落武者の行方

09.02.02>>>迷走中?(since 04.09.13)

黛敏郎「曼荼羅交響曲」「舞楽」

2005-01-16 | music
さあ、また出かける暇がないのでお茶濁しの始まりです・・・。




黛敏郎「曼荼羅交響曲」「舞楽」

日本の現代音楽界の最重要作曲家の一人である(あった)黛敏郎氏の"曼荼羅交響曲"、"舞楽"です。

以前も述べたように、僕はとにかく自分でジャンルを絞ることが嫌いなので音楽についても様々なものを聴きます。
一般的にはクラシックとひとまとめにされますが、現代音楽というまた異なるものだと考えるべきだとは常々思っています(ただし、クラシックがなければ現代音楽も今のようなかたちでは存在し得なかったとは思いますが)。
今回この2曲をとりあげたのは、廉価版の黛作品集でこの2曲が同時に入っているものを自分が持っているからということもありますが、純粋にこの2曲に衝撃を受けたということの方が理由としては大きいでしょう。


購入したのはだいぶ前になりますが、その時は"舞楽"が目的で購入しました。

「舞楽」は1962年に作曲され、第1部と第2部からなります。第2部はモーリス=ベジャールの手によってバレエの振り付けがなされていることでも有名です。
僕は音楽については、器楽演奏を習っていたことはありますが楽理などにふれていたわけではないので余計なことを書くと間違いだらけになりそうなのですが、"舞楽"は二部通して共通のモチーフが使用されています。圧巻はやはり第2部のフィナーレです。
恍惚の境地、エクスタシーさえ感じさせる音世界は必聴です。

"舞楽"が目的、と書きましたが読んで字のごとく当時は"曼荼羅交響曲"はどうでもよく、実際聴いてもあまりの難解さに理解が出来ずに終わっていました(確か中学生くらいだったような・・・)。
しかし時は人を変えるもので、その後数年して急に魅力を感じるようになり、今では世紀の傑作とまで思っています。

黛氏は、梵鐘の音を研究、コンピューターにより解析しそれをオーケストラで再現しようと試みました。それが"カンパノロジー"(1957、カンパノロジーとは鐘学の意味)であり、この曲を第一楽章とした"涅槃交響曲"(1958)は彼の最高傑作といわれています。
"曼荼羅交響曲"は1962年に発表されましたが、涅槃の流れを引継ぎ、その響きは驚愕に値します。勝手に「四次元の響き」と呼ばせてもらっていますが、金剛界曼荼羅、胎蔵界曼荼羅の二曲である種の宇宙が完璧に表現されていると思います。
「こんな音世界を構築することが出来るんだ・・・・・・。曼荼羅の世界も本当にこんな感じなのかもな。。」と今でも聴くたびに鳥肌がたちます。
ハイスペックのオーディオでいずれ再生したいものです。

現代音楽などには縁が無い、と思っている方こそ聴いて頂きたいです。


ちなみに皮肉なことですが、黛氏はカンパノロジーに触れたことで「鐘の音より深い音を創るのは無理だ。」と感じ作曲への意欲をなくしてしまったという話を以前目にしたことがあります。

そういった経緯もあってか、黛氏の現代作曲家としての一般的位置付けは明らかに武満徹氏より下だと思います。これは断言して良いでしょう。
しかし、実際にそうだとは思いません。武満氏が20世紀の世界の現代音楽界を代表する作曲家であったことは変えがたい事実ですが、黛氏もそれに劣らぬ耀く作曲家であったと僕は思っています。




ちなみにこのCD、現在行方不明です。
他にも本とかが行方不明になっていたりして・・・そんな汚い部屋じゃないのにどこへ行ったんでしょうか。。
怖いです。。

DM

2005-01-11 | art
僕のところにも(も、としたのはpizzさんが既にそのネタを書かれているので)、TAKAHASHI collectionから"おさらい 山口晃"のお知らせが届きました。

おさらい・・・
高橋さんのコレクションで山口晃作品がおさらいできてしまう、と・・・。
はぁ。。
ため息。
素晴らしいの一言ですね。本当に有り難いです、貴重なコレクションを。

"売らん哉"がアヤシイ雰囲気になってきましたが、こっちは余裕で行けるでしょう。
今から楽しみです。

変更

2005-01-10 | Weblog
コメントの欄の記事タイトルで、""、が含まれているとなぜか¥が出現して、なんだか金の亡者みたいなので「」に変更。

わざわざ記事にするほどのことではありません・・・。

内藤礼の「きんざ」が…

2005-01-08 | art
直島家プロジェクトの一つである、内藤礼の"きんざ-このことを"が現在修復中で3月に公開再開予定なのだそうですが、何があったんでしょうか。

