10月15日、ロシア正教会はコンスタンチノープル総主教庁と関係を断絶すると発表した。
私としてはついに来ましたねという感じなので驚いてはいないが、正教会にとっては大事なので今後の推移には非常に興味をそそられる。
Russian Orthodox Church breaks ties with Constantinople after it made Ukrainian church independent
Published time: 15 Oct, 2018 16:33
Edited time: 15 Oct, 2018 16:39
https://www.rt.com/news/441323-russian-orthodox-church-ukraine/
こじらせた直接の問題はウクライナなので、ウクライナにナチ残党であるバンデラ主義者を入れて、ロシア世界からウクライナ部分を切り取ろうとした西側世界は、当然に、コンスタンチノープル総主教側についている。というより、この人たちが総主教を押したから総主教はこんな世紀の事件を引き起こしたというべきでしょう。
そこで、現在のところ、ロシア世界の崩壊に力を入れて来た主犯である西側の賊徒の極東代理人たる日経新聞は、なんであれロシアが悪いといわんばかりの記事を書く。
面白い!!
ロシア正教会、コンスタンティノープルと断絶 ウクライナ独立承認に報復
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO36527040W8A011C1EAF000/
【モスクワ=古川英治】ロシア正教会は15日、キリスト教・東方正教会の権威であるコンスタンティノープル(現イスタンブール)総主教庁と関係を断絶すると発表した。ロシア側が管轄権を主張するウクライナの正教会の独立を承認する方針を決めたことへの報復措置。ロシアとウクライナは事実上の戦争状態にあり、宗教にも対立が飛び火している。
あたかも他人事みたいに書いてるところが盗人猛々しいわけだが、最後のパラグラフがまたふるってる。
ロシアがウクライナ領クリミア半島を武力により併合し、同国東部にも軍事介入したことで、ウクライナではロシア正教会離れが加速した。キエフでは14日、コンスタンティノープルのバルソロメオス1世全地総主教に謝意を示す大規模な集会が開かれた。
2014年に起きた、ウクライナクーデターを4年経って、何事もなくこのように表現するのが、この人たちの真骨頂でしょう。メディア上の真実を真実だと思いなす宗教集団西側は、地上の事実には一切興味がない。
ということで、地上の記録として2014年の記事を貼っておこう。史上もっともあざといクーデターと呼ばれる2014年の西側主導のウクライナでのクーデターから1ヶ月目のあたりでは、アメリカの方針も固まり切れず、恐る恐るといった状況だった。
アメリカがソ連に見えた日
■ 法王ポジションがないのが正教会
日経の記事では触れてない(というより触れたくないんだろうが)が、理解のためには、正教会には法王というスーパーな地位を持った人はいないという構造上の違いを知ることが大事。
正教会の構造は、それぞれの民族ごと、あるいは多分コモンウェルスごとというべきなのかもしれないが、とにかくざっくり言って現在の国に似たような線ごとに、独立教会があって、それ以外に古代から続く4つの総主教座がある。
で、これらは互いに独立で平等というのが原則。
だから、コンスタンチノープルにいる人は格式的エライんだが、西方の法王のように王様みたいに勝手に何か決められるという体制にはなっていない。
このあたり、東方教会が国連、西方教会がステルス帝国に似てて興味深いよなぁとかいつも思ってる。
それはともかく、そういう中で、ウクライナというのはもともとロシア世界の1つの地域のことであって別に民族単位ではなかったし今もまだない。また、現在のウクライナはソ連の中の行政区であって、民族国境でもなんでもなかったのにソ連崩壊後独立したことから、遡って、あたかもウクライナが昔から(曖昧な言い方だが)あったかのようなことになっている。
懐かしいこの地図。2014年にさんざん使った図ですね。現在のウクライナというのは、ソ連の中で行政区として付加されていった集積にすぎないので、ウクライナにロシア人がいるのがおかしい、みたいなバカなアメリカ人の言ってることを本気にするとアホになる。
で、いずれにしてもそうやってソ連崩壊後、つい30年ばかし前にウクライナという国ができたので、そこに、ウクライナに独立教会をたてようという動きがあった。
これだけ聞くとそんなにへんな話に見えないわけだが、上でも縷々述べたように、基本は、ウクライナをNATOの入れて、対ロシア戦線の最前線にするために各種の取組が何十年、いや100年単位で行われている中の一環なので、ロシア側(モスクワ総主教側)は、静観から反対に動き、ウクライナの中でも気づいている人たちはいる模様で新しいウクライナ教会が力を持ったとはいえないようにみえた。
