【ユーザー】みずほ情報総研とSAPジャパンは、みずほ銀行における資産・予算の管理システムを、SAP ERPを利用して再構築し08年4月から本稼働させた。これにより、みずほ銀行は同行本部および全国で約500カ所に上る拠点の物件費、動不動産・ソフトウエア資産およびその予算や支払いなどの情報を共通のシステムで管理できるようになった。業務プロセスの再構築に当たっては、みずほファイナンシャルグループのIT戦略会社であるみずほ情報総研が、銀行経理業務に特化した業界初のテンプレートである「金融業向け会計テンプレート for SAP ERP」を活用してシステム構築を行った。みずほ銀行では02年からSAP R/3を採用し、02年に固定資産管理システムを、03年には単体決算システムを導入。07年にSAP ERP6.0へのアップグレードを行ったのを機会に、同行本部および全拠点に資産・予算管理システムを導入した。 (08年11月18日発表)
【コメント】ERPソフトは、もともと製造業で使われてきた生産管理手法の一つMRP(資材所要量計画)をベースとして適用範囲を拡大して生まれてきたという背景があるため、これまで製造業において導入事例が多かった。つまり、1970年代に工場内の組立製造業で資材部門の部品展開にMRPが使用されたわけであるが、1980年代になると工場内から企業内へと適用範囲が拡大し、工場内の生産能力計画、物流計画なども含んだERPⅡが普及し始めた。さらに1990年代に入ると、企業内から企業間へと広がり、受注、出荷、財務、会計など企業内経営資源のほとんどを含むようなり、ERPとして確立されたわけである。
製造業は、物流システムも同時に構築するケースも多く、これはSCM(サプライ・チェーン・マネジメント)へと発展を遂げていった。また、小売システムはCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)へと向かい、今話題のセールスフォース・ドットコムなどのベンダーを生むことになる。つまり、ERPは企業システムのベースをなす基幹システムとして、今後ますますその重要性を増してこよう。これまでのERPはパッケージソフトとして商品化されてきたが、これからはSOA(サービス・オリエンテッド・アーキテクチャー)を加味した、より柔軟なソフトウエア構築が可能なように変貌を遂げようとしている。
ERPソフトの導入は当初、システム構築期間の短縮やコスト低減にその価値があるもと考えられていたが、実際には全社システム(グループ企業を含む)の標準化に大いに威力があることが、認識され始めてきた。つまり、ERPソフトに合わせて業務自体を変えることにより、全社(全グループ企業)共通のシステムの構築が可能になり、全社事務処理の効率向上に大いに効果を挙げることができることが分かってきたのである。これはトップダウン方式で行うことにより効果が得られるもので、これによりCIO(チーフ・インフォメーション・オフィサー)的人材が欠かせなくなってきている。
今回、みずほ銀行でのERPソフト「SAP R/3」の導入は、これから本格化する金融機関でのERP導入事例の一つという意味と、ERPを使った全社標準システムの構築といういう両面において、評価される導入事例となっている。(ERP)