ここではないどこかへ -Anywhere But Here-

音楽・本・映画・サッカーなど興味の趣くままに書いていきます。

笑い犬/西村健

2007-02-01 21:54:34 | 
これはやはり一種のピカレスク小説の範疇に入るのであろうか。
刑務所の中の生活がどういうものかは知る由もないし、あまり知りたいとも思わない。
ましてやできることならば厄介にはなりたくないところでもある。

この物語はそんな刑務所の中の様子がまるで、
筆者が実際に経験したのではないかと思われるほど綿密に描かれているのだ。
塀の中にもある種の慣習めいたものがあったり、
規律の中にも複雑な人間関係がつむぎだされていたりするし、
外からはうかがい知れないさまざまなドラマもある。

とある都市銀行がバブル崩壊の過程で過剰な融資回収業務を行った結果、
先祖代々の土地を失った地主が自殺してしまう。
過剰な取立ては脅迫であり、それが原因で死に至らしめたとして支店長が逮捕、起訴され有罪となる。
塀に中に落ちてしまった平凡なサラリーマン芳賀の苦難の刑務所暮らしが始まる。
塀の中の興味深い生活の様子とそんな生活に順応していこうとする主人公、
彼の帰りを待つ家族の姿が丹念に描かれていく。

塀の中でのさまざまなエピソードや人間模様を描いてそれだけでも面白いし
このまま彼の出所まで行くのかと思いきや、残り数十ページを残して物語は俄然急展開するのである。

小気味良い展開で息もつかせず読ませてくれる。
事件設定にそれほど意外性はなかったが、ぐいぐいと引っ張っていくストーリー展開が爽快だった。

2/1のランニング

2007-02-01 21:02:07 | ジョギング
比較的暖かい日が続いているので、朝もそんなに苦にはならない。
走り終えたときにはじんわりと汗をかくほど。
コンスタントに走っているので調子も悪くない。
早起きはきついけどできるだけ頑張ろう。

今日の距離:3キロ

Mignonne/大貫妙子

2007-02-01 06:28:05 | 音楽
大貫妙子がRCAに移籍してからリリースされた、70年代末から80年代はじめにかけてのアルバムを実は殆ど聴いていない。
当時の僕はアメリカの音楽にどっぷりで、
ヨーロピアン・テイストと言われていた当時の彼女のレコードには触手が伸びなかった。
いくつかの印象的な曲は当時からももちろん知ってはいたが、
特に『Mignonne』から『Aventure』あたりまではちゃんと聴いたことがなかった。
今回RCA時代のアルバムが紙ジャケ、リマスタリングでリ・イシューされたのでそろそろ聴いてみようかな、と思った。
もう、あの時代を敷衍して眺められるし、
今の彼女の確固たる位置を思えばあの頃の曲を聴いてみるのは興味深いことだと思ったから。

78年のこの作品は、クラウン時代から一歩踏み出して新境地を開こうと
プロデューサーに小倉エージを迎えて制作されているが、オーバー・プロデュースというか、
ヒットを狙って彼女の個性を押さえ込んでいるような印象がある。
特にレコードで言うA面の瀬尾一三のアレンジは、ちょっと歌謡曲然としていて、僕は好きではない。
彼女の方向性が定まっていないという不安定さが漂っている。

「突然の贈りもの」、「海と少年」といった名曲が入っているのが聴きどころではあるけれど。
78年という絶頂の歌謡曲とニューミュージックの台頭という時代にあって、
狭間で立ち位置を見つけられないもどかしさがある。

そういった彼女の苦しい心情の吐露が興味深いライナー・ノートになっている。
面白いことにこのライナーは続き物になっており、
次作『Romantique』で続きが読めるという仕掛けになっている。
うまい商売だなあ、と思いつつ続き読みたさに次作も聴くことになる。