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ここではないどこかへ -Anywhere But Here-

音楽・本・映画・サッカーなど興味の趣くままに書いていきます。

ブラジル/土岐英史とサンバ・フレンズ

2007-10-15 22:29:09 | 音楽
1981年というのはフュージョンやAORのようなミドル・オブ・ザ・ロードな音楽がブームだった。
このアルバムもそうした一枚だったが、発売された当時は聴いていない。
というか、この時期に土岐英史がリーダー・アルバムを発表していたこともよく知らなかった。
タイトルどおり、このアルバムはサンバ、ボサノヴァにアプローチした作品である。
ブラジル人ミュージシャンらに松岡直也、向井滋春、和田アキラといったゲストを迎えて制作されている。

日本人のジャズミュージシャンがブラジル音楽を演奏したアルバムとしては、
渡辺貞夫のアルバムを中学時代に聴いたことがある。
でも、ナベサダがどうということではなく、ボサノヴァというのは中学生の耳にはまだよく分からない、
ちょっと退屈な作品だったように記憶している。
むしろこういった屈託のない明るいアプローチのアルバムの方が初めて聞くには良かったかもしれない。

土岐英史は日本を代表するサックス・プレイヤーとして活躍中だが、
まだ30代そこそこで録音されたこの作品からは、はつらつとしたプレイが堪能できる。
演奏をすっかり楽しんでしまっているかのようでこちらまで楽しくなってくる。
若さゆえに勢いで押し切った感じがしなくもないが、
ブラジル音楽をきちんと消化しきったが故のサウダージがほんのりと伝わってくる。






On Love/David T.Walker

2007-07-18 22:24:56 | 音楽
Phil Upchurchも好きなギタリストだが、David T.Walkerもいい。
いわゆる歌伴のギタリストとしては、私の最も好きなギタリストと言っていい。
Marvin Gaye、Quincy Jones、Boz Scaggs、Aretha Franklynなど、もう数え切れないアーティストたちのバックを務めているが、
私が最も印象に残っているのは、Marlena Shawの『Who Is This Bitch, Anyway?』だ。
ぽろろん、ぽろろんと所在なさげに奏でられるギターがこの人の魅力かもしれない。
どこか優男な雰囲気が漂っていて、このなんともプレイボーイ的な感じがたまらなくセクシーだったりする。
それがまたMarlena Shawのしっかりとしたボーカルに絡んできて、なんとも官能的な一枚だった。

さてこのアルバムはOdeレーベルから76年に出た、彼のソロ名義としては6枚目のアルバムにあたる。
Minnie Ripertonの「Lovin' You」やBacharachの「Windows Of The World」などのカヴァーなども含め、
文字通り歌うようなギターにはすんなりと身を委ねてしまえる。
白眉はゆったりと自在に奏でる「Feeling Feeling」。
ジャケットがたまらなくエッチなのもたまらない。

Shades Of Blue + Family Reunion/Lou Rawls

2007-04-26 22:01:40 | 音楽
例によってフィラデルフィア・インターナショナル・シリーズ。
今回はLou Rawls。昨年の1月に72才で亡くなった。

シカゴの出身で元々はゴスペル・シンガーとして出発したが、
R&Bからジャズまでを歌いこなすアメリカを代表する黒人ポピュラー・シンガーと言ってよいと思う。
グラミー賞も受賞している。

PIRと契約したのは75年のことで彼のキャリアの中でも脂の乗り切った時期をPIRで過ごし、数枚のアルバムを残している。
『Shades Of Blue』は80年のリリースで、『Family Reunion』は87年の作品。

『Shades Of Blue』はどちらかというとブルースっぽい作品が多い。PIRの中にあっては珍しい作風だと思う。
あるいは彼自身のルーツに迫ったのかもしれない。

『Family Reunion』は一転、華やかでコンテンポラリーなサウンドに滑らかなLouの声が溶け込む、PIR然とした作品。
時代がの音がするけれども、こちらの方が作品的にはLou Rawlsのキャラクターには合っているような気がする。






Aventure/大貫妙子

2007-04-21 05:57:57 | 音楽
このたび新譜も出た大貫妙子。
そっちも気になるところだが旧譜をもうしばらくフォロー。

この『Aventure』あたりまでがあまり聴いていない作品でこれ以降の『Cliche』からは比較的よく聴いていたと思う。

巷でヨーロッパ三部作などともてはやされていたのは、「全く違う」と本人がライナーノートに記しているとおり、
ヨーロッパテイストというよりもポップでラテン系の曲なども結構あって、
内容的にはいまひとつまとまりを欠いているという気がしないでもない。

