幸せに生きる(笑顔のレシピ) & ロゴセラピー 

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「事故がなくならない理由安全対策の落とし穴」芳賀 繁著 ”目から鱗が落ちる”

2021-04-01 15:05:55 | 本の紹介
・山男が遭難する理由
ところが、このビーコン(雪崩に巻き込まれた人の居場所を知らせる)が普及するとともに、従来は危険でだれも近づかなかったような場所に登山家が入り、雪崩にあうケースが増えてきたというのだ。救助隊員たちは、遭難事故が減らないばかりか、救助活動が困難で二重遭難の危険が高い場所に行かなければならないケースが増えて困っているという。

・低タールたばこは癌を増やす
欧米では、1920年以降に生まれた男性に肺腺癌が増加しており、その要因として1960年頃から広まり出した低タールたばこの影響を指摘する研究者がいる。低タールたばこ(ニコチンも少ない)に切り替えた愛煙家は、ニコチンの吸入量を確保するため、無意識に深く吸い込んだり、短い時間間隔で吸引したり、煙を肺に長くとどめたりするらしい。結果として、かえって多量のタールその他の発がん物質を肺の奥に沈着することになり、肺腺癌のリスクを高めることになる。

・高い防波堤が津波の被害を大きくした?
かなりの人は、ここまでは津波が来ないだろうと思って逃げなかったために命を落とした。住民の判断を誤らせた一因は、立派な防波堤・防潮堤の存在である。

・シェークスピア『マクベス』
「安心は人間の最大の敵である」

・小・中学生の生存率99.8%という「釜石の奇跡」生んだ立役者である片田敏孝群馬大学教授によると、釜石で防災教育を始めようとしたとき、地元の人から「湾口防波堤もできたことだし、わざわざ来て脅かすのはやめてもらえないか」と言われたそうだ。また、宮古市田老地区でも、防波堤ができてから避難訓練の参加率が著しく低下したという。

・チリ地震(2010年)のとき、JR東日本の宮古駅のある地域でも大津波警報が発令され、避難指示が出た。駅員はマニュアルどおり駅を閉鎖して全員で高台に避難したが、他にはだれも避難してこなかった。他の地域でもほぼ同様の状態で、「JRさんは臆病だな」と笑われた社員もいたそうである。そして翌年、3月11日の大震災の後に出された大津波警報の際、宮古駅では駅利用者や居合わせた人たちを案内して再び高台の避難所に行ったところ町は大津波に襲われた。過去の「空振り」経験にもかかわらず、率先して避難をした行動は立派である。

・子守歌効果
福島原発事故などは、実際にそれほど安全ではなかったのに、住民を安心させることを優先させ、子守歌のように「安心して安心して」と繰り返すうちに、リスク管理を担う自分たちまで誤ってしまったようなものである。

・運転が下手だから事故を起こすのではない
私の妻は運転が下手だ。目が悪いので夜はよく見えないからといって運転はしないし、雨の日も傘をさした自転車の人が怖いと言ってよほどの必要性がない限りハンドルを握らない。
下手は下手なりの運転をすれば事故をおこさないということなのだ。

・1975年にイースタン航空の66便がニューヨークのケネディ空港に着陸する際、ダウンバースト(強い下降気流)にたたきつけられ墜落炎上、乗員・乗客124人中115人が死亡した。この便の前に着陸しようとした同じイースタン航空の別の便は、着陸を断念していたのだが、66便の機長は副操縦士に向かって「あいつは馬鹿だな」と発言したことがボイスレコーダに記録されている。自信は過信につながり、失敗を生むのである

・リスク・ホメオスタシス理論
「ホメオスタシス」という言葉は、本来、生理学の用語で、外部環境が変化しても生体内部の環境が一定に保たれるメカニズムを指す。
ホメオスタシスの基本的メカニズムは、「負のフィードバック」機構である。
このホメオスタシスのメカニズムがリスクにも当てはまるのではないかと考えたのがジェラルド・ワイルドである。
ワイルドの主張の中で、とくに重要な点は以下の二つである。
1) どのような活動であれ、人々がその活動から得られるであろうと期待する利益と引き換えに、自身の健康、安全、その他の価値を損ねるリスクの主観的推定値をある水準まで受容する。
2) 人々は健康・安全対策の施行に反応して行動を変えるが、その対策によって人々が自発的に引き受けるリスク量を変えたいと思わせることができない限り、行動の危険性は変化しない。
つまり、リスクをとることは利益につながるので、人々は事故や病気のリスクをある程度受け入れている。その「程度」がリスク目標水準である。
安全対策で事故が減った場合、人々はリスクが低下したと感じ、リスクを目標水準まで引き上げようとする。なぜならベネフィットが大きくなるからである。したがって、リスク目標水準を変えるような対策でない限り、いかなる安全対策も、短期的には成功するかもしれないが、長期的には事故率は元の水準に戻ってしまうと予測する。

