【ユーザー】ソニーは、ソニーおよび日本国内の特定の子会社(国内ソニーグループ)の人事・経理業務の一部を、日本IBMにアウトソーシングすることを決定。ソニーは、全世界的に収益力強化のための事業構造改革とビジネスプロセスの最適化に取り組んでいる。今回の人事・経理業務のアウトソーシングもその一環であり、日本IBMとの強力なパートナーシップのもと、さらなる業務の効率性を追求し、変革を加速していく。(日本IBM:2010年1月15日発表)
【コメント】アウトソーシングというと、ホスト機とかサーバーの外部委託を思い浮かべるが、業務そのものも同時にアウトソーシングするという新しい試みが、わが国においても定着しようとしている。ちょっと考えると、業務のアウトソーシングというと多くの企業は躊躇するのではなかろうか。社内で行われている業務は、社外秘の事項が多く、とても外部の人間に担当させるわけにはいかないと、考えるのが普通だろう。しかし、良く考えて見ると、社外秘の部分を切り離せさえすれば、後はルーチンワークであるので、これなら外部委託しても問題はない。つまり、外部秘の業務とルーチンワークの業務を切り離せるか否かにかかって来る。
今回、日本IBMがソニーの業務を含むアウトソーシングを受注したわけであるが、日本IBM自体がユーザーとして自社業務を中国などにアウトソーシングしているので、説得力がある。ソニーも今回、日本IBM自体がユーザーとして業務アウトソーシングの経験企業であることを、見込んでの委託であろうことが推測できる。セキュリティその他の対策が十分であれば、ハードのアウトソーシングよりも効果は大きい。そもそも、社内業務の多くはルーチンワークが含まれており、この部分は基本的に外部要員でもこなせる。今後、各企業ではこの点を十分に検討しないと、企業間格差が生まれる新たな要因となることが十分に考えられる。
今回のアウトソーシングにあたり、現在主として国内ソニーグループ向けに人事 サービス、業務渡航および保険事業を行っているソニー・ヒューマンキャピタルの人事サービス事業の一部を会社分割の方法により分社の上、ソニー、日本IBMおよびマンパワー・ジャパンの3社で合弁会社を設立することに合意した。このことも、業務アウトソーシングでは重要な点である。つまり、しっかりとした受け皿をつくって、業務アウトソーシングをすることによって、トラブルを事前に食い止めることができる。単なる丸投げ的発想では成功は覚束ないであろう。
日本IBMは、この合弁会社を国内拠点、中国・大連のIBMグローバル・デリバリー・センターを海外拠点として、国内ソニーグループ向け人事・経理業務サービスの提供を行っていくことにしている。中国は現在、世界の製造工場として脚光を浴びているが、今後は、インドと同様にサービスのアウトソーシング事業など、ソフトサービス事業の受託業でも注目されることが十分に予想されよう。(ESN)