 清崎敏郎
香を忘れてはくちなしに近づけり 山口誓子


ヨーロッパでは人気のアルトナ(紫陽花シリーズ26)

2019年07月28日 08時41分51秒 | 

アルトナはサルトルの戯曲を思い出す名前だが、土壌の酸性度によって「フレンチブルーかピンク・レッド」の大きなまとまった花を咲かせる。神代植物公園では土壌の酸性が強いのか、きれいなピンクではないが、ヨーロッパでは好まれているアジサイのようだ。ヨーロッパでは日本と違った好みでさまざまな品種が作りだされていて、風土の違いを思わせておもしろい。

(2019-06 東京都 神代植物公園) 

 

 

Hydrangea macrophylla 'Altona'

QUICK OVERVIEW
A medium to tall variety of good constitution. Large mopheads of rose pink, and on acid soil a vivid deep blue. The old flower heads colour well in autumn, producing a variety of rich red shades which dry well.
Flower Colour: Blue, Pink
Flower Type: Mophead
Flowering Month: June, July, August
Soil Type: Acid
Aspect: Partial Shade
Hardiness*: Hardy
Foliage Type: Deciduous
Foliage Colour: Green
Height after 10 years*: 0.9-1.2m (3-4ft)

 

 


コーラスしているような花の形が面白いトウフジウツギ 

2019年07月28日 06時39分19秒 | 

神代植物公園でみかけたトウフジウツギ。幼い鳥が空を向いて、母鳥に食べ物を催促するような形の花が面白い。フジウツギの中国名の酔っぱらい魚の花という名前も妙に訴えかけてくる。鯉がパンの餌を催促しているみたいだ。いろいろと面白い花が多くて、楽しめる。

(2019-06 東京都 神代植物公園) 

 

 

トウフジウツギ  唐藤空木
[別名] リュウキュウフジウツギ、シマフジウツギ
[中国名] 醉魚草 zui yu cao
[英名] Lindley's butterfly bush
[学名] Buddleja lindleyana Fortune
ゴマノハグサ科  Scrophulariaceae  フジウツギ属
 世界中で広く栽培され、沖縄やUSA南東部などに野生化している。数種の園芸品種がある。
 低木、高さ1~3m。若い木枝、葉の裏面、葉柄、花序に密に銹色の短毛と星状毛、腺毛がある。茎は褐色、小枝は4稜形又は類4稜形。托葉は無い。葉柄は長さ1~7㎜。葉身は卵形~楕円形~狭楕円形、長さ3~11㎝、幅1~5㎝、乾くと膜質、葉裏は無毛又はまばらな短毛、基部は楔形、縁は全縁~粗い鋸歯縁、先は尖鋭形、側脈は目立ち、6~8対。花序は頂生、穂状の集散花序、長さ4~20㎝、幅2~4㎝。下部の苞は葉状、しばしば線形、長さ1~10㎜。萼は鐘形~つぼ形、長さ2~4㎜。萼片は広三角形長さ0.2~1㎜、幅0.5~1㎜、外面は短毛、腺毛があり、しばしば星状毛がある。花冠は紫色、長さ1.3~2㎝、筒部は長さ1.1~1.7㎝、中間より下部は曲がり、先は直径2.5~4㎜、基部は幅1~1.5㎜、外面に短毛と腺毛、しばしばここのも星状毛がある。花冠裂片は類円形長さ2~3.5㎜、幅2~3㎜。雄しべは花冠筒部の基部又は基部近くにつく。葯は長楕円形~卵形。雌しべは無毛。子房はr卵形、長さ1.5~2.2㎜。柱頭は棍棒形。蒴果は楕円形、長さ4~6㎜、幅1.5~2㎜、腺毛又はたまに無毛。種子は淡褐色、斜めの 四面体、角に翼がある。花期は4~10月。果期は翌年の4月。

 

[花期] 4~10月
[樹高] 1~3m
[生活型] 常緑又は落葉低木
[生育場所] 栽培種
[分布] 帰化種 中国原産
[撮影] 名古屋市(栽培)  18.6.22


梅雨の時期に海の青を思わせる花が咲くマリンブルー

2019年07月27日 05時24分10秒 | 

 青がきれいなマリンブルーは、ブルースカイという、ガク咲きタイプのアジサイ変種らしいが、両性花は退化してほとんどみられない。四枚の花弁の一重咲きの装飾花が手毬状にあつまって咲くかれんさに人気が集まる。花弁の先がとがっているのが特徴。梅雨の時期に海の青を思わせる花が咲くのは、楽しいことだろう。