・リスク・テイキングとエラーの関係
1) リスクの知覚
リスクの知覚のエラー、すなわち、リスクの見落としには二つの側面がある。
・リスクの発生源のことを「ハザード」と呼ぶが、ハザードを文字通り見落とす。
・物理的には対象物が見えたり聞こえたりしているのに、それがハザードとは思わない。
2) リスクの評価
  リスクの評価エラーは、実際のリスクが高いのに小さいと感じたり、リスクが小さいのに大きく感じたりすることである。高いリスクを小さく評価するほうが失敗に結びつきやすい。いわゆる「甘く見る」というミスである。
3) 意思決定
意思決定は何が正しくて何が間違いなのか判定するのは難しい。
4) リスクを回避する/テイクする行為
リスクをとるか回避する行動の途中でエラーをおかすこともある。回避する意図があったのに、技術や能力が不足していて回避できなかったら失敗に至る。リスクをとりにいって、普段ならできる行為をやりそこなったら失敗に至る。

・不安全行動は次の点で、エラーと事故とに密接な関係を持っている。
1) 意図しないエラーの確率を高める。たとえば、制限時速40kmのカーブを60kmで突っ切ろうとするとハンドル操作をミスしてカーブを曲がり切れない可能性が増える。
2) エラーが事故に結びつく確率を高める。たとえば、高所作業で安全帯をしていれば、足を踏み外しても怪我をしないで済むが、していなければ転落して労災事故になる。
3) 事故が起きたときの被害を大きくする。たとえば、オートバイのライダーがヘルメットをかぶらないで転倒すると命に関わる大怪我をするが、かぶっていれば打撲か骨折で済むかもしれない。
4) 事故防止対策を無力化する。一人がミスをしても事故に直結しないよう様々な工夫がこらされている安全手順に違反することで、せっかくの対策が無効になる。

・ルール違反を起こしやすくなる要因
1) ルールを知らない
意図的違反ではないが、ルールを知らなければルールを破っているつもりはなくても、ルールを知っている人や取締りをしている人から違反を指摘される可能性がある。
2) ルールを理解していない
なぜそうしなければならないか、なぜそうしてはいけないかを分かっていない場合に、ルールを甘く見て、違反のハードルを下げることがある。
3) ルールに納得していない
ルールが厳し過ぎる。あるいは不公平だと感じられると破られやすい。
4) みんなも守っていない
社員研修で習ったルール(指差し呼称)も職場の先輩・同僚がだれも実践していないなら一人で守るのは難しい。
5) 守らなくても、注意を受けたり罰せられない
ルールに従うよう強力に働きかける手段として、違反者に対する注意や処罰がある。これらは残念ながら「お願い」より効果的で即効性があることを認めざるを得ない。

・スキル・モデルと認知モデル
 スキル・モデル       認知モデル
       道路状況
        信号・標識 
        他車の行動 など
  知覚スキル         環境の認知
    ↓             ↓
  運動スキル         意思決定
    ↓             ↓
  運転行動          運転行動 
スキル・モデルでは「交通環境の困難度がドライバーのスキルを上回ったときに事故が起きる」と考える。
認知モデルでは交通環境の困難度を正しく認知すること、その認知に基づいて行動を決定すること、そしてその行動を意図したとおりに実行することが重要だと考える。

・「事故の多くがヒューマン・エラーによって起きているので、設備ではなく人間の意識や注意力を高めることで事故を防ぐ必要がある」などと言う人がいるが、それはヒューマンエラーという概念を誤解している。ヒューマンエラーはシステムの中で働く人間が、システムの要求に応えられないときに起きるものなのだから、対策は設備を含めたシステム全体で考えるべきである。この意味で、ヒューマンエラーは失敗やうっかりミスと同義語ではない。ヒューマンエラーはシステムの中で起きる、人間の判断や行動の失敗なのである。

・栃木県の川治温泉で1980年11月に起きた川治プリンスホテル火災では、非常ベルが鳴った後に、従業員が「これはテストですからご安心ください」と誤って放送したこともあって、多くの宿泊客が逃げ遅れ、45人もの死者を出した。
一つの老人会では、リーダー格の男性が様子を見に廊下に出たところ、階段付近からうっすらと煙が上がってくるのに気がついたので、同じ会のメンバーに呼びかけて別の階段から避難した。しかし、もう一つの老人会は、皆のんびりとお茶を飲んでいて、多くの人が、そのテーブルを囲んだまま煙に巻かれて亡くなってしまった。よく確認もしないで誤報ですと放送した従業員も「正常性バイアス」にとらわれていたに違いない。

