Ambivalent Blog

e-Tetsuによる「アート」と「釣り」の生活誌

IBMのオープンソース戦略

2005-04-10 | ◆ビジネス
CNETがIBMのテクノロジー&ストラテジー部門バイスプレジデントの講演として以下のような発言を紹介している。

「外部コミュニティのエネルギーを活用したいと
 思う場合、知的財産に対するプロプライエタリな
 アプローチと、よりオープンで協力的なアプロー
 チとのバランスをうまく取らなければならなくな
 っている」

つまり、LINUXなどのオープンソース・プロジェクトのサポートと、ベンダー固有ソリューションとのバランス感覚が求められるということだ。

発言では、「外部コミュニティのエネルギーを活用したいと思う場合」、と能動的な姿勢を見せているが、内実は外部コミュニティのエネルギーに抗し切れないというのが現実であろう。オペレーティング・システム、アプリケーション・サーバー、そしてデータベースというのは、基盤ソフトベンダーが何としても確保した領域である。何故ならばそこには強いネットワーク効果が働き、顧客囲い込みが可能だからだ。

それにも関わらず、IBMがLINUXのようなオープンソースを積極的にサポートせざるを得ないのは、オープンソースの持つネットワーク効果が独自の基盤ソフトの持つネットワーク効果を上回るのではないかという懸念があるからだろう。オープンソースがこれだけのネットワーク効果を持ちえたのは、オンラインでの協同作業が可能であったこと、開発者がその発展に積極的に貢献していること、結果として予想以上に高い信頼性が確保されたこと、そしてソフトウェアは複製・配布が極めて容易であること、があげられるだろう。

なお、この記事も何故IT企業がオープンソースに取り組むのかを分析していて面白い。オープンソースとIT企業の関係については、また別途整理したいところ。

こちらの記事では、基盤ソフトはもはやコモディティであり、ライセンス料に上乗せされるマーケティング・コストにお金を払うのはもったいないとかなり厳しい論調。

オンデマンド型への転換を図るシーベルの業績

2005-04-09 | ◆ビジネス
シーベルの第1四半期の結果が、市場の予想を大きく下回る見込であると報じられている。

"Siebel reveals shocking prelims" CBR Online

シーベルによると第一四半期の売上見込は下記の通り。売上見込が予想を大きく下回った原因はライセンス収入の伸び悩みであった模様。

ライセンス収入  $75m
メンテナンス収入 $122m - $123m
サービス収入  $100m - $102m
--------------------------------
合計 $297m - $300m

しかし、シーベルの売上構造を見ると、ライセンス収入の比率は25%程度でしかない。ソフトウェア会社としては奇異な感じであるが、ソフトウェア発売当初にはライセンス比率の高かったものが、徐々にメンテナンス及びサービスへと比重が移っていったものであろう。従って、現在のシーベルはサービス主体のソフトウェア会社といえる。

ソフトウェア会社としてはライセンス収入から、メンテナンス及びサービス収入へと売上基盤が移行するのは自然な流れであるが、 サービス収入がおよそ1/3を占める状況は、そのソフトウェア導入が結構面倒であることを示唆する。それ自体が悪いわけではないが、機能としてコモディティ化した部分については、Salesforce.comのような定型型サービスによる切り崩しに合っていると考えられる。

一方、上記の数字には表れていないが、シーベルのオンデマンド型サービスである"CRM OnDemand"の契約高は$11mで、前年対比245%の伸びとなっている。急成長を遂げている一方、シーベルの契約シート数である33,000に対し、競合のSalesforce.comは227,000ということで、まだまだ苦しい状況が続いている。安定的なサービス収入のもと、いかにビジネスモデルの転換を図るかがやはりキーとなるか。


オープンソース時代の顧客ロックイン戦略

2005-04-03 | ◆ビジネス
昨年、オープンソースをベースとしたビジネスを目論むSourceLabsが設立されたが(その時のエントリー)、同社がApache/MySQL/PHPをセットにしたソフトウェア・コンポーネント(スタックと呼んでいる)をリリースした。