(2019-06 東京都 神代植物公園) 

 

 




どこか異国を思わせるキョウチクトウ

2019年07月27日 05時10分10秒 | 

キョウチクトウはその花の華々しさのために庭に植えられることが多いが、毒性の強さのために庭師も手入れしたがらないという。風に揺れる夾竹桃の赤い花は、どこか異国と激しい情熱のありかを思わせる。そのためか俳句の世界でも日本の風土と異質な要素を導入するためによく使われるようだ。「夾竹桃しんかんたるに人をにくむ 加藤秋邨」とか。あるいは「夾竹桃花のをはりの海荒るる 桂信子 女身」とか。

(2019-06 東京都 神代植物公園) 

 

キョウチクトウ(夾竹桃、学名: Nerium oleander var. indicum)は、キョウチクトウ科キョウチクトウ属の常緑低木もしくは常緑小高木。和名は、葉がタケに似ていること、花がモモに似ていることから。


分布
インド原産。日本へは、中国を経て江戸時代中期に伝来したという。

特徴
葉は長楕円形で、両端がとがった形。やや薄くて固い。葉の裏面には細かいくぼみがあり、気孔はその内側に開く。

花は、およそ6月より残暑の頃である9月まで開花する。花弁は基部が筒状、その先端で平らに開いて五弁に分かれ、それぞれがややプロペラ状に曲がる。ピンク、黄色、白など多数の園芸品種があり、八重咲き種もある。

日本では適切な花粉媒介者がいなかったり、挿し木で繁殖したクローンばかりということもあって、受粉に成功して果実が実ることはあまりないが、ごくまれに果実が実る。果実は細長いツノ状で、熟すると縦に割れ、中からは長い褐色の綿毛を持った種子が出てくる。

白花は一重咲き、桃色は八重咲きが多い。

有毒な防御物質を持つため、食害する昆虫は少ないが、日本では鮮やかな黄色のキョウチクトウアブラムシが、新しく伸びた枝に寄生し、また、新芽やつぼみをシロマダラノメイガの幼虫が、糸で綴って内部を食べる。九州の一部や南西諸島では、キョウチクトウスズメ(スズメガ科)の幼虫が、葉を食べて育つ。

毒性
キョウチクトウは優れた園芸植物ではあるが、強い経口毒性があり、野外活動の際に調理に用いたり、家畜が食べたりしないよう注意が必要である。花、葉、枝、根、果実すべての部分と、周辺の土壌にも毒性がある。生木を燃した煙も毒[2]。腐葉土にしても1年間は毒性が残るため、腐葉土にする際にも注意を要する。

中毒症状は、嘔気・嘔吐(100%)、四肢脱力(84%)、倦怠感(83%)、下痢(77%)、非回転性めまい(66%)、腹痛(57%)などである[3]。 治療法はジギタリス中毒と同様である。

 

