今更留学記 Family medicine

家庭医療の実践と、指導者としての修行も兼ねて、ミシガン大学へ臨床留学中。家庭医とその周辺概念について考察する。

ミシガン大学の家庭医療プログラムについて

2008-03-26 10:17:22 | 臨床留学
マッチしたミシガン大学の家庭医療プログラムについて書きます

実際に働きだすと、また違った面が見えてくると思いますが、現段階での印象や情報です

ミシガン大学はミシガン州のアナーバーというまちにある州立大学です

ミシガン州には、ミシガン州立大学もあります

アカデミックなミシガン大学、プライマリ・ケアのミシガン州立大学とよく比較されます

アナーバーは人口11万人程でデトロイト郊外にあり、ミシガン大学を中心に構成される学園都市です



手根骨でいうところの、小菱形骨(Trapezoid)の位置ですね

ちなみにミシガンでは「どこから来たの?」という質問に対して

黙って左手の部位を指差すだけで、出身地を伝える人がよくいるそうです

アナーバーは治安も大変良く、冬に雪が多いことを除けば、大変過ごしやすいそうです

個人的には幼少時にデトロイトにいた事がありますので、他の都市へ行くよりは不安が少ないです

ミシガン大学の家庭医療プログラムはFaculty(教員)として家庭医の医師が57名(AAFP Directory of Family Medicine Residency Programsによると)も登録されています

誰をプログラムのFacultyとみなすかの基準が、施設によって異なると思いますので単純に比較できませんが、おそらく全米でも1、2を争う多さだと思います

例えば私がいる総合診療部の教員は教授、准教授(講師)、助教(助手)あわせて4人です

医員をあわせてもせいぜいトータルで10人弱

これでも全国的にみて「人手が豊富」と見なされているのですから、ミシガンが如何に人員豊富かが分かります

ミシガンの家庭医療では大学病院をベースとして、周辺の地域に6つのクリニックを擁しています

そのうち'チェルシー'と'イプシランティ'の2カ所が、レジデントの教育クリニックです

ちなみに日本家庭健康プログラムは、残りのクリニックのうちの1つ' Family Medicine at Domino's Farms' にあります

レジデントは、マッチングの段階で2カ所のうちのどちらかに所属が決まります

私はチェルシーの配属となりました

両者の簡単な特徴を言うと

チェルシーは
  • 白人の高齢者が多く住む田舎の診療所
  • Facultyのうち、ディレクター経験者など多くが所属
  • レジデントも白人がほとんど
  • となりに地域の病院研修をするチェルシー病院があります
  • 妊婦、小児は比較的少なく、近郊には高齢者のケアをする施設が充実

イプシランティは
  • いわゆる貧困層が住む都市の診療所
  • Facultyは若手中心
  • レジデントも白人、アジア系、黒人など多彩
  • 妊婦、小児、ドラッグ問題などが比較的多い

チェルシーでは、レジデンシーのコアの指導医との交流はたくさんできますが、お産の経験はイプシランティより少なさそうです

その分、日本家庭健康プログラムで外来枠を持たしていただいて、日本の妊婦さんのお産も担当することを考えています

大まかにミシガンのプログラムとそこでの生活の気に入っている点と、不安な点をまとめてみました

気に入っている点
  • 指導医が多い(家庭医療の中でも大抵の領域の専門家がいます)
  • レジデンシーのディレクター、フェローのディレクターが共に日本に好意的
  • カリキュラムもかなり希望を聞いてもらえそう
  • お産の機会は豊富
  • Sports medicineのフェローシップがある(かなり良いプログラム)
  • Academic fellowがある
  • Part timeであるが、faculty developmentのカリキュラムもある
  • 日本家庭健康プログラムの存在(指導医をメンターとして頼れそう)
  • 日本人の患者さんが多い
  • リサーチもしやすい=特に日本家庭健康プログラムの先生方と、日本人の患者さんに関連して
  • 治安が良い
  • 日本環境は恵まれている

不安な点
  • プログラムが大きすぎる=まとまりは?体質が硬化していないか?交流を持てないFacultyも出そう
  • レジデントとして外国人を採用した事がほとんどない=早速ビザの手続きが不安いっぱい
  • クリニックと大学病院の移動に時間がかかる(2-30分)
  • 病棟ブロックローテーションの多くが大学病院(善し悪しです)
  • 寒い、雪が多い