・JR北海道の石勝線第1ニニウトンネルで2011年5月に起きた特急列車の火災事故でも、乗務員が「正常性バイアス」にとらわれていたのではないかと思われる。運転士は煙は見えるが炎は見えないと指令に連絡し、指令は車内での待機を指示した。そして、煙が車内に立ち込めて息苦しいほどになってもなお、緊急事態が起きていることを認識しなかった。車掌のほうは、車内にとどまるよう放送をした後に、念のためにトンネル出口まで歩行できるかを調べに出た。乗客はしばらくの間、車内に放置されてしまったのだ。このとき乗客たちが自主的に列車のドアを開け、全員が真っ暗なトンネル内を歩いてトンネルの外に出ることができたのは、不幸中の幸いであった。若くて行動力のある乗客が多かったからかもしれない。

・防災心理学の専門家である広瀬忠弘によると、パニックは決して起きないわけではなく、次の4つの必要条件が満たされると発生する。
1) 緊迫した状況に置かれているという意識が人々の間に共有されていること。
2) 危険を逃れる方法があると、と信じられていること。
3) 脱出は可能だという思いはあるが、安全は保障されていないという強い不安感があること。
4) 人々の間で相互のコミュニケーションが正常には成り立たなくなってしまうこと。

・リスクの3つの因子
1)「恐ろしさ」
2)「未知性」
3)「人数規模」

・心理学者でただ一人ノーベル賞を受賞した学者がいる。ただし、ノーベル心理学賞というのは残念ながら存在しないので、受賞したのはノーベル経済学賞である。ダニエル・カーネマン。
どちらを選ぶか
A 100%の確率で8万円もらえる
B 85%の確率で10万円もられる
多くの人が選択肢Aをとる。選択肢Bの期待値は8.5万円(10万×0.85)なので合理的判断に従えば選択肢Bを取るべきである。
人間はそれほど合理的には行動しないこと、リスク判断には主観的要素が大きく作用し、そこには心理学的な原理や法則があることをツヴァイスキーとカーネマンが示した。それがノーベル経済学賞に値すると評価されたのである。ツヴァイスキーは亡くなっていたので受賞を逃した。
C 確実に8万円損をする(払わなければならない)
D 85%の確率で10万円払わなければならないが、15%の確率で一円も払わなくてよい。
この場合は、選択肢Cよりも選択肢Dを選ぶ人が多い。
確実に損をすることが分かっている選択肢より、もしかしたら損をしなくても済むかもしれない選択肢が好まれるのである。この現象は「ギャンブル的認知バイアス」と呼ばれる。

・損に注目するか得に注目するか
A 対策aをとれば200人の命が助かる
B 対策bをとれば1/3の確率で600人の命が助かるが、2/3の確率で一人も助からない。
政府はどちらの対策を取るべきか尋ねたところ、7割以上の人が選択肢Aを支持した。
C 対策cをとると400人が確実に死ぬ
D 対策dをとると、一人も死者が出ない確率が1/3あるが、600人の死者が出る可能性が2/3ある。
今度は8割近い人が選択肢Dを支持した。
対策a~dは統計的にすべて同じ効果である。しかし、選択肢A対Bのように、「命が助かる」というプラスの側面に注目させるような表現をすると、確実に200人の命が助かるという選択肢が高く評価される。逆に、選択肢C対Dのように「死ぬ」というマイナスの側面に注目させるような言葉遣いをすると、死者が出ない可能性がある対策を支持する人が増える。

・リスク判断に限らず、集団で意思決定する際には、個人の判断の総和よりも極端な側に偏りがちであるということである。この現象を「集団意思決定の極性化(または分極化)」と呼ぶ。

・「安全」とは「リスクが受容できるレベルより低いこと」と定義することもできるのだ。
「安心」とは、安全かどうかは自分では判断できるだけの知識や情報を持ち合わせないが、基準を決めた専門家、リスクを扱う事業者、その事業者を監督する規制当局を信頼して、リスクの存在を忘れることができている心理状態と言える。

・専門家と素人の間で話がかみ合わない3つの理由
1) 素人は確率を無視して、被害が発生したときに結果に悲惨さに目を奪われるからである。
2) 素人は問題になっている特定のリスクだけを考え、すでに受容している他のリスクとの比較をしない傾向がある。
3) 素人はある特定のリスクを避けた場合に発生する別のリスクのことを考えないためである。