夾竹桃 の例句
そこいらぢゆう夾竹桃や顔痩せて 岡本眸
そんなこともあつたやうな夾竹桃の赤さで 種田山頭火 自画像 落穂集
たましひの出入してゐる夾竹桃 飯島晴子
ゆく船のみなかくれ消ゆ夾竹桃 山口青邨
わがのぼる石段長し夾竹桃 山口青邨
パヴイリオン花垣もゆる夾竹桃 山口青邨
主はまこと碧い瞳 夾竹桃の奥処 伊丹三樹彦
人妻の眉根夾竹桃憂しと(神戸、金子兜太氏居) 細見綾子
何か炒める音して路地の夾竹桃 岡本眸
再見(ツアイチイエン)の意か大揺れの夾竹桃 鷹羽狩行
台風の接近夾竹桃の揺れ 山口誓子
地に絵硝子 解かれ 未練な夾竹桃 伊丹三樹彦
夜はさらに赤味加へて夾竹桃 鷹羽狩行
夾竹桃あせもの寄りの子を抱く 松村蒼石 寒鶯抄
夾竹桃かがまりゐしは女人かな 伊丹三樹彦
夾竹桃かほのとりかへもうきかぬ 加藤秋邨
夾竹桃から 湧く風 信じ 神父昼寝 伊丹三樹彦
夾竹桃さき滞船に燕飛ぶ 西島麥南 金剛纂
夾竹桃さき滯船に燕飛ぶ 西島麦南 人音
夾竹桃さき運河ゆく蔬菜舟 西島麦南 人音
夾竹桃しんかんたるに人をにくむ 加藤秋邨
夾竹桃そこら石切る音ばかり 伊丹三樹彦
夾竹桃たわゝに墓は数知れず 日野草城
夾竹桃どっと声立て夜の男女 伊丹三樹彦
夾竹桃に 寺門密閉 煤降る街 伊丹三樹彦
夾竹桃の明るさ暗さ夕爾の忌 安住敦
夾竹桃の燃ゆる揺れざま終戦日 松崎鉄之介
夾竹桃の空ぞ出自に復元せる 中村草田男
夾竹桃の紅が護りてゐたるかな 平井照敏
夾竹桃はげしき言葉われを去る 原裕 葦牙
夾竹桃ひとたび花ををさめけり 松村蒼石 雪
夾竹桃まぼろしの湖よぎり来て 角川源義
夾竹桃われの婚後に花了る 伊丹三樹彦
夾竹桃一夏最も眼を酷使 安住敦
夾竹桃南蛮墓標朽ちにけり 小林康治 玄霜
夾竹桃厠を酸のけむり洩れ 飴山實 おりいぶ
夾竹桃外人の声どっと夜に 伊丹三樹彦
夾竹桃寝墓に挙る季節は遠し 山口誓子
夾竹桃廈の石造貧に耐ヘ 飯田蛇笏 雪峡
夾竹桃引導鐘の圏のなか 角川源義
夾竹桃戦後の病みな長し 石田波郷
夾竹桃戦車は青き油こぼす 中村草田男
夾竹桃挿して炉の釜たぎるなり 松村蒼石 雁
夾竹桃揺れる裏窓 革命史 伊丹三樹彦
夾竹桃昼は衰へ睡りけり 草間時彦 櫻山
夾竹桃泣きじやくる子の眼鼻寄る 松崎鉄之介
夾竹桃白きがはやく秋に入る 百合山羽公 樂土
夾竹桃白しと見つつ兵汗す 山口誓子
夾竹桃白より咲いて鑑真忌 雨滴集 星野麥丘人
夾竹桃砂浜は霧賑はへり 廣瀬直人
夾竹桃窓の百日さだまりぬ 岡本眸
夾竹桃競車かくやと乱れけり 林翔 和紙
夾竹桃花のをはりの海荒るる 桂信子 女身
夾竹桃花無き墓を洗ふなり 石田波郷
夾竹桃荒れて颱風圏なりけり 山口誓子
夾竹桃街路樹とせりヴエスヴイオ噴き 山口青邨
夾竹桃親しき家の石畳 廣瀬直人 帰路
夾竹桃躍るよ無風の齢となりそ 中村草田男
女来て脚組む夾竹桃の夜 伊丹三樹彦
彩簷をめぐり夾竹桃に出づ 加藤秋邨
文中の夾竹桃も暮れにけり 斎藤玄 雁道
晝廊出て夾竹桃に磁榻ぬる 飯田蛇笏 山響集
検疫所夾竹桃と古りにけり 清崎敏郎
死の不安夾竹桃はたわたわと 伊丹三樹彦
殉教の丘長咲きの夾竹桃 鷹羽狩行
洗顔少女は裏川浸かり 夾竹桃 伊丹三樹彦
浦上や十年後の夾竹桃 石塚友二 曠日
海風の朝のすさびに夾竹桃 上田五千石『琥珀』補遺
灰燼に夾竹桃の朝の微雨 西島麦南 人音
炎帝が夾竹桃を寵児とす 相生垣瓜人 負暄
父母にあふ夾竹桃のまた盛り 森澄雄
犬連れて子を負ひて子ら夾竹桃 加藤秋邨
町空に海の雲をり夾竹桃 清崎敏郎
画廊出て夾竹桃に磁榻ぬる 飯田蛇笏 春蘭
病めば炎ゆ夾竹桃が家つつみ 松村蒼石 雪
白い夾竹桃の花の下まいばん掃く 放哉 小豆島時代
白夾竹桃のたそがれながし予後の旅 角川源義
白木槿夾竹桃の白と夜へ 石塚友二 磊[カイ]集
百年の墓ここになし夾竹桃 山口青邨
着陸の夾竹桃が目に入り来 清崎敏郎
競艇場夾竹桃を土堤の花 山口誓子
緑蔭をなす夾竹桃花に満ち 山口誓子
蚊火の風夾竹桃の裏白葉 石田波郷
裏はすぐ運河にほへり夾竹桃 山口青邨
誕生日夾竹桃の燃え足らず 相生垣瓜人 負暄
身の科や夾竹桃の昼を出でず 星野麥丘人
鬱勃たる夾竹桃の夜明けかな 平井照敏 猫町
黄哺江上白夾竹桃散るとおもえ 金子兜太
黙祷に 爆都の夾竹桃 ざわざわ 伊丹三樹彦


