明石から連帯保証人と、その友人である同年代の女性、家主に私と営業所から1名が立会いのもとで、いよいよ部屋の扉を開けることに。異常なまでの緊張感が走りました。連帯保証人と、その友人は『ほんま、いややわ~。大事なかったらええけど』家主は不安そうな表情で『開けて下さい。』そういいながら私に鍵を渡すので、それを受け取り営業所の社員と2人、鍵を差し込みました。ガチャっと施錠を解く音とともにお互いに顔を見合わせましたが私は『ここから部屋の中に先に入って戴くのは保証人さんになりますので。』そう言うと『え?ウチが?』困った表情の保証人に対し『私達は管理会社なので』とまずは賃貸借契約の当事者である責務を伝えて中に入ってもらった。部屋の中は薄暗く、妙にドンよりしている空気が漂っていた。『ウチも一緒にええかな?』保証人の友人が困った顔さていた保証人が気の毒に思ったのか声をかけ2人で部屋の中の中へと入って行った。家主と私達管理会社な2人は玄関先から離れ目の前の駐車場で待機したが待つことはなく部屋の中の中から『死んでる~!!』あわてながら保証人の友人が部屋から出てきた。『お風呂場で亡くなってる!』それを聞き営業所の社員と2人で部屋の中へ。玄関から左手に浴槽がある。その扉の前で茫然と立ち尽くす保証人。私達も中の様子を見ると浴槽の中で青白い顔をし裸のまま眠ったように亡くなっている老人の姿をまのあたりにしたのです。すぐさま警察へ連絡。パトカーと救急車が、ものの数分でやってきました。遺体は救急車に運ばれ私達全員、その場で警察から事情聴取を受けました。約1時間ほどで終わったあと『家賃は、もういりません。御香典代わりです。』家主から、そう言われた連帯保証人はそのまま、御礼を言って明石へ帰って行きました。(え?ここは甘えたらアカンやろ?)そう心に思いながら車に乗り込もうとする保証人に『アカンでしょ!家主さん、凄い迷惑かけられて家賃もいりませんって、貴方、責任とらな!』私は思わず保証人にそう言うと『わかってます。気持ちの整理をして来週、私から、お宅に連絡しますから今日は一旦、これで帰らせて下さい。』私はまだ納得がいかない表情をしていると家主が『いいんです。主人にも話しておくので後、部屋を綺麗にしておいて新しく募集して下さい、家賃は半分くらいになるのかな?』穏やかに話す家主さんに営業所の社員が『そうですね。半額くらいなら入居してくれる人はいますから頑張ってみます。』その言葉に安心したのか家主さんは『まずは亡くなった、おじいちゃんの供養のつもりやから管理会社さんに任せます。』この日はこれで解散となり、その翌週、なんと老人の長女と名のる女性から私に連絡がありました。
家主へ連絡すると奥さんが出て私は1階101号室の富岡様(仮名)の状況を説明すると『あ~、あの、おじいちゃんね。最近、見かけへんけど?』家主はハイツの近くに住んでいるので時々、物件の様子を見に行ってるらしい。『自転車、あるでしょ?で、あの、おじいちゃんに何か?』家賃が3ヶ月滞納しているが全く連絡が取れないので安否確認で立会いをお願いしたのです。勿論、連帯保証人も立会いに来る事を告げると家主も『実はね~、私も心配しててん。日時はお宅らにお任せするから。』家主から快諾をもらい明石の連帯保証人と日時を調整しました。
連帯保証人の女性は60際を超え年金暮らし、自分の生活で精いっぱい。家賃の請求は後回しに女性と滞納している老人との関係について私は聞いてみた。『なんで他人やのに連帯保証したんですか?』穏やかに聞いてみると『あの人と知り合った当時は、そら羽振りも良かったみたいで・・よう何やかやと買ってくれてはプレゼントしてもろうてん・・確か娘さんが消防士の人と結婚して兵庫県のどこかに今も住んでると思うけどなぁ・・私は今の場所で美容室やってたけど奥さん、子供さんおって・・でも離婚してからは一人暮らしするから保証人なってくれ言うて・・絶対に迷惑かけへん言うから・・』女性も気持ちの高ぶりが治まりポツリポツリと話をし始めた。私は相槌を打ちながら質問を挟んだり共鳴したりして相手の話の意欲をそがないように注意深く聞いた。『娘さん、おるんですか・・消防士?どこの消防署です??』何気なく聞くと『いや~・・わからん。けど兵庫県のどっかやろうと思うよ。』入居審査時の書類を確認しながら『娘さんの名前・・あらへんのです。』私は書類を1つ1つ見てみた印鑑証明・住民票・入居申込書に予め家主から預かっている賃貸借契約書・・(無い。)『連帯保証人である貴方にしか頼るとこありませんねん。本人さん耳遠いし・・御高齢やから。もう何日も自宅に行って手紙も入れたんですけど反応ありません。遠いとこ、すみませんが安否確認で部屋の様子を見に行きたいんで、こちらに来てくれませんか?』そう願い出るも『え?ウチ、足も悪いし・・しんどいわ~』少し間があいてから『そんなん勝手に、お宅らが行ってしはったらよろしいやん。』無責任な言葉が返ってきた。『連帯保証人でしょ?家主さんも迷惑かけられてるんです・・もし・・もしですよ部屋で亡くなられてたら家主さんが一番の迷惑です。連帯保証人である貴方も迷惑でしょう・・でも責務はあります。家主も万一の場合、亡くなられた部屋は家賃を大きく下げないといけません。貴方だけが迷惑かけられてるワケではありませんよ。』そういうと『わかりました。そちらに伺います。友達にも来てもらうので2~3日したら、また御連絡下さい。』私は静かに受話器を置いて、(ホンマ・・部屋で亡くなってるかも知れん)嫌な予感が脳裏を横切った。これまで2名・・部屋での死亡経験をしている・・何となく、何となくだが嫌な何とも後味がする電話だったのです。そう思うとすぐに家主へ連絡をしました。部屋の鍵開錠の立ち合いと鍵を預かることでした。
