深キ眠リニ現ヲミル

放浪の凡人、中庸の雑記です。
SSなど綴る事アリ。

読書感想1

2006年05月26日 | 感想
最近読んだ本の感想。

○乙一『きみにしかきこえない』角川スニーカー文庫

・calling you
 これが三本の中で一番好きだったりする。思わず涙がこみ上げてくるのを必死で抑えた事は、ここだけの話である。何度でも読んでみたい作品である。

・傷/kids
 少年二人の物語。少年たちのこころの触れ合い。そして、汚い世界の中で生きていく少年たち、純粋な少年たちは傷を抱えていた。どんな身体の傷よりも深い心の傷、今にも消えてしまいそうな時二人は――。

・華歌

 これは、やられたと思った作品。もう一度読み返してしまうほど。
二回目はやっぱり印象違うなぁ。ああ、そうか成る程。

○梶井基次郎『檸檬・冬の日』岩波文庫

・檸檬
 正直よくわからなかった。そのうちわかるかな。感じる、かな。そんな風に思って今回はこのくらいで。

・冬の蝿
 これは結構好き。太陽を憎む男の話と、主人公と蝿の別に特別でもない関係がまた、繋がった時言い知れぬ感覚に襲われる。率直にすごいなこの人は、と思った。

・ある心の風景
 一気に読み通さず間をおいて読んだので、まだまだわからない所が多かった。
「みること。それがすべてなのだ。自分の魂またはその一部が何かに乗り移るということなのだ」(←ニュアンスだけ)という言葉が印象的。

・筧の話
 結構短い作品。「ある心の風景」に続けて読むとなんだか分かった気がする。一瞬の美しさ。と現実という絶望。短いながらも梶井さんの思っている事が凝縮されている気がする。

と、今日はこのくらいで。また今度。

晴れ/雨

2006年05月25日 | 日記
今日は酷い目にあった。朝はあんなにいい天気だったのに、夜は雨って…。
おかげでびしょ濡れ。困ったもんだ。傘を買おうと行ったコンビニは長蛇の列。
異様な光景でした。

あの彼方へ

2006年05月19日 | 小説/SS
 彼はもう何度も、この古びたコンクリートの舞台に上がった。ところどころひびの入ったその舞台はあの彼方へ続いていた。
 一歩前に進むだけで、彼はあの彼方へ行ける。今日こそは、進むつもりだった。こんな所に留まっていられない。それは決して絶望ではなく、希望すら抱いた思いだった。でも、どうしてか、彼の目からは決まって涙が出てしまう。その一歩はもう決して引き返すことの出来ない一歩。たくさんの柵が彼にまとわりついていた。それはお皿について、なかなか落ちることを知らない油のようにベタベタと彼のあちこちにくっついていた。それが、彼の足に強い摩擦力を与えた。引っ掛かりの少ない木のサンダルが、まるで強靭なスパイクのようである。
 大きく息を吸う。息を吐く――震えている。腹の底も、喉も、唇も。どうしてか、彼は自問する。唇は段々かさかさに乾いてくる。
「お前が自分でいかないなら、俺が手伝ってやるよ」
 後ろにいた男がその存在を突然露にして、無表情に彼を見据える。その目からには、怒りも、哀れみも、恐怖も、軽蔑も映っていなかった。ただ無機質な表情。舞台の最前線に立つ彼は、急に恐怖が芽生えた。思わず後ずさる。
「どうしたんだ。行きたくないのか」
 今度、後ろの男は気味の悪い微笑を浮かべた。口角が左右に急に引っ張られ、口が裂けているようにも見える。彼は、徐々に怯える男に近づいた。

「ほうら」
 ただ、遊戯を楽しむ子供のような笑いをたたえていた男は、不意に恐怖の芽生えた男の背中を押す。
 ―――――!!!
 声にならない悲鳴が木霊する。しかし、悲鳴はどこまでの世界に届いたであろうか。ほとんど誰もいない、この空間だけなのだろうか。それとも少しは彼の身体に染み付いていた油の所有者に届いたであろうか。彼の最後の言葉は。

