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宴の始末(20) アルカイダはまだいるよ&穀物大国ロシア

2016-11-18 20:12:49 | 欧州情勢複雑怪奇

トランプの安全保障補佐官にマイケル・フリンの可能性があるらしい。前から噂はあった人。

この人はオバマ・ヒラリーグループのISを巡るごたごたにブチ切れていた人という印象がとても強い。RTにも、フォックスにも出演して、いずれの場合も、いやもう常にブチ切れてたと思う。あまり政治向きの人には見えなかった。

しかし、ということは、トランプがはっきりと言って西側メディアを結構駆け回った、オバマとヒラリーはISの共同創設者だ、という非難の路線が表に出る、という話なのだろうか。

仮にそうならないとしても、マイケル・フリンを出すぞ、という意味はそれを含意する。ということは、オバマ、ヒラリー側に、引かないのなら(つまり自らIS押しのサウジだのトルコだのを馬鹿なことを止めろと説得しないのなら)、それじゃしょうがない表だってやるしかなくなるな、と示唆しているとも言えるかも。

一応、オバマ政権とイギリスは、アルカイダのシリア支部のアルヌスラに繋がってるグループを殺そうとしている模様ではある。ワシントンポストの10日の記事。

Obama directs Pentagon to target al-Qaeda affiliate in Syria, one of
the most formidable forces fighting Assad

https://www.washingtonpost.com/world/national-security/obama-directs-
pentagon-to-target-al-qaeda-affiliate-in-syria-one-of-the-most-
formidable-forces-fighting-assad/2016/11/10/cf69839a-a51b-11e6-8042-
f4d111c862d1_story.html#comments

これはつまり、万一、シリア&ロシアの攻撃でそこらへんの首脳陣が生きて捕まったら、洗いざらい吐かれそうなので、それは困る、ってんで慌てて回収してんだろうと先週から噂されている。

と、なんてかこう、シリアはアメリカにとってのマジの「汚れ仕事」になっているんだが、しかし、これをどう申し開きするつもりなのかもまったく見えないのがオバマ政権。

大統領選挙ですっかり忘れられているけど、

宴の始末(19) アルカイダと歩む新しいアメリカ!

この状況は解決されていないですからね。

 

ただ、そんなことをシリア国が気にする必要はないので、シリア軍はちょぼちょご攻撃しては支配地奪還に勤しんでいる。ロシアは、大統領選挙周辺の時は緊張感を高めていたように思うな。起こり得る最悪の事態は、多方面からの飽和的ミサイル攻撃だろうと思うので、それに対するカウンターとしていろいろ積み増ししていたのだろうと思う。

ちなみに、だいぶ前に紹介した、ISを作ったのはそもそも誰だよ by プーチンの動画が、ついに1,000万ビューを超えてました! どこにもデータはないけど視聴者最大手はアメリカ人ってのは間違いないと思う。一時期凄い勢いで騒ぎになってここまで来たから。

Putin Tells Everyone Exactly Who Created ISIS

 

■ 食べ物支援を続ける大豊作のロシア

その一方で、ロシアはシリア向けの援助物資をせっせと配っている。シリアは戦地になっていなければ必要な小麦は自前で出せる国なのだが今はそれができないので、ロシアが支援している。最初はロシアでパンを焼いてもってきたが、最近はシリアで焼いてる映像が出てたりしたので、小麦援助で現地生産支援も併用って感じなのかも。

で、折しもロシアは大豊作! EU、アメリカを抜いて穀物輸出No.1になるそうです。穀物スーパーパワーとBloombergは書いている。

Russia Becomes a Grain Superpower as Wheat Exports Explode
http://www.bloomberg.com/news/articles/2016-10-06/russia-upends-world-
wheat-market-with-record-harvest-exports

Bumper harvest comes as production in France and the US slips
https://www.ft.com/content/af66f51e-6515-11e6-8310-ecf0bddad227

 

EUはフランスが天候に恵まれず収穫を減らし、アメリカもあんまり調子よくないんだそうだ。それに対して、ロシアは生産量が伸びた上に天候にも恵まれたんだそうです。

2月に書いた記事の見込みが本当だったという話ですね。

ロシア、2016年小麦輸出世界一になる見込み

 

で、天候要因だけで伸びたわけではないのでこの様子は結構長続きする見込みで、要するにロシアはウクライナと共に黒海積み出しグループとして、しっかりとした国際的な穀物輸出国となった、って状況らしい。

