大貫妙子がRCAに移籍してからリリースされた、70年代末から80年代はじめにかけてのアルバムを実は殆ど聴いていない。
当時の僕はアメリカの音楽にどっぷりで、
ヨーロピアン・テイストと言われていた当時の彼女のレコードには触手が伸びなかった。
いくつかの印象的な曲は当時からももちろん知ってはいたが、
特に『Mignonne』から『Aventure』あたりまではちゃんと聴いたことがなかった。
今回RCA時代のアルバムが紙ジャケ、リマスタリングでリ・イシューされたのでそろそろ聴いてみようかな、と思った。
もう、あの時代を敷衍して眺められるし、
今の彼女の確固たる位置を思えばあの頃の曲を聴いてみるのは興味深いことだと思ったから。
78年のこの作品は、クラウン時代から一歩踏み出して新境地を開こうと
プロデューサーに小倉エージを迎えて制作されているが、オーバー・プロデュースというか、
ヒットを狙って彼女の個性を押さえ込んでいるような印象がある。
特にレコードで言うA面の瀬尾一三のアレンジは、ちょっと歌謡曲然としていて、僕は好きではない。
彼女の方向性が定まっていないという不安定さが漂っている。
「突然の贈りもの」、「海と少年」といった名曲が入っているのが聴きどころではあるけれど。
78年という絶頂の歌謡曲とニューミュージックの台頭という時代にあって、
狭間で立ち位置を見つけられないもどかしさがある。
そういった彼女の苦しい心情の吐露が興味深いライナー・ノートになっている。
面白いことにこのライナーは続き物になっており、
次作『Romantique』で続きが読めるという仕掛けになっている。
うまい商売だなあ、と思いつつ続き読みたさに次作も聴くことになる。