今更留学記 Family medicine

家庭医療の実践と、指導者としての修行も兼ねて、ミシガン大学へ臨床留学中。家庭医とその周辺概念について考察する。

SPによる身体診察教育

2008-07-11 23:42:34 | 臨床留学
今回のお題は「SP(Simulated Patient)による身体診察教育」

「SPを交えた」、「SP参加による」の間違いではありません


今日の午前中は

前半が家庭医のFacultyによるReview of the Gynecologic Examinationというレクチャー

後半2時間がPelvic Examinationの実習

レクチャーが終わってSPのところに案内されたら、Facultyはさっさと帰ってしまいました

ここからは、SPだけが指導してくれるのです

レジデント3人につきSPが1人の割合で

SPが自分の体を張って、手取り足取り教えてくれます

私のグループを担当したSPさんはこの道20年近いベテラン(といっても50歳代)

外陰部の視診の仕方から、クスコの使い方、内診の仕方まで念入りに一人一人習います



教科書に書いていないコツや、教科書とは相反するコツまで

自分自身が患者役を何百回もこなしてきた時の痛みや感触をもとに、例えば「クスコを入れる時の角度はこっちの方が痛くない」とか「子宮口がみえなくても、ぐりぐりと探さず軽く咳払いをさせると、子宮口が勝手によってくる」などと指導してくれます

勿論、「教科書的にはこう書いてある」という内容も押さえた上での話

さすがに診察する時の患者さんの感触、痛みなどはエビデンスには限界があり、まさに患者さん役のSPさんに習うところは大きいように思いました

話には聞いていましたが、すごいですね

ミシガン大では医学生も同様の教育を受けているそうですが、それもすごいです


ちなみに、日本でも医療面接に協力するSPさんの養成はすすんでいますが、私の同僚が行ったリサーチ(*)では

身体診察に対する女性のSPさんの許容範囲は、一般的に腹部の診察までが限界で、胸部の診察はさすがに抵抗が強いという結果が出ています

* 阿部 恵子・向原  圭 ・伴 信太郎
模擬患者の持つ身体診察に対するイメージ
    ―グループインタビューによる質的分析―
『医学教育』2005年 第36巻・第2号107
 

ちなみにアメリカのSPさんはそれなりの報酬をもらったり、俳優さんだったり、かなりプロという感じなのに対して

日本ではほとんどボランティアですから、単純比較をしてもいけませんが

文化的な違いも勿論大きな要素ですね


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家の周りに蛍が乱舞しています
おそらく沼や池がたくさんあるからだと思うのですが・・・
暗くなってしか現れない蛍を、フラッシュのたけないiPHONEのカメラで撮るにはこれが限界