「大げさ過ぎるんだよ」
 突き落とした男はくっく、と笑った。
「ただのバンジージャンプだろ」
 
 あの彼方へ。彼は何度も繰り返し呟いたその世界を、垣間見ることができたろうか。ただ、言葉を失ってぶらさっがっている男は、見開いた目をやがて穏やかな色に戻して、ふっと息を吐いた。
――――――――――――――――
誰しも「死」というものを考えたことがあるだろう。
私は重い病気に苦しんだ事もないし、大きな死というものを知っているか、と言われれば否であろう。しかし、そんな私でも、一瞬なりともそういった問題を考えてしまう時がある。真夜中の街道は、店の光も殆どなくて真っ暗だった。でも、何故かとても落ち着いた。静かな闇だった。この中に私はふっと消えてしまうのだろうか、なんてことを考えながら、だーれもいない夜道を歩いていました。
 難しい、三人称ももっとかかきゃならんな。
 

珍しく

2006年05月18日 | 伝言
 ふたりの少女をアップロードしました。いやー4は苦労した。元原稿があったくせに、だいぶ書き直してしまったからな。この辺からだんだんプロットがあって、続き物ぽくなってきたはず。アップする前に序章と1あたりは、そうである必然性がないことに気づいた。あれらは短文に繰り込んで、新しく書き直せたらと思います。
 なんで4のアップにこれほどかかったのかと、考えたら、時間のせいだけじゃなくて、それまでのと比べて長いことですかね。それまでが、だいぶ短かったような気がする。
 1項ごとにどれくらいの分量が適切かまだ図りかねます。

ひなたの日常②

2006年05月17日 | 小説/SS
五月十七日。曇天。
 最近天気が悪いことが多くて、ぼくはいつも家の中でゴロゴロしていた。
 コウスケは雨の日は早く帰ってくる。ぼくは折角だから、たまには遊んでやるかとやつの部屋に行くと珍しく勉強していた。まだ何もしてないのに、邪魔すんなよ、と一言。
 ぼくは、雨が降ったからあいつが勉強しているんじゃなくて、あいつが勉強しているから雨が降っているんだろう、という事をひかるの友達が言っていた事を思い出した。そういえば、今日ひかるはその友達とどっか行ってるんだった。
 
 このまえ、久しぶりに晴れた日にコウスケを伴って、ぼくはひかるとひかるの友達が住んでいる隣の家に行った。キョウコというのが、ひかるの友達の名前だった。年齢はコウスケの一つ上だったけれども、殆どあいつとは友達のようなものだった。
 ぼくもコウスケも期待していたのはキョウコの作るクッキーだった。――全くあいつも食いしん坊だな。でも、キョウコに頼まれてもいないのに手伝っていたのは意外だったな。
 キョウコのクッキーはいつものようにおいしかった。ひかるも以前ぼくが分けてやったお気に入りのカンズメの時より、全然おいしそうな顔をしている。こりゃ、太るはずだ。ぼくは、なんとなくひかるがこんなに丸くなった理由が分かった気がした。こんなに上手いものしょっちゅう食べてたら、そりゃ……。ぼくの考えていたことをなんとなく分かっていたらしく、ひかるは鋭い目で、ぼくの心中をえぐりとった。ぼくは無意識にクッキーの入った皿をひかるの方に押しやっていた。
 余計にひかるは怒り狂った。キョウコはそんなぼくらを見て笑う。それをみたコウスケもいつも見せないような笑顔で笑う。
 まったく仲がいいやつらだよな、って早くぼくを助けろって。こっちは全然笑っていられる状況じゃないんだよ。
 ひかるがその爪をようやく鞘に収めたのは梟でも鳴きだしそうな夜になってからだった。こっちは泣き出しそうさ。コウスケとキョウコはそんなのお構いなしにしゃべり続けている。
「水曜って暇だっけ」
「え、なんでだよ」
「映画、映画、これ、いってみない」
 キョウコは興奮気味にチラシを指差す。映画って、確かあの暗いとこにある変なテレビみたいなのだったかな。「ああ、まぁ……ってキョウコ、テストは?」
「ん?」
「中間だろ?」
「あたしは別に大丈夫だけど。焦るようなもんでもないでしょ」
「ああ、そうだな……」
 ひかるの、邪魔だよ的な体当たりを受けて、ぼくは転がった。ぼくの目には全然大丈夫そうではない。コウスケのやつ毎日テレビと漫画ばっかりみて、勉強なんてしてないだろ。
「ほんとー、全然大丈夫そうにみえないけど」
 キョウコもぼくと同じような考えをしていた。
「だいじょうぶだって」
 キョウコは目を細めて疑わしそうに、コウスケの目を覗き込んだ。ああ、馬鹿。明らかに大丈夫じゃない目をしてどうすんだ。
 結局キョウコの眼力にその心中を看破されたコウスケは肩をすくめて、少し顔を紅潮させながら、正直にその切羽詰った状況を語った。
 まったく、あいつもぼくも揃いも揃ってこの家の連中には弱いらしい。