・木下富雄と吉川肇子と共同研究によると、科学技術のよい面ばかりしか伝えない一面的コミュニケーションに比べ、よい面とともに悪い面をも伝える画期的コミュニケーションのほうが、メッセージの送り手に対する信頼性が高く評定された。

・リスクのモノサシ
 2006年 NHKブックス  10万人当たりの年間死亡者数
ガン    250
自殺     24
交通事故   9
入浴中の水死 2.6
火事     1.7
自然災害   0.1
食中     0.004(2000年)
落雷     0.002

・生物学者の福岡伸一著「もう牛肉は食べても安心か」
「リスク分析がいうところのリスクの数値化とは一体何か。それは端的にいって、死者の数である」、「フグ毒と狂牛病原体が同列に扱いうる“毒”ではないことは明らかである」、フグ毒で死ぬ人と狂牛病で死ぬ人間は同じではない。これは実質的に同等ではない死者である。フグはある意味で時間の試練をくぐり抜けて私たちに納得されたリスクである。対して、狂牛病は人災であり、人為的な操作と不作為によって蔓延した、全く納得できないリスクなのだ」「リスク分析は現状を改革する熱意もその力を持ち合わせてはいない」
この本は2004年に出版されたものだが、いま読み返してみると、福島原発事故で放出された放射性物質による被ばくリスクを、他の既知のリスクと比較して論じる立場(それはある程度の被爆リスクを受け入れ可能と論じる立場とほぼ重複する)に対する痛烈な批判とも読める。

・「腐ったリンゴ理論」
「エラーや事故を起こすのは一握りの頼りない、できの悪い従業員であり、彼らを職場から追放すれば、システムの安全性は確保できる」
しかし、リンゴが腐る環境をそのままにしていたのでは、腐ったリンゴを取り除いても、別のリンゴがまた腐るだけである。

・「マネージ」とは「やりくりする」こと
「リスク・マネイジメント」というのは、リスクの存在を認め、必要ならある程度は受け入れつつ、リスクを伴う活動を何とかやりくりして遂行することなのである。

・「墓標安全」死人が出て初めて安全対策がとられる。

・「ヒヤリハット報告」が少ないと嘆いている安全担当者がいるが、報告を受けるだけで何もしないのでは、そのうち面倒くだくなってだれも報告しなくなるのは当たり前である。

・スレット・アンド・エラー・マネイジメント
多くの航空会社で、運航乗務員(パイロットら)にスレット・アンド・エラー・マネイジメント(TEM:Threat and Error Management)の教育・訓練が行われている。
TEMでは、起きたエラーを素早く発見して的確に対処する前に、スレットを減らし、飛行中に遭遇する可能性のあるスレットを予防し、それらをできるだけ避け、発生した場合には早期に発見して対応することでエラーの発生を予防するスキルを学ぶ。つまり、スレットをマネージするのである。

・運転免許証のICチップを読み込ませないとエンジンがかからないようにし、免許証を引き抜くと停車してしまうようにすればよいと提案している。盗難防止にもなる。

・安全への動機づけ4つの戦略
1) リスクを避ける行動の利益を増やす
 無事故ドライバーに対する自動車保険の割引、運転免許証の有効期間延長など
2) リスクを避ける行動のコストを減らす
 安全な車やチャイルドシートなど安全器具に対する補助金交付。
3) リスクをとる行動のコストを増やす
 交通違反に対する罰則強化、たばこへの増税がある。
4) リスクをとる行動の利益を減らす
 ワイルドはタクシー料金を距離制ではなく時間制にするとよいと書いている。

・職業的自尊心は仕事の技量を高めたいというタイプの業務意欲と安全態度を支え、ルールを破ってでも工程を守るというリスキーな行動を抑制し、様々な心理的要素を介して安全行動意図にプラスの影響を与えていることが明らかになった。

・誇り高く生きること、将来に希望を持つこと、この二つが安全への動機づけの鍵であるなら、だれもが誇り高く生きられる社会、だれもが将来に明るい希望を持てる社会を創ることこそ、日本をより安全な社会にする鍵となるのではないだろうか。

・安全対策によってリスクが低下したと認識すると、人間の行動がリスクを高める方向に変化する可能性があることは、自動車運転に限らない。防波堤・防潮堤と避難行動、低タールたばこと喫煙、登山道の整備や発信機の普及と山岳遭難など、様々な領域で考えるべき問題を提起する。

感想
この本は”目から鱗”でした。
安全対策を講じると、さらにリスクを冒す行動をとる人が出てくるので、結果的に効果が出ていない場合もあるとのこです。

誇り高く生きること
将来に希望を持つこと
この二つは安全だけでなく、まさに仕事の姿勢、生き方だと思います。


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