無論、他の正教会もどこもウクライナに新しく建てた教会組織を認知していなかった。
そこに、2014年のクーデターがあり、言った通りだろー、となった。新ウクライナ教会が集めた人々が動きを首謀していた部分もあったため。
ということで、ウクライナを正教を使ってさらにロシアから離そうという運動は、要するに運動としては退潮していっただろうと思われる。
そこで、いろいろ画策はあって、一言でいば、コンスタンチノープルというある種の権威が、このウクライナに出来た新教会を認めるという動きを取った。
それに対して、他の正教会が反発し、代表格のロシアの正教会が、コンスタンチノープルの動きは教会法にも違反してるから認めないといって今般断絶を宣言した。
という成り行きだと言っていいだろうと思う。
■ 正教会と法王のいる教会
直接今回の問題では出てきていないが、それを超えて、西方のカトリック教会は、一貫して東方側への拡大意図を隠していないだろう、ってのも問題を複雑にしている、あるいは根幹にある問題だ、と言っていいでしょう。
要するに、ウクライナという場は、現在、ヨーロッパ勢力(西方教会+NATO)がロシア世界に突っ込んでいるその最前線なわけです。
で、それはまったく1000年越しの攻防だというのがまったく面白いの。
正教会&カトリック教会
ヨーロッパ1000年のロシア恐怖症
で、いろいろ考えるに、1917年、一連のナチズム運動、今般のNATO東方拡大からウクライナの奪取と並べてみて、西方教会(バチカン)がこれらに無関係と考えることは著しく不合理であるように思える。
だから、2016年にモスクワ総主教とカトリック教会の法王が会うという史上初の出来事は、これに対するある種の決着だろうと思えた。
正教会&カトリック教会
その後こんなこともあった。バチカンがお宝をモスクワに持っていって展覧会をした。
ということから考えるに、今般のコンスタンチノープル総主教による無理押しというのは、独ソ不可侵条約を結んだのに、やっぱりバルバロッサ作戦を決行してしまったナチなのか、それとも、現地一派の暴発で終われるのか、どちらかということになるんでしょう。
いずれにしても、アトス山のじいちゃん僧侶たちがモスクワと敵対するようには、私にはとうてい思えない。スラブ圏一円もだいたいそうではないかと思う。
プーチン、アトス山訪問
だってこういう話だから。
だって、そうなんですよ、よく考えれば、現状は正教徒にとって100年ぶりに保護者が復活している、なんですよね。どこあろうそれはロシアのことですよ、もちろん。
ロマノフ朝はずっと正教徒の保護者を任じていたのに、ソ連は宗教ご法度にしてしまった。そこで、正教徒たちは確かにコンスタンチノープルに総主教の座はあったわけだけど、場所によっては周囲を敵に囲まれたも同然だったのだなぁとあらためて思った。
敵というとそれはイスラムかと思う人が多いだろうけど、いいやそれが違うってのが現代のというか中世以来連綿と続くある種の公然の秘密のような気もする。正教徒をこの世でもっとも憎んでいるのはカトリックでしょう、だって。カトリックはなんとかして正教徒の陣地をわが物にせんとあくなき東方攻撃をかけた、または、かけ続けている。
遡れば、東ローマ帝国を実質的に亡ぼしたのはオスマンというより、ベネチア&ラテン諸国による第四回十字軍だという話もある。つまり、西欧勢はコンスタンチノープルにあったローマ(東とはカトリックからの名称)を略奪して、崩壊させ、勝手にラテン帝国たらいうのを作った、と。
なんか、このへん今の the West の行動に本当に似てるなぁとか思えて笑えないような笑っちゃうような気もする。
そしてロシアは現在こんな風にシリアに存在する。
正教会の古代教会とは、コンスタンチノープル(トルコ)、アンチオキア(シリア)、アレクサンドリア(エジプト)、エルサレム(イスラエル)。
■ まったくの妄想
ふと思うに、今の動きはBチーム(ナチを養成した側)が敗北してんだろうというのは前から書いている通りで、その読みに変化はないのだが、それだけでなく、直近でいえば70年代あたりから組織化されていたのではなかろうかと思えるある種の動き、多分三極委員会なるそれ、の敗北を見ているのではなかろうか、などとも思える。ブレジンスキーも死んだことだしね。
もしそうであるならば、まぁ日本は根本的に立ち位置考えんとならん状況なんじゃないですかね。わかりませんが、多分、そう。
いやでも場所はトルコだけど、コンスタンチノープル総主教座が管轄している人はほとんどがトルコ国内のギリシャ住民とその周辺の歴史的な正教徒って感じでそれ以上の人数は多分いないのではなかろうか・・・と思います。
だからトルコ国が果たしてこれに関与する余地があるのかどうか不明です。
あと、在外の特にアメリカ内の正教徒がいることはいる。この動向が一応注目か。いやしかし、大した人数ではないと思う。
バチカンに懐柔されてるトルコ教会は西側の第五列ならトルコ政権に刃向かうか?