うさこさんと映画

映画のノートです。
目標の五百本に到達、少し休憩。
ありがとうございました。
筋や結末を記していることがあります。

0455. 蜂蜜 (2010)

2017年04月02日 | ベルリン映画祭金熊賞

蜂蜜 / セミフ・カプランオール
トルコ 1h 43 min.

Bal (2010)
Directed by Semih Kaplanoglu. Written by Semih Kaplanoglu and Orçun Köksal. Cinematography by Baris Özbiçer. Performed by Bora Altas (Yusuf), Erdal Besikçioglu (Yakup), Tülin Özen (Zehra). 監督:セミフ・カプランオール、脚本:セミフ・カプランオール、オルチュン・コクサル、出演:ボラ・アルタシュ(ユスフ)、エルダル・ベシクチオール(Yakup)、トゥリン・オゼン(Zehra)。    


https://www.youtube.com/watch?v=LF7LcMdlNQs


自然音がすばらしい。森の木々を揺さぶる風の音、したたる雨の音、遠雷、虫の声、川の水音。翳りの深い映像と共に、一人の子供の心に積もっていく果てしない時間と遠い孤独を、世界の響きが表現していた。

光と音だけでどこまでものを語ることができるか、妥協なく賭けてくる映像作家は少ない。カプランオールはそれをする。映像の時空に融け込んだような、一種不思議な演劇性がそこに生まれていく。強靭な作風は変わらない。完全にカメラを固定した冒頭のカットは3分40秒を超えていた。被写体をとらえて微妙に調整するためのわずかなパンさえおこなわない。画面の奥行き軸を使ってゆっくり手前に移動してくる被写体はフレームアウトして、また戻る。このショットをふくめた冒頭場面が物語の核心をなすことは最後近くまであきらかにされないが、そのスタイルは三部構成の第一作『卵』を連想させて、詩的な様式性を醸している。

寡黙な挿話をつみ重ねてわずかずつ記号の織物を紡いでいく語りの速度は、けっして観客ににじり寄ってはこない。観る側は、最後の糸が中央に縫い込まれて図絵の意匠が全貌を現すその瞬間まで、ただ集中して光と音の新鮮な変化を追いつづけるのだ。いま、内なる勝負に立ち会っているという厳しい臨場感ののちに、静かな成就が訪れる。2010年ベルリン映画祭金熊賞。



メモリータグ■水に映る銀色の月。ここは強く舞台的な映像演出だけれど、行き過ぎてはいなかった。





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