THE SAPPORO TRANSIT AUTHORITY (S.T.A)

札幌で活動しているブラスロックバンド、STA(The Sapporo Transit Authority)です。

笑い仮面/楳図かずお

2018-03-25 01:40:02 | free form space

日本が誇る怪奇漫画の第一人者、楳図かずお先生。昭和30年代生まれの子供たちの多くが楳図かずお恐怖の世界に恐れ慄いたのです。あの一度見たらトラウマになってしまう不気味なまでの画風や独特なストーリー展開!
楳図かずお代表作品といえば、やはり「猫目小僧」「まことちゃん」などが挙げられますが、他にもたくさんの傑作、名作、いや…怪作が数多くあります。私が小学生の時のこと。少年画報に連載されていた人気作「笑い仮面」
あのあまりにもインパクトのあるタイトルと主人公の悲劇が強烈に焼き付いていて、ずっと気になっていてこの度数十年ぶりに読んでみました。
「あれ?こんなストーリーだったんだあ?…」とちょい肩透かしを食らった感じでしたが、懐かしさに浸って思わず少年時代にタイムスリップしてしまいましたねー^_^。
ストーリーは…昭和初期、太陽の黒点が異常をきたして地球の全てを焼き尽くしてしまうという事をある博士が発見して発表しようとするのです。その事実を闇に葬ろうとする軍部に囚われの身となった博士は笑い仮面を装着され、獄門島に閉じ込められてしまいます。からくもその島から脱出した博士。それから長い年月が流れて、ある日本の村に密かにこもって研究を続けていた博士の姿が。不気味な笑い仮面をつけたままで。近い将来、焼け野原となる地上から脱出するために、人間の本能でアリ人間と化して地下深く潜んでしまうという事実が発覚。そこから笑い仮面とアリ人間との過酷な戦いがはじまる…。
いくつかハッキリ覚えていた場面は、仮面をつけられる時、二度と外れないようにのたうち周り悲鳴をあげる中で焼きごてを押し付けられるという残酷な描写。嵐の海に断崖絶壁からダイブする笑い仮面。
何の意味があってあの仮面をつけるのかとか、髪が伸び放題の笑い仮面だけど目鼻口からは毛が伸びてないとか、今読むとあちこちツッコミどころ満載だけど楳図かずお先生でなければ到底無理な発想はさすがです。
おまけについていた短編3作がこれまた強烈な作風で脳裏に焼きついてしまいそう。「首」なんてまさにその最たるもの。
「独眼鬼」は珍しくも戦国時代を扱っていますが、ストーリーは武将となるべき兄弟の残酷なる運命。人間の心奥深くに巣食う怨みの恐ろしさよ…!
最高に面白い発見だったのが最後に収録されていた「怪獣ギョー」
楳図かずお先生の作り出すストーリーの特徴は、今の時代を予期していたのではないと思えるほどの鋭い悲劇的なる視点。単なる怖い話で終わらない。
主人公の少年は病弱ないじめられっ子。差別を受け(クラスメート達だけにとどまらず、先生からも。親はちっとも親身になってくれない)
いつも海を見ながら1人涙を流していたのです。そんな時、酷い怪我をした不気味な魚と出会い仲良くなります。孤独な自分と似たような境遇に共感し、初めて友達ができた嬉しさで毎日密かに住ませている洞窟へ餌を与える為に通い続けます。この魚は「ギョー!」と叫ぶ為に少年はギョーと名前をつけてあげます。気持ちの通いあったギョーと少年でしたが、少年は病に倒れてしまうのです。ギョーを心配した少年は、大人たちにギョーの様子見と餌やりを頼みます。不気味な姿にビックリして殺したりしないで!と懇願する少年と約束を交わしたのに、やはり大人たちはあまりにも醜いギョーに驚き殺してしまい海に捨ててしまいます。悲しみに泣き崩れる少年。長い年月が流れて少年は立派な原始工学の権威を誇る先生になっていました。
と、そんな時、原子力発電施設が異常をきたしてしまい爆破事故の危機に陥ってしまうのです。
いくら原始工学に長けた先生でもすでに手遅れな状態。恐怖と絶望感の中、つい無意識のうちに先生は「ギョー!」と叫んでしまうのです。
すると海の彼方から津波と共に巨大な怪魚に成長したギョーが現れて原子力発電施設を破壊して全て事なき状況に収めてくれたのです。
ギョーは主人公の少年との友情を忘れてはいなかったのですね。静かに再び海に帰っていったギョー。
暴れ回るシーンは怪獣映画みたいですが、津波、メルトダウン、いじめられっ子、差別、などなど今読んでも古さを全く感じさせない内容に驚愕。

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