 そんなこんなで、ぼくたちは置いていかれたわけだ。
 ぼくは眠るのも疲れて廊下をぶらぶらしていると、玄関の方で元気な声がした。キョウコとひかるだった。どうやら、映画には行かずコウスケに勉強を教えにきたみたいだった。
 まったく人間はよくわからない。

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 ひなた君第二弾。書くのは決まって雨とか曇り。どうしてだろう。
私信
 最近は少し活字を読もう月間ということで、いろいろな活字に挑戦中。
乙一から、梶井からニーチェまで。なんと統一性のない……。
「きみにしかきこえない Calling You」は泣きそうだった。活字で泣きそうに
なったのは初めてだなぁ。多分酔っていたからだと思う。
「善悪の彼岸」は難しい。哲学関係にしてはわかり易いような。いや、わかりにくい。そう断言しよう。かつてカントの「純粋理性批判」よりかは読みやすいような。読みにくいような。はたまた読みやすく見えて、読みにくくないこともなかったかもしれない。
 今年も激動。以上。



東大

2006年05月13日 | 日記
東大に試験を受けに行きました。そしたら、左のようなトイレの落書きが。
いやーびっくり。すごい落書きだ。
東大らしいというかなんというか。

思考の限界

2006年05月12日 | 深キ眠リニ現ヲミル(自己哲学)

思考の限界を考えてみた。

 たとえば思考に限界はないとする人は、確かに主観的には思考の限界はないとしても客観的にみれば思考の限界の余地がないとは言い切れないだろう。仮に限界があった場合に彼はそれを証明できない。彼はその限界に制限されているのだから、その認識を超えた存在を証明はできない。

 逆に思考の限界が存在していると考える人間の場合は、主観的に限界が存在している。そのものは既に限界を決定してしまっているのだから、神が隣にいない以上その主観的思考限界と客観的思考限界が同一、つまり思考が全てを支配し得る(思考限界は存在しない)、といえない。それが真か偽かは別として。

 客観的に思考に限界がなかったとしても、限界は存在する。限界は拡張することによって、その全てに近づいていくけれども、全てが何であるかを知りえない人間にとって、その拡張によって全てに到達しえたとしてもそれは全てではない。その全てを知りえるのは神以外のなにものでもない。

 ついに私は自分の書いていることすら、自分の支配の範疇にない状態となった。自分の思考をこうして言葉にかえるということは、多くの錯誤をもたらす。人間はひとつの言葉に、自分なりの解釈をみつけることでその意味を拡張したり、変節させたりしてきた。言葉は多くの誤解を生む。それは言葉の多義性や、曖昧さにょる。この人間の特殊な思考・意思伝達手段は非常に不完全である。この言葉が人間の思考をある意味で曇らせている気がしてならない。しかし、逆にこの言葉あるからこそここにこういう文章を残せるし、一定の思考が可能であるのだが。