まさか誰かが飛び込んで破壊したんでは・・・。。

横浜美術館「マルセル・デュシャンと20世紀美術-芸術が裸になった、その後で-」

2005-01-07 | art
いまさらながら、あけましておめでとう御座います。
今年も宜しくお願い致します。


今年最初のアートです。

デュシャンさま、あけましておめでとうございます。




YOKOHAMA MUSEUM OF ART"MIRRORICAL RETURNS:Marcel Duchamp and the 20th Century Art"



大阪の国立国際美術館からの巡回展、1月5日からみなとみらいの横浜美術館はじまった"マルセル・デュシャンと20世紀美術-芸術が裸になった、その後で-"です。
当初、英訳のままの"鏡の送り返し"という副題がついていましたが、知らないうちに変更になっていました。
寄り道期間中の最初は横浜が拠点だったもので良く行きましたが、離れてからは行きたい企画展はあったのに微妙な距離にめげてご無沙汰。2年半ぶりの横浜美術館でした。


なかなか充実した内容で、代表作もしっかりおさえ見応えのある企画展でした。
が、期待が大きすぎたためか少々物足りない気分にもなりました。
内容もさることながら、ハードや展示方法の問題もあったのかもしれません。国立国際美術館で観ていたらまた異なる印象になっていたでしょう。
横浜美術館はこうしたタイプの企画展は開催しにくい設計のようにも感じました。改めて。


そうは言いつつも、デュシャンの作品は図録や作品集でしか観ていないものが多かったので終始興奮気味でした。
デュシャン自身の作品と、彼に影響を受けた作家の作品を並列して展示という形態をとっていましたが、これはまあ良かったのではないでしょうか。
彼が与えた恐ろしいまでの影響力が分かります。

なんだかんだでやはり代表作は、代表作たる魅力を持っていたと思います。
"泉"は置いておいて、"彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも"(通称大ガラス)は異様なまでの存在感かつ不可解。
補完資料があっても不可解。でも凄い。何か凄いんです、やはり。
"グリーン・ボックス"があったのもよかったです。ついでに"ホワイト・ボックス"も観たかったのでこれも嬉しかったですね。

大ガラスにちなんで展示されていたのが、吉村益信の"大ガラス"なんですが、この場でこんな笑えるギャグのような展開に出会うとは思ってもいませんでした。これは書いてしまうと面白くないので・・・でも書きたい・・・やめておきます。お楽しみです。
ギャグ、と言ってもそう感じるのは最初だけで観ていてその意味を考えさせられましたが。


個々の作品についてではありませんが、強く感じたのは作品と同じくらいその影が美しいものが多い、ということです。勿論立体作品に限られてしまいますが、デュシャン自身もその影に興味を魅かれていたであろうということは"レディメイドの影"という写真の存在からもわかるのではないでしょうか。


遺作の"与えられたとせよ 1.落ちる水 2.照明用ガス"は以前から「作品名が完璧だ・・・」と思っていて、ずっと観たい思っていた作品だったのですが、所蔵先のフィラデルフィア美術館に固定展示されているため移動が不可能。
「どうするつもりなのかな」と思っていたら、映像による再現でした。
頑張りました、という感じでしたがやはり扉まで映像となると・・・それでも雰囲気はなんとなくつかみ取れましたし、どこかに書かれていた"デュシャンが遺作によって己が今まで主張してきたことを否定した"という言葉通り、らしくない創り込まれたその世界はさらに僕の頭を混乱させてくれました。


この企画展を観てデュシャンを理解できるようなら何の苦労もいらないわけですが、それでも観ておくべき展覧会だと感じました。
不可思議で謎に満ちている(マン・レイよりも謎ですね)からこそ、勝手な解釈をさせて頂いちゃっても良いのではないでしょうか。相手があそこまでいったなら、こっちも自由にやらせて頂きましょう。
といいつつ、近いうちにしっかりとした研究に基づいた書籍で勉強しようとも思っていますが。


余談ですが、影響を受けた作家の作品も展示されていると先に書きまして、リヒターの"エマ(階段の上の裸体)"が出品されています。これは"階段を降りる裸体 no.2"と関係していることは明らかなのですが、森村泰昌はさらにこの"エマ"に基づいて"階段を降りる私/リヒターに捧げる"という作品を創っています。その森村は今回デュシャンに捧げる複数の"たぶらかし"を出品しています。
こういう相互の関係や影響もやはり面白いなと思いました。


2005年3月21日まで開催。
お暇があれば是非どうぞ。




おまけ:
●破壊神アルマン(勝手にそう呼んでいます)は相変わらず破壊していました。
●徳島県立近代美術館は、デュシャン作品を複数所蔵しているようですね。京都国立などはわかりますが地方美術館、頑張っているのでしょうか。今度遠征してみます。ちなみに15日からマン・レイ巡回展が始まるようです。
●所蔵先が株式会社ビギとなっている作品が多数ありましたが、このビギとは日本のファッションの一時代を担った(??)あのBIGIでしょうか。