真っ白な一重の花弁が次第に頬を染める紅デマリ(紫陽花シリーズ24)

2019年07月26日 09時13分04秒 | 

大きな一重の装飾花が最初は真っ白で、次第に紅色をおびていく。その移り変わりがきれいだ。手毬状に集まるところもうつくしいし、よく見ると真ん中に青い色がみられるのも妙だ。

(2019-06 東京都 神代植物公園) 

 

ベニデマリ 紅でまり ヤマアジサイ
ナデシコ弁、一重、大型テマリ咲き
白花が次第に赤みを帯びて変化してゆく


早咲きのひまわりのようなキクイモモドキ

2019年07月26日 06時21分41秒 | 

キクイモモドキは名前も姫ひまわりと呼ばれるキク科の小さな花だが、この時期にたくさん花を開いている。植物園で名札がついていなかったならば、類似の多数の花と区別がつかなかっただろう。明治期に渡来した花らしいが、こうした多くの外来の花が日本の風土を彩ってくれる。

(2019-06 東京都 神代植物公園) 

 

 

キク科の植物~キクイモモドキ(姫ひまわり)とキクイモ

キクイモモドキ(ヘリオプシス)が沢山花を付けました。キク科キクイモモドキ属(ヘリオプシス属)の多年草、北アメリカ原産です。ヘリオプシスは「太陽+似た」という意味でこの名前でも流通しています。太陽は、向日葵の意味です。別名ヒメひまわり(ヒメ向日葵)、日本には明治時代中期に観賞用として渡来しました。

7月から10月にかけて元気に沢山花を付けてくれて、高温多湿にも強い宿根草です。茎もしっかりしていて花持ちもよく、病気もなく育てやすい花です。冬には地上部は枯れ、春には脇芽を出して増えていきます。花の少ない時期に貴重な切り花としてお仏壇のお花に重宝します。

茎や葉には短く硬い毛があります。葉は互生、長さ5~15cm、卵形で先が尖り、鋸歯があります。花径は5~6cm、舌状花は8~15枚、

キクイモとキクイモモドキの違い
キクイモ
属:ヒマワリ属
草丈:2m以上
葉の特徴:下部の葉は卵型、上部は細長い
葉のつき方:対生、上部は互生
花床:半錐形
花期:9月10月
根:ショウガのような塊根あり

キクイモモドキ
属:キクイモモドキ属
草丈:1m
葉の特徴:卵型、鋸歯あり、薄くガサガサしている
葉の付き方:対生
花:舌状花がこんもりと盛り上がっている。花が散らずに長く残る
花床:円錐形
花期:6月~10月
根:塊根なし

キクイモの効能
キクイモは北アメリカ原産でインディアンのトビナンブ族の食糧でした。江戸時代中期に飼料用植物としてやってきました。塊根部分はショウガのような形で「豚芋」と呼ばれ、第二次大戦後の食糧難には代用食になりました。

生命力の強い植物で、今、その効能が注目されています。デンプンを含まずビタミン類ミネラル類も多く含み、天然のインシュリンとば呼ばれています。「イヌリン」という多糖体は、キク科に多く含まれるますが、最も多く含むのが、キクイモです。イヌリンは血糖値をあげない、糖質や脂肪の吸収を妨げる、腸の通りをよくするなど、健康効果が注目されています。サプリメントやお茶もあるそうです。

岐阜県では粕漬けや味噌漬けが名物です。


繊細な作りの花が集まって咲く「てまりてまり」(紫陽花シリーズ23)