もちろん、「愛の行方」のようなアンニュイな作品もあって、今につながる雰囲気は伺える。
坂本龍一の参加によってやはり、当時のYMOのテイストが垣間見られるところも特徴的。
「la mer,le ciel」はアルバム中最も秀逸な作品だと思う。ボッサ調は結構彼女に合っているような気がする。

何となくきっかけがつかめそうな予感のするアルバムで、今にして思うと今後の彼女につながるような作品だという感じだ。


seasons colurs 春夏撰曲集/松任谷由実

2007-04-16 22:07:16 | 音楽
最近、CDも本もレヴューを書く時間が取れずにいる。
このアルバムも買ってからしばらく経っているのだけど・・・。

ユーミンのアルバムを久しぶりに買った。
「四季」をテーマに季節ごとに集められたベスト盤である。今までありそうでなかった企画。
まずは「春夏撰曲集」が出てこの秋には秋冬盤が出るのだそう。
おそらくはユーミン自身が選曲したと思しき曲の数々は、季節に基づいて選ばれたという特殊性を抜きにしても
コアなファンを喜ばせるような、隠れたどちらかと言うと地味な曲も何曲か入っている。

「ハルジョオン・ヒメジョオン」、「潮風にちぎれて」、「夕涼み」、「晩夏(ひとりの季節)」などのような
アルバムのB面あたりにひっそりと入っていそうな小品のような作品にこそ、実はユーミンの真骨頂がある。
そういう曲たちに改めてスポットライトが当たるのは大変に嬉しい。
「夕涼み」や「降る時」などは高校時代に涙して聞いたものだ。

季節をテーマにしたということは言い換えればユーミンの作詞家としてのパーソナリティに光を当てたと言うことでもある。
季節の移ろいとともに人も風景も変わっていく。
ユーミンのラブソングの大半はこの移ろいゆくことのある種の諦観のなかで輝きを放つ。
なんとも鴨長明的だけど、そんな刹那を切り取ったユーミンの心象風景はきっと誰の心にも、
それぞれの焦点を結んだ風景となって刻まれているのではないか。
誰の胸にもある切ない思い出とともに・・・。

ユーミンのようなアーティストと同時代を歩んでこれたということは、考えてみるととても幸せなことだと思う。

Living All Alone + Prime Of My Life/Phyllis Hyman

2007-02-19 21:04:43 | 音楽
例によってフィラデルフィア・インターナショナル(PIR)。
今回はPhyllis Hymanの2in1。
ちなみに、『Living All Alone』はCDが出始めの頃に宇田川町にある頃のタワーレコードで買った記憶がある。
1986年のクレジットがあるのでかれこれ20年以上も前のCDだ。今聞くとかなり音がチープ。
そんなことを確認しようとCD棚を見たら『Prime Of My Life』のCDもあった。
ただこちらはいつ買ったのか記憶がない。

Phyllis Hymanもちょっと前に亡くなったよなあ、と思いながらバイオグラフィーを調べていたら、
95年に鬼籍に入っている。もうそんなに経ったのか、と思う。
ちなみに生年は1941年だというからほぼ私の両親の世代である。
そんなに年配だったとは生前は知らなかった。

ミッドロウで鼻にかかった彼女の歌声が昔から好きだった。
何しろうまい。派手さはないけれどもうまさや表現力は、
例えは悪いがMariah Careyなんかよりも数倍は上だと思う。

ジョギングのときにi-podで彼女の歌を聴くと勇気が湧いてくる。
何かもやもやがあっても、すーっと歌が入ってきて霧が晴れていくような
そんな広がりのある歌だと思う。
好きなシンガーだっただけに今となっては新作を聴けないのが残念だ。

Special Delivery

2007-02-17 18:50:41 | 音楽
レコード時代の古い音源のCD化というのはほぼ行き着くところまで行き着いて
今はリマスターによる二巡め、三巡めに入っている。
そして世界初CD化というのはそもそも当時からレアであった、まさに好事家向けのものとなりつつある。
まあ、それが世のコレクターにとっては楽しいところなのだろうが、とにかくこの手合いは消えるのが早い。
もともと極めて小さなマーケットなので出たかと思うとあっという間に廃盤になっていまう。
だから聴きたいときが買いどきなのではなくて、見つけたときが買い時である。
このSpecial Deliveryもそんな一枚である。

4人組のコーラスグループで女性が一人という構成は珍しいが、この紅一点のVeronica Martinが利いている。
ヒットした「Oh Let Me Know It」はすばらしいバラード。70年代のソウル・グループの良心といった感じ。
78年リリースということで全体にディスコ調の雰囲気も感じられるが、
やはりミディアムからスローな曲の方に聴き所が多い。

VIVIDから2004年に世界初CD化されているが、見かけたのでとにかく即ゲット。
しかし、日本で初めてCD化されたというのは本人たちも知らないのではないだろうか?

