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6月24日モスクワでパレード&「歴史のない政治はない」by 独外相

2020-05-27 01:21:29 | WW1&2

ようやくなんだかコロナ騒ぎが下火に向かっている感じがする。未知だ未知だと騒ぎを作ったメディアに対する信頼性は各国でより以上に低下している感じ。

日本の場合は恐怖政治の地が出ちゃった感じで、不合理に回りの視線を気にしてマスクをし続ける人がいて非常に心配だったのだが、こうなった。

 新型コロナウイルスの感染拡大防止策に関して、加藤勝信厚生労働相は26日の閣議後の記者会見で、夏場にかけては熱中症にも注意が必要だとして、「屋外で人と十分な距離が確保できる場合にはマスクを外すこと」を呼び掛けた。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200526-00000056-jij-soci

 

当然ですね。この時期、多くの場合、熱中症の方が断然怖い。

 

■ 6月24日モスクワでパレード

そんな中、コロナ騒ぎによって大幅に縮小されたのが5月8日、9日の対ナチス戦勝記念の祝典。