『米新興企業、オープンソースの「AMP」パッケージを提供開始』 ZDNet Japan

ただし、同社が取り扱っているのはそもそもフリーソフトであるから、ソフトウェアはフリーである。収益の源泉は、フリーソフトの稼動テストを通して、フリーソフトを利用して信頼性の高いシステム構築を可能とするノウハウを提供することにある。

オープンソースは、特定のOSやアプリケーションサーバー、データベースからユーザー企業を自由にする。結果として、ユーザー企業は高額のソフトウェアを購入する必要も、その後のメンテナンスを支払う必要もない。また、ベンダー側の都合による高額なアップグレード繰り返す必要もなくなる。つまり、ユーザー企業は、特定のベンダー・プラットフォームへロックインから逃れることができる。

しかし、オープンソースには稼動を保障する特定可能な責任者はおらず、さらに複数のオープンソースの組み合わせ稼動の保障となれば、さらに難しくなる。ただし、今後SOA化が進展すれば、オープンソースの利用は、ますます複数のソフトウェアをいかに連携させられるかがキーとなる。

そうした点に目をつけたのがSourceLabsのような、オープンソースの稼動確認やサポートを生業とする企業である。面白いのは、これが新しい型の、つまりオープンソース時代の顧客ロックインであるように見える点である。ユーザー企業は、オープンソースを活用することで特定のソフトウェア・ベンダーにロックインされることから逃れられるが、オープンソースの組合せ稼動をサポートするオープンソース・サポート・ベンダーにロックインさせられることになる。

なぜなら、オープンソースが複雑化するにつれ、企業はオープンソースを利用したシステムの信頼性を維持するために、これらのベンダーのサポートなくしては立ち行かなくなるからである。ただ、個々のベンダーにロックイン出来るかは、こうしたオープンソース・サポート市場がどのようにセグメント化されるかによるであろう。

ハートフォード生命のビジネスモデル

2005-04-03 | ◆ビジネス
4月1日付けの日経金融新聞によると、ハートフォード生命の日本における個人年金の資産残高が147億ドルとなり、前年同期比の2.3倍となった。同社の全世界の年金保険販売の3割を占めるまでに成長したという。

ちなみにハートフォード生命が日本に進出したのは2000年と、つい最近のことである。しかし、2004年3月末におけるハートフォード生命の日本における販売拠点数は4,931である。そのほとんどが、銀行や証券会社などの代理店であり、そのハートフォード生命自体の従業員数は400名にも満たない(2003年)。営業職員数はわずか55名である。

営業拠点数の推移をみると2001年度までわずか173であったものが、2002年度末に一気に3,536まで増加する。そして2004年度末には4,931である。この拠点数増大のきっかけは2002年10月の保険商品の銀行窓販解禁にある。

この販売チャネルの垣根撤廃がいわゆる保険業界の製販分離を可能とし、販売チャネルを持たない外資系の攻勢を可能としたわけである。大垣氏の言うところの金融アンバンドリングの典型であるが、拠点数の推移とその規模を見ると、その徹底ぶりに改めてアンバンドリングの実情を実感させられる。

東京三菱と中国ソフト会社の提携

2005-04-02 | ◆ビジネス
日系の金融機関が、海外ITベンダーとの取引を行う際に、日系SIベンダーをリスク低減の観点で中間におくことはそれほど珍しくない。しかし、この記事を読むと、そうした状況もこれから徐々に減るかもしれないと予感させる。

『東京三菱、中国企業向け決済業務で中国ソフト大手と提携』  NIKKEI NET

記事によれば、東京三菱と中国の独立系ソフトウェア会社「用友グループ」との間での提携は、東京三菱銀行の決済サービスと用友グループの会計ソフトを連携させるものであるようだ。

かなり、特定目的のための提携であるとはいえ、このように日系金融機関が海外ベンダーと直接取引を行うことが増えてゆけば、日系ITベンダーの存在意義がますます問われることとなる。