2019年07月25日 07時08分17秒 | 

てまりてまりは立体感のある小さな装飾花が集まって咲く品種である。一つ一つの花もよく見ると繊細な作りで、魅力的である。花弁の色のグラデーションも繊細できれいだ。

(2019-06 東京都 神代植物公園) 

てまりてまり

テマリ状の八重咲でかわいらしい丸弁。一輪の花は小型だが、ひとつづつの花が八重咲になっていて、近くで見るととても可愛らしく見飽きない。作出当初は「花手鞠」と命名したが、後に事情により「てまりてまり」と改名した。

木はガクアジサイタイプで枝葉とも山アジサイ系と比べ大型。やや樹形がまとまりにくいタイプなので、地植えではなるべく日当たりの良いところに植え付けたほうが良い。


芳香を放つ巨大な白い花がみごとなタイサンボク

2019年07月25日 05時26分48秒 | 

しばらく前になったが神代植物公園でタイサンボクの多数の花を観賞した。タイサンボクの木の多くは樹高が高くなり、巨大な花も高いところに咲くので、下から眺めるしかないものだが、神代植物公園には多数の木が植えられていて、そのうちの一つの花が地面すれすれに咲いていた。写真はそれを真上から撮影したものである。
タイサンボクの花の写真を撮りたくて、多くの場所を駆け巡ったが、ここの「マグノリア園」が最高だった。生田緑地のたった一本だけのタイサクボクの花もまた捨てがたいものがあったが。
巨大で芳香を放つタイサンボクの花については、俳句でも好まれている。「ばらりずんと泰山木の花崩る 日野草城」などは、花の落ちる様子を巧みに描いている。「泰山木咲きつぎ死にゆくもの柔らか 金子兜太」の句も忘れ難い。

(2019-06 東京都 神代植物公園) 

 

【タイサンボクとは】
・北アメリカ中南部を原産とするモクレン科の常緑樹。5月から6月にかけて咲く花は直径10センチ~20センチとかなり大きく、圧倒的な存在感を持つ。花には万人受けするような芳香があるが、特に咲き始めは香りが強い。
・樹形も雄大であり、一般家庭よりは公園や寺社のシンボルツリーになっていることが多い。
・タイサンボクの葉は肉厚で冬でも光沢を持つ。裏面が黄色っぽく、遠目でも判別しやすい。
・初秋には画像のとおりホオノキに似たような果実ができるが、ホオノキよりは全体的に小さい。

【育て方のポイント】
・花は短く充実した枝先につく。樹高が高い場合は観賞しにくい。
・本来は肥沃で湿気のある土地を好む。
・日向を好むが、西日は苦手とする。
・大型の樹木であり、鬱蒼としやすいが、剪定をあまり好まず、剪定すると樹形がゴツゴツして乱れやすい。
・繁殖は接ぎ木または、挿し木による。

【タイサンボクの品種】
・ヒメタイサンボク~関東近郊では落葉するのが大きな特徴。葉はタイサンボクよりも薄く、色も明るい。また、ヒメタイサンボクの名のとおり花は小型で、タイサンボクよりも花数が少ない。

 