老人の入居する家賃が引落されず、自宅へ訪問すると老人の自転車は置いてあった。耳が遠いためインターフォンは、その役割をなしえないので裏側に廻るが雨戸は締め切ったままで中の様子は一切、わからない。ひとまず訪問したことを知らせるため予め作成しておいた手紙をドアの郵便受けへ投函した。内容は以前の訪問時に雑談したことを交え事情があるのであれば相談に応じるから担当店舗へ出向いて欲しいと記載しておいた。しかし2~3日経っても担当店舗へ出向くことなく私に手紙すらない・・これまで、これに似た事情があった場合、手紙で入居者から連絡がもらえてたのです。話は少しそれますが数年前、家賃保証会社の強引な取り立てが問題化してましたが私は、節度とモラルを守り入居者の気持ちや事情を考慮した津対応を心掛けているので、いわゆる損金というものは500件中 1~3名に治まっている。この老人に対しては連絡不可能と判断し兵庫県明石市の連帯保証人へ電話連絡した。しかし・・・『私も・・もう美容院を閉めて年金でしか生活していない。国民年金なので家賃の肩代わりなんて無理やわ!!裁判でもなんでもしてくれていいから!!』と全く取り合ってもらえず感情のみを、ぶつけてくる。我慢強く話を聞き、こちらの都合は殆ど言わず連帯保証人の話に耳を傾けていたのです。それは、とにかく電話を切られないように切られないように・・最悪は明石まで往訪しなければ・・そうなると効率が悪くなるので、まずは電話功勢をかけました。
とにかく家賃管理は重労働で時間制限もなく毎月500名ほどの滞納者管理をしていました。消費者金融には法律で督促の規制もあり大手は訪問など今では殆どしないでしょう。家賃督促は本人の自宅・勤務先・連帯保証人の勤務先・自宅・・・訪問に電話。夜9過ぎても全く無関係。何とか、このモラルの良くない状態を変えようと私は必至で仕事をしていました。そんな、中で耳の遠い老人の一人暮らしの滞納者と折衝したのです。何度も何度も訪問し昼夜を問わず行って漸く御本人と会うことが出来ました。ドアを開けた老人は管理会社とわかると、いきなり『家賃下げろ!駐車場代は払わない!!』かたくなな、おじいさんでした。家賃については営業店から家主に聞いてみるが下げるか否かは家主次第であること。駐車場は契約が継続してる限り支払いしないといけないので契約解約を営業店に行って頂くよう伝えると何とか納得してくれたのです。家賃を滞納すると連帯保証人に迷惑がかかることを警告すると『もう何の音沙汰もないし、ワシとは関係なくなった人やから連絡せんとってくれ』と言うのです。連帯保証人は兵庫県明石市で美容室を営んでいる女性でした。年齢も還暦を超え現在も営んでいるかどうか・・・その連帯保証人の事から老人は昔話をし始めたのです。『ワシも今では、こんな姿になってしもうたけど若いころ・・そら羽振りは良かったんや。N証券の歩合セールスマンで毎月の給料は普通のサラリーマンの2倍~3倍・・時には札束横にしたら立った時もある。東京におった時は銀座なんか毎日通ってたもんや』若かりし頃の自慢話・・老人は一人暮らしの孤独感もあったのであろう。耳が遠いのもあってたぶん、話し相手もいなかったのでしょう・・延々と昔話を聞かされた私は正直、辟易していたのですが結局1時間・・話を聞いてから『お身内は?』本人が、このハイツを契約した当時の入居申込書には身内の記載がなく、それとなく聞くと『娘が一人おるけど、何十年と会ってない・・』少し寂しげに目を伏せながら『道楽なワシは離婚して、そこから会ってない。そやから、ここ入る時に全く身内とちゃう人に連帯保証人になってもらった』入居申込書には従妹とある。私が勤める管理会社は入居申し込みを営業店から受ける時、必ず身内を連帯保証人にすることがルールである。『従妹では?』そう返すと『営業の人が"従妹"にしといてくださいって言うから、そうしたんや。その女性はワシが神戸で働いてた時の知り合いや』どうやら浮気相手??であったようで、この女性との関係が奥さんに知れることで離婚・・こんなストーリーが私の頭の中で駆け巡ったのです。私が延々と話を聞いたことで少し満足したのか『これからは、ちゃんと払う。駐車場の契約も解除しに行くよ。ホンマ、迷惑かけたな。』そう笑顔で話され今回の滞納分2か月分は年金が入り次第に支払うとの約束をしたのです。それから数か月・・滞納がなかったのですが、その翌年、冬も終わりを告げようとした頃・・再び家賃が引落できませんでした。