これはソ連が農政の失敗で、あんなに素質のある土地を持ちながら穀物を輸入していたことから考えると、ロシアにとっては非常に大きな進歩(現在のロシアはソ連みたいに多数の国の面倒もみないとならない立場じゃないからやり易い、ってのもどこか関係のある問題だとは思う)。

もともと土壌が良いところがかなりある国なので、整備されてきた以上ロシア産の穀物、特に小麦は長期的に大きなシェアを持つだろうと考えられている模様。

で、その向け地として、ロシアにとって好条件なのは、大量の小麦の輸入国であるエジプト。なんせ近いから、そりゃ圧倒的に黒海勢は有利。

上のFTの記事よれば、エジプトだけでなく、湾岸、北アフリカ諸国でも、米国、オーストラリアから黒海積み出しにスイッチしている国々があるらしい。前から指摘されている通りロシア産はフレート(船積み運賃)が安いからそこでも大きな強みが発生しており、南アフリカやメキシコまでロシア産小麦の買い付けが行われているんだそうだ。

捕捉

ブラジル、メキシコは現地通貨安によってドル建ての米国産穀物が高くなったためさらにロシアに目が向いている模様。(ここ

そして、シリアは農業生産が復活したって、ロシアとの関係は非常に強くなることが予想される。誰が考えてもそうなるでしょう。一つの興味深いエピソードとしては、シリア向けの小麦でロシアが非常に安価に売ってることに対して、これは通常の売買じゃなくて支援だろう、これじゃ競争にならない、と言う業者さんがいる、というのが業界紙みたいなところに出ていた。

深読みすれば、ロシアは大豊作であるうちに、西欧、なかんづくフランスにぐじゃぐじゃにされた北アフリカ勢に売り込みをかければ、シェアを取りに行けるのではあるまいか。

 

■ 好例の妄想

と、この様子は、つまり、肥沃なる黒海の恵みが地中海東岸へと結ばれていますという話なわけで、いや~、なんども書いてますけど、これって、なんかこう、文明的なものを感じてしまう。 the West にとってどうなんだろうと思わずにはいられない。私はいいけど。

コンスタンチノープル、アンチオキア(シリア)、アレクサンドリア(エジプト)、エルサレム(イスラエル)ってのが正教の重要地点だったりもするし。

でもって、ロシア軍のS-400配備を許してしまう、しまった、そうなっちゃったことの意味って本当に大きいと私なんかは思うわけだす。もう、ショッキングというべき。ソ連でも(あるいはソ連では)できなかった好条件、好感情の上にロシアは中東に存在している。

 

今起こってることって150年ぐらいが一つの枠組みでこれが壊れそうってのは容易にわかるんだけど、しかし、それを壊すとそこにひっかかっていたもっと古い枠組みがぐらつきそうで、そうするとそれは500年ぐらいの「歴史」の話だなと思うわけです。ちょっと怖いような楽しいようなってところもある。それはすなわち、the West、あるいは狭義に言うヨーロッパがほどけているという意味でもあるだろうし、近代なるものの見直しが求められているとも言えそうだし、西欧の勃興を許した債務貨幣主義の行き詰まりとも言えるだろうし、イエズス会終わりだぜ、という話かもしれない。

このへんでもちょっと書いた通り。

ヨーロッパ1000年のロシア恐怖症

なんか、なにせ、奥歯が全部ぐらぐらみたいになっているのが今の ヨーロッパとその後継としてのアメリカだと思う。アメリカはだからそこから「独立」すればいいとも言えるのかも。

 


 

資本主義の終焉と歴史の危機 (集英社新書)
水野 和夫
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問題は英国ではない、EUなのだ 21世紀の新・国家論 (文春新書)
エマニュエル・トッド  堀 茂樹
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2 コメント

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『ローマの穀倉シリア』 (ローレライ)
2016-11-19 05:33:20
『シリアの麦』はローマ時代から『スパゲティー用』に輸出され『ローマの穀倉シリア』だった。地中海沿海には『ローマの穀倉』だった国々が広がっている。
返信する
地中海東岸の歴史を復活 (ブログ主)
2016-11-19 14:47:54
そのローマが終わってコンスタンチノープルの「ローマ」が続いている時代の歴史が忘却されているのが問題だな、って思うんですよね。西の欧州が「中世」だった頃、こっちは別に中世もへちまもなく続いていたわけですから。
返信する

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