映画と音楽そして旅

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(シネマ雑記帳) (71) 「野性のエルザ」

2006-02-24 00:08:07 | 映画
 ケニヤの狩猟監視官アンダーソン夫妻の自伝を原作にした映画です。人に危害を加えたため止むを得ず射殺されたライオンの子供を、愛情を持って育て上げ自然に戻すことに、成功するまでの苦闘と感動の物語でした。
 大陸の雄大な自然風景の中で悠々と生きる野生動物達の群れが、66年度アカデミー音楽賞を得たオープニング・テーマにのって映し出されます。
 人間に飼育されて食べるのに何の苦労もない環境から、弱肉強食の凄惨な生存競争に生き抜くため、自然環境に慣れさせる訓練もなかなか都合よく運びません。獲物を見つけても逆に逃げ出したり、自活して行けるようにわざと原野に取り残しても,獲物もとれずに栄養失調になってキャンプに戻ってきたり‥
 でも夫妻のたゆまぬ努力でエルザは野性に目覚めていきます。そしていつの間にか3匹の子持ちになったエルザと夫妻の再会‥これはほんとに感動のシーンでした。
 一度人間を襲ったライオンは再び人を襲うと云われます。エルザの母親も人食いライオンとして再発防止のために射殺されました。でもエルザたちは何も知らず純粋な気持ちで、アンダーソン夫妻になつきます。野性に帰ってからのエルザと、夫妻の交流はその後も続きます。
 野性動物としての本能や特徴を失うことなく、人間と動物が共生出来ればそれは素晴らしいことだと思います。アフリカ大陸と云う雄大な大自然は、人間も動物も合わせて抱擁するだけの豊かさとおおらかさをを持っています。
 
 最近はあちこちで野性動物と人間とのトラブルが続発しています。でもそれは動物が悪いのではなく、乱開発などで動物の住処を奪って仕舞った人間の方に責任があります。でも一度は人間に近い食生活を覚えた動物は、二度と野性に戻ることはなく同じ事を繰り返すことでしょう。
 花火や空砲を撃って追い払ったり、人間が動物よけの「ネット」の中で作業をしたり、こんな消極的な防護方法しかないと云われます。環境を破壊した人間と野生動物との紛争は、これからも果てしなく続いていくのでしょうか。
 あの豊かな大自然の中でのびのびと生きる、大陸の野生の世界を垣間見るにつけて、せせこましくて人間本位のケチくさい我が国の自然環境に生きる動物達が、なにか可哀相になりました。
 実は私もごく少しばかりの菜園がありますので、仕方なくネットを張ってその中で作業をしますが、動物達から見るとそれはきわめて滑稽な漫画みたいな風景‥かも判りません。
 「環境破壊」‥これは「戦争」と共に人類が犯した最大の愚行の一つですが、でもよく反省してみれば私たちは遠い昔に自ら蒔いたそのツケを、今になって払わせられたいるのです。
 一度壊した自然環境や生体系を復元することは、大変難しい問題ですからこの「いたちごっこ」は、これからも限りなく続くことでしょう。