今更留学記 Family medicine

家庭医療の実践と、指導者としての修行も兼ねて、ミシガン大学へ臨床留学中。家庭医とその周辺概念について考察する。

医療用マリファナって、エビデンスあるの?

2009-04-12 23:05:21 | 医療ネタその他

「無い」


というのが、先週のレクチャーをきいた限りの、私の現在の態度


ミシガン州でのマリファナの処方解禁にあわせて、シニアレジデントによる医療用マリファナの総論のレクチャーがありました

 

この数日だけで、日本でも中村雅俊の息子の逮捕やら、元若麒麟の公判やら、果ては映画ハリーポッターの俳優が逮捕と


マリファナは世間では「違法な麻薬」の代名詞ですが


ミシガンでは、医師によるサインがあれば、マリファナを使用するだけでなく、栽培し、持ち歩くことも出来ます


注意が必要なのは、医療用マリファナはアメリカでも13州でみとめられているにすぎず


連邦政府は未だに「違法」だとしている点


このあたりが、地方分権がすすんでいるアメリカならではなのですが


それが混乱のもとになる可能性大で


ミシガン大学病院の法律対策専門家のコメントとして、


「求められて処方をするのは良いが、医者が医療用マリファナを勧めると、あとで厄介なことになる」


つまり「処方をした患者さんが、栽培したマリファナを売るなどして逮捕された場合、法的責任が医者に及ぶ場合がある」


決して勧めてはいけないし、カルテには絶対に「患者さんが話をきり出した」と書かないとヤバそうです

 

さて、医療的な効果について簡単にまとめますと、


「吸引用マリファナ」には根拠がない(未だ証明されていない)


という結論を出さざるを得ません


適応としては、


「痛み、吐き気、食欲不振、てんかん(epilepsy)、緑内障 etc」

 

ところが、これらの効用は全て、経口剤のDronabinolやNabiloneで証明されているにすぎません


証明されていると言っても、それすらかなり不十分で


吸入用について示されているのは、「健常人で体重が増えた」ことぐらい


「絶対に処方しない」とは言いませんが、自分から話をもちかけることは絶対になさそうです


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 参考までにミシガン州で適応がとれているのは以下です


o Chronic debilitating disease causing

cachexia or wasting syndrome

severe or chronic pain

severe nausea

seizures (including but not limited to those caused by

epilepsy)

severe or persistent muscle spasms, including but not

limited to multiple sclerosis (MS).

o Amyotrophic lateral sclerosis (ALS)

o Alzheimer’s agitation

o Cancer

o Crohn’s disease

o Glaucoma or nail-patella syndrome (increased risk for

glaucoma)

o Hepatitis C

o HIV/AIDS

 


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