 今日出会ったインターネット上の書評は遥かに私の思考範囲を超えていた。人は思った以上に頭が良くなれるらしいということを思った。しかし、やはり人間の枷はある意味で、その基幹である言葉にあるのだということを強く感じた。

 思考の限界はそれが言語によっている限り一定の限界を持っているのではないかというのが、結論であるが、これが真であるかは全くもって私の思考の範囲外にあるのかもしれない。しかし、考えることを放棄したくはない。


とにかく、今日は纏まらなかったが、ただ思うままに自分の考えを書いた。後の自分はこれを見てなんと思うか。

いやはや

2006年05月08日 | 伝言
また、あたらしい中篇が始まってしまった。ああ、二人の少女も書きたいな。むしろそっちのが書いてて落ち着くのだが……ダメだな私。「その心の旅路」どうなるかな。長くなりすぎてもやなんだよな。第六回くらいで終わらせたいのだが、絶対収まりきらない自信あり。
今日も雨?あっそ、憂鬱よね。……ん?そんなことないって?

ひなたの日常①

2006年05月08日 | 小説/SS
五月七日少雨。
 今日は一日中曇っていたから殆ど外に出かけなかった。お昼頃まで台所の床に転がっていた。午後一番に、僕がまだねぼろけ眼でご飯を食べていると、ひかるが来た。僕は一瞥して、また太ったんじゃないか?とストレートに言った。すると、ひかるはそのでかい図体を僕の背中の上に乗っけて、そうかしら、と怒気を込めて言った。
 ひかるは思いのほか怒っていた。一体何なのだろうか。僕はひかるがいる間中ずっと考えていた。でも、いつものように挨拶代わりにいっただけだ。別にいつもと変りはないのに。
 ひかるはいつものように僕の特等席であるはずのソファーに、自分のお気に入りのぬいぐるみ達を並べて、その中でうたたねしていた。僕はそれにかかわらず、ただただ、伸びをしてはあちこち廊下の方を歩き回った。
 雨がざぁざぁと降っていた。今日はいつもみたいにぽかぽかしてはいなかったけれど、僕はいつものように、そこに寝転んだ。ひかるがうちに来るようになってからは、しょっちゅう僕は廊下のVIP席に居座っていた。今日はとても冷える床にうずくまって、僕は馬鹿らしく思ったけれど、そこにいた。やっぱり落ち着く。
 夕方になって雨が少し止んでから、ひかるがやってきた。ひかるは何にも言わないで僕の近くに座った。尻尾が触れて、僕はそっちをみた。ひかるの尻尾にピンク色のリボンが括ってあった。暗い中でも僕には良く見えた。
 僕たちは台所に戻ると、そこは凄く暖かかった。ひかるはスリッパの箱の前で座り込んだ。ひなたはいつもそうやって気が利かないんだから、とひかるは言う。僕は尻尾のリボンを見てから、もうちょっとスマートになったら似合うんじゃない、とぼそりといった。ひかるはその翡翠色の目を細めて僕を睨み付けた。冗談だって……。前に同じような事を言って、背中を引っかかれた事を思い出して、僕は咄嗟に言った。
 夕ご飯を食べてから、ひかるは帰っていった。コウスケも帰ってきた。濡れた学ランを僕に投げつけて、いつものようにからかう。
……いい加減大人になってくれよな。そう思いながら、コウスケの学ランの中で今日も寝た。
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 ちょいとほのぼの系に挑戦。難しいなぁ。今度は晴れた日に書きたいなぁ。
あああああ、そうそう、ひなた君ですが、別に私が飼っている猫とかではありません。ただなんとなく浮かんだだけです。

 
 

久々に

2006年05月05日 | 伝言
 HPをばいじりました。そして、なんとなく書いていたSSをアップしました。もちろんブログに。「ふたりの少女」ではなく適当に書いたやつを。