映画と音楽そして旅

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映画音楽) (61) 「サン・ライズ・サンセット」 (映画「屋根の上のヴァイオリン弾き」)

2006-01-21 00:25:14 | 映画音楽
 ツアー施政下のロシアを舞台にしてユダヤ人農民の生活や受難の歴史を描いた作品で、元はブロードウェイ・ミュージカルの映画化作品です。祖国をなくし全世界各地に散らばったユダヤ民族の一部は、ロシアの大地に根を下ろして貧しいながらも、なんとか自活していました。
 五人の娘を持つ農民のデヴィエはユダヤ人社会の伝統を破って、長女が好きな青年と結婚するのを時代の流れとして認めます。そして次女も三女も‥
 
 長女の婚礼には「サンライズ・サンセット」を合唱して喜びを頒ち合う場面が、この映画のクライマックスのように思いました。
 軍隊が披露宴を無茶苦茶にしたり、最後には長年住み慣れた土地からの退去を命ぜられて、雪道を家族が新しい土地を求めて去っていく姿は、これから訪れるユダヤ人の苦難の歴史を象徴してるようでした。
 彼の伝統を守ろうと言う気持ちは三女が、恋人との結婚の許しを求めたのに対して、ユダヤ人としての意地から彼は「No]と言います。「ウエスト・サイド物語」のようにかなり現実的な題材なのに、厳しいロシアの大地や自然を背景にユダヤ民族に対する暖かいまなざしが感じられました。
 この映画が製作された1971年頃はまだ米ソ冷戦の頃、ユダヤ人社会がアメリカの政策に大きな影響を及ぼしていた時代でした。
 この映画で中央政府の命令を伝達していた男が、誰かさんに似ているな‥と考えてみたら、過去のソ連の独裁者スターリンにそっくりでした。このあたりに当時のアメリカの政治的な意図が、見え隠れするのは私の考えすぎかな。
 この映画は私はミュージカルと云うよりも、普通のシリアス・ドラマみたいな感覚で3時間という大作を見終わりました。
 あの頃のユダヤ人はすべて不安定な屋根の上で、転げ落ちないようにしながら弾くヴァィオリン弾き‥祖国を持たずにただ「民族の伝統)だけを支えにして、世界各地に散在して暮らしていたユダヤ民族を象徴する言葉でした。
 その心の支えがが崩れたとき‥それはこれから始まるユダヤ人農民の苦難と悲劇でもあったのです。



 


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