泰山木の花 の例句

あけぼのや泰山木は蝋の花 上田五千石 田園
あさの客泰山木を挿してまつ 及川貞 夕焼
お上りに泰山木の花頽る 佐藤鬼房
かがみて拾ふ泰山木の花びらを 細見綾子
けふ絣着て泰山木の花 森澄雄
さし寄りて泰山木の花逞し 日野草城
しぐるるや泰山木と虚子像と 星野麥丘人
しづかに切る泰山木の花の枝 日野草城
ただありて泰山木の冬日和 森澄雄
たまたまたづね来てその泰山木が咲いてゐて 種田山頭火 草木塔
だんまりや泰山木の白法師 鷹羽狩行
ばらりずんと泰山木の花崩る 日野草城
ひらくことつつしみ泰山木の花 鷹羽狩行
らう~と泰山木は霜に照り 川端茅舎
セビリヤの朝来て泰山木の花 岸田稚魚
ロダンの首泰山木は花得たり 角川源義
一番花泰山木の秀枝より 阿波野青畝
万緑に泰山木の花二つ 日野草城
上層中層下層泰山木咲きぬ 中村草田男
人一人泰山木の花仰ぐ 高野素十
仰視をば泰山木に強ひられし 相生垣瓜人 負暄
処世過ちて泰山木落花 後藤比奈夫
可睡斎目覚むるごと咲く泰山木 松崎鉄之介
墨かをり泰山木の花かをる 日野草城
壺に咲いて奉書の白さ泰山木 渡邊水巴 富士
太陽と泰山木と讃へたり 阿波野青畝
妻の背に泰山木の花裏に 古舘曹人 能登の蛙
子に遠し泰山木を壺に挿し 三橋鷹女
子へ書けり泰山木の花咲くと 三橋鷹女
孫夫婦よ泰山木一樹花溢れ 松村蒼石 雁
守宮立つ泰山木の宝座かな 阿波野青畝
宮殿を地下に泰山木の花 鷹羽狩行
師弟はまた主従泰山木一花 鷲谷七菜子 游影
廟は動ぜず泰山木の花風に 山口青邨
徹夜稿泰山木に朝の神 原裕 青垣
忌に咲いて泰山木の椀円か 上田五千石『琥珀』補遺
慰霊の日泰山木の一花の白 日野草城
旅を来て魯迅墓に泰山木数華 金子兜太
明日ありて今日の泰山木の花 鷹羽狩行
昼寝ざめ泰山木の花の香に 日野草城
暁の空気泰山木咲けり 星野立子
林泉や雨よくかゝる泰山木 渡邊水巴 富士
梅雨荒し泰山木もゆさゆさと 日野草城
泰山木いやはての蕾咲きにけり 日野草城
泰山木くだつ霖雨や通し鴨 渡邊水巴 富士
泰山木その一枝をぽつきりぬすんだ 種田山頭火 自画像 落穂集
泰山木ちりては杓子雨を汲む 山口青邨
泰山木に雪あつきかなまた雪に 角川源義
泰山木の一花の統べし日暮かな 岸田稚魚 紅葉山
泰山木の一花は友の母の座よ 野澤節子 八朶集
泰山木の咲き隠々としてありぬ 岸田稚魚 紅葉山
泰山木の咲くを夢見む今日あれば 岸田稚魚 紅葉山
泰山木の大きな蕾大きな花 日野草城
泰山木の大き花かな匂ひ来る 臼田亜郎 定本亜浪句集
泰山木の巨花見下しに茶を喫す 大野林火 月魄集 昭和五十五年
泰山木の木蔭に入りて出でずゐる 岸田稚魚 紅葉山
泰山木の花ありつたけ崩壊秘め 加藤秋邨
泰山木の花に怒りの相を見し 波多野爽波
泰山木の花の横顔に昼寝覚む 日野草城
泰山木の花の香追善茶会なり 及川貞 榧の實
泰山木の花や男を保つべし 森澄雄
泰山木の花や起伏の多き町 細見綾子
泰山木の花をはなびらを蘂を視る 日野草城
泰山木の花視野になしそのかをり 日野草城
泰山木の蕊くづるるは噎ぶなり 松村蒼石 雪
泰山木はるか沖より梅雨の風 飯田龍太
泰山木ひらきおくれの花一つ 星野麥丘人
泰山木ひらき即ち古びに入る 橋本多佳子
泰山木よりも高所寝 魯迅の街 伊丹三樹彦
泰山木一花は低く墓にそふ 山口青邨
泰山木七つの蕾ひらき次ぐ 日野草城
泰山木匂ひ蘇州に遅き月 松崎鉄之介
泰山木博士鋳像と成りたまふ 阿波野青畝
泰山木厳冬花は無かりけり 渡邊水巴 富士
泰山木合掌薫るおん佛 水原秋櫻子 旅愁
泰山木君臨し咲く波郷居は 及川貞 夕焼
泰山木咲いて潮の土佐の国 森澄雄
泰山木咲きつぎ死にゆくもの柔らか 金子兜太
泰山木咲きて法王常に老ゆ 中村草田男
泰山木咲き東京を濡らす雨 平畑静塔
泰山木咲けり押入のものを出す 下村槐太 天涯
泰山木咲けり白幡南町 松崎鉄之介
泰山木天にひらきて雨を受く 山口青邨
泰山木妻へ傾く夜の雲 原裕 葦牙
泰山木家出るたびの遠目ぐせ 野澤節子 鳳蝶
泰山木屋根を圧して花をおく 山口青邨
泰山木巨らかに息安らかに 石田波郷
泰山木楕円の雪の晴れにけり 川端茅舎
泰山木花の玉杯かたむけず 上田五千石 風景
泰山木花を傾く看経に 山口青邨
泰山木花上に雨後の重き天 林翔 和紙
泰山木落花 仏の手窪かと 伊丹三樹彦
泰山木蕊をとどめて花は散る 阿波野青畝
泰山木鏡なす葉に咲かむとす 水原秋櫻子 古鏡
泰山木雨に濡れきし僧が客 大野林火 方円集 昭和五十一年
海よりの残光泰山木の花 有馬朗人 母国
溽暑し泰山木は咲けり匂ふ 日野草城
灯に向いて泰山木の蕾かな 山口青邨
白し 残月 白し 泰山木の花 伊丹三樹彦
皓々と泰山木のけさの花 日野草城
目の前の泰山木の香の死角 稲畑汀子
石踏に毀たれ泰山木の花 鷹羽狩行
磔像は似合う 泰山木の茂み 伊丹三樹彦
磔像や泰山木は花終んぬ 山口誓子
秋の日に泰山木の照葉かな 村上鬼城
移り香に泰山木の花終る 原裕 青垣
筺辺に泰山木の活けられし 阿波野青畝
紅富士や泰山木は花かかげ 角川源義
緑陰のおもて泰山木の花をおき 山口青邨
胸疼くまで明晰の泰山木 佐藤鬼房
花の土に溜る泰山木の滓 阿波野青畝
花の数見す泰山木は男の木 岸田稚魚 紅葉山
葉を一つ落とし泰山木の花 深見けん二
蕾立つ泰山木は男の木 森澄雄
蠅ゆきき泰山木の花と吾に 山口青邨
街路樹に泰山木を咲かす国 稲畑汀子
都市生活寺の泰山木が咲く 阿波野青畝
野馬追武者泰山木の花の下 松崎鉄之介
雀らに泰山木の黙の花 石田波郷
雨の本郷見下す泰山木の花(夫入院) 細見綾子
霖雨や泰山木の花堕ちず 杉田久女
霧たしかむ泰山木の花見ては 岡本眸
魯迅の墓泰山木の巨花が侍す 松崎鉄之介
魯迅の書泰山木の香がとどく(中国旅行吟) 細見綾子