Showdown/村田和人

2007-02-06 22:15:44 | 音楽
この湿度の高い日本で最も乾いた音楽を届けてくれるのがこの人ではないか。
そういう意味ではセンチメンタル・シティ・ロマンスと双璧をなすかもしれない。
とにかくどのアルバムを聴いても同じ質感と清涼感がある。

村田和人がコンスタントにアルバムをリリースしていた80年代は最もお金がない頃で、
思うようにアルバムを買うことができなかった。
彼のMOONレーベル時代のアルバムが紙ジャケでリ・マスターされたので早速買ってきた。
あの頃聴けなかったものをある種敵討ちのように今買っている。
村田和人のような音楽を今やっている人は皆無に近いので、貴重でもある。

村田和人の音楽の向こうには無垢なアメリカが見える。

Romantique/大貫妙子

2007-02-03 10:23:12 | 音楽
彼女のターニングポイントになった作品がこの『Romantique』ではないだろうか。
今でこそ、大貫妙子というのはひとつのジャンルとして確立された感があるけれど、
このころの彼女は音楽業界(そう音楽そのものではなく産業としての音楽業界)に疲れていたのだろう。
ヒット作を作ることとやりたい音楽を生み出すということに折り合いをうまくつけられずにいたのだろう。
前作にはそんな迷いがあった。

そこに現れたのがこのアルバムのプロデューサーである、牧村憲一である。
彼女のパーソナリティをいち早く見抜いた彼は彼女にヨーロッパをコンセプトとした楽曲作りを進言する。
アメリカン・ポップスから出発していた彼女にとってヨーロッパを志向するということは歌い方まで変えてしまうということだった。
細い声質である彼女がシュガー・ベイブで山下達郎と伍して声を張り上げるというのはやはりどこか無理があったのだ。

かくして人気絶頂期にあったYMOの面々をバックに坂本龍一のアレンジした曲と、
加藤和彦をアレンジャーとしてムーンライダースを中心としたメンバーで構成された曲とで、
存分にヨーロッパを意識して作られたのがこのアルバムである。

今聞くとそれなりに時代がかった感じはするし、
加藤和彦のアレンジはやはりサディスティックスから抜け出していないような感じがしないでもないけど
今に続く大貫妙子の立ち位置がほぼ固まったアルバムと言っていいだろうと思う。

自分の目指すべき指標を得たことがアルバム・セールスにも繋がったのだろう。
ここから大貫妙子はワン・アンド・オンリーの地位を獲得していく。

Mignonne/大貫妙子

2007-02-01 06:28:05 | 音楽
大貫妙子がRCAに移籍してからリリースされた、70年代末から80年代はじめにかけてのアルバムを実は殆ど聴いていない。
当時の僕はアメリカの音楽にどっぷりで、
ヨーロピアン・テイストと言われていた当時の彼女のレコードには触手が伸びなかった。
いくつかの印象的な曲は当時からももちろん知ってはいたが、
特に『Mignonne』から『Aventure』あたりまではちゃんと聴いたことがなかった。
今回RCA時代のアルバムが紙ジャケ、リマスタリングでリ・イシューされたのでそろそろ聴いてみようかな、と思った。
もう、あの時代を敷衍して眺められるし、
今の彼女の確固たる位置を思えばあの頃の曲を聴いてみるのは興味深いことだと思ったから。

78年のこの作品は、クラウン時代から一歩踏み出して新境地を開こうと
プロデューサーに小倉エージを迎えて制作されているが、オーバー・プロデュースというか、
ヒットを狙って彼女の個性を押さえ込んでいるような印象がある。
特にレコードで言うA面の瀬尾一三のアレンジは、ちょっと歌謡曲然としていて、僕は好きではない。
彼女の方向性が定まっていないという不安定さが漂っている。

「突然の贈りもの」、「海と少年」といった名曲が入っているのが聴きどころではあるけれど。
78年という絶頂の歌謡曲とニューミュージックの台頭という時代にあって、
狭間で立ち位置を見つけられないもどかしさがある。

そういった彼女の苦しい心情の吐露が興味深いライナー・ノートになっている。
面白いことにこのライナーは続き物になっており、
次作『Romantique』で続きが読めるという仕掛けになっている。
うまい商売だなあ、と思いつつ続き読みたさに次作も聴くことになる。