うさこさんと映画

映画のノートです。
目標の五百本に到達、少し休憩。
ありがとうございました。
筋や結末を記していることがあります。

0475. グランド・ブダペスト・ホテル (2014)

2018年03月10日 | ベルリン映画祭審査員大賞

グランド・ブダペスト・ホテル / ウェス・アンダーソン
99 min USA | Germany

The Grand Budapest Hotel (2014)
Directed by Wes Anderson. Written by Wes anderson et al, inspired by the writings of Stefan Zweig. Cinematography by Robert D. Yeoman. Film Editing by Barney Pilling. Music by Alexandre Desplat. Production Design by Adam Stockhausen. Costume Design by Milena Canonero. Performed by Ralph Fiennes (M. Gustave), F. Murray Abraham (Mr. Moustafa), Mathieu Amalric (Serge X.), Adrien Brody (Dmitri), Willem Dafoe (Jopling), Jeff Goldblum (Deputy Kovacs), Harvey Keitel (Ludwig), Jude Law (Young Writer), Edward Norton (Henckels), Lea Seydoux (Clotilde), Tilda Swinton), Tom Wilkinson (Author).


https://www.imdb.com/title/tt2278388/mediaviewer/rm3606513664

うわ、まれにみる才能。現代で五本の指に入りそうなコメディー作家です。からりと軽快なリズムに加えて構図の過剰な様式性で誇張を作り出すスタイルで、しばしば絵が映った瞬間、もうおかしい。王道です。この完成度に達した作品は例外かもしれないけれど、ほかの作品もみてみたいですね。

音楽も成功した。チンバロンなどいわゆる民族楽器をとりいれて、中欧から東欧の古風な空気を鮮やかに醸していく。担当したアレクサンドル・デスプラは同じ2014年にヴェネチア映画祭で審査員長をつとめている。

全体はすこし複雑な外枠をおいた大パノラマの脚本で、監督したウェス・アンダーソン自身が手がけている。枠内の世界は東欧、時代は20世紀前半、それも本質的には19世紀の文化が、心からの愛情をこめて扱われていた。アンダーソン自身はテキサスの出身だそうで、そのことじたいに小さな驚きがあるほどだったけれど、最後にツヴァイクへの賛が掲げられて、とどめを刺された。ああ、これはまさに『昨日の世界』でした。ひたひたと戦争が迫るあの動乱のなかで、無数の人びとが逝った。エンディングのちいさな辞にこめられた遠い遠い惜別に、やられました。

そういえば『ライフ・イズ・ビューティフル』もそうだったなあ。およそ異なる作風のコメディーだけれど、最後の最後にただ一度本音を語り、その瞬間にすっぱりと終わる。どちらも最高のコメディーです。

もう一つ驚いたのはキャスト。誰が後ろだてなのか、ここまで華やかに演技派をそろえたこともめずらしい。主役は名門ホテルのエレガントで軽薄なコンシェルジュで、レイフ・ファインズが演じた。完璧にこなしていて、これもちょっと予想外。おみそれしました。ほかにジュード・ロウ、エイドリアン・ブロディ、ウィレム・デフォー、ハーヴィー・カイテル、エドワード・ノートン、トム・ウィルキンソン、ティルダ・スウィントン、レア・セドゥなど。なお2015年の米国アカデミー賞を4部門で受賞している。音楽、美術、衣装デザイン、ヘアメーク。こちらは映画としての総合的な充実を物語る評価になった。

本命だったであろう2014年ベルリン映画祭では、審査員グランプリを得ている。いわゆる第二席です。ふつうなら問題なく第一席のできばえなので、よほど例外的な当たり年だったのかと思うと、金獅子賞はディアオ・イーナンの『薄氷の殺人』だという。これはさすがに絶句してしまった。出演者の顔ぶれなどは無視したうえで、ごく公平に言って、ここまでできばえに差があるとかばいようがない。審査員長はジェーズム・シェイマス。この年の一席と二席はいれかわることが妥当だったと思います。なんであれ、のちのち残るのはこちらの作品で、それがすべて。



メモリータグ■ひとつだけ。それでも、ねこをごみ箱に捨てないで。たとえもう死んでいても、たとえコメディーでも、たとえその10分後に捨てた本人が指をなくしても、たとえその数秒後には本人が惨殺されても。絶対に・捨てないで。だいたいこの殺害場面はカットがきちんとつながっていない。視点が混乱している。コンテが不十分では?(←場面を思い出すと動揺するため、制作上の些細な傷を羅列している)。






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