手毬状の白い装飾花がことさらに目立つアナベル(紫陽花シリーズ22)

2019年07月24日 06時27分22秒 | 

本アジサイの品種の一つのアナベルは、真っ白な装飾花が手毬状に咲くので、とても目立つ。両性花は委縮してほとんど目につかないという。少し黄色を帯びてみえる白の花の塊がいかにもアジサイらしい花の形とともに、アジサイ園のなかでもことさら人目を惹く。

(2019-06 東京都 神代植物公園) 

アジサイ【アナベル】
学名…Hydrangea arborescens ‘Annabelle’
和名…アメリカノリノキ
科名…アジサイ科
属名…アジサイ属(ハイドランジア属)
原産国…北アメリカ東部
花色…白、ピンク
樹高…1m~1.5m
日照…半日蔭~日なた


アナベルは、北アメリカ東部に自生するアメリカノリノキ(Hydrangea arborescens)の変種を品種化したアジサイです。
園芸品種として作出されたものではなく、イリノイ州のアンナ市の近くで発見された、野生のアジサイです。
通常のアメリカノリノキは小さな装飾花が花序の周囲に額のように付きますが、発見された変種は大きな装飾花を手毬状に咲かせるものでした。
この変種をオランダで選別・改良し、品種化したのがアナベルです。

アナベル花期は6月~7月。
花期になると、分枝した茎の頂部に半球状の花序を出し、小さな花を多数咲かせます。
花のように見えるのはガクが大きく発達した「装飾花」と呼ばれる部分で、雄しべと雌しべが退化しています。

雄しべと雌しべを持つ本来の花(両性花)は、装飾花の内側でひっそりと咲いており、花弁を持ちません。

花序は径20㎝前後、大きいものになると30㎝にもなります。
純白の装飾花が咲くのは6月~7月ですが、蕾から咲き進むにつれて変化する花色もアナベル大きな魅力の一つです。
蕾の頃は淡い緑、花が咲くと純白、咲き進んでいくと再び緑に変化し、秋にはドライフラワーのように乾燥した茶色になります。

花色は基本種の白の他、ピンク。
白花のアナベルと同じように、淡い緑→ピンク→淡い緑→茶色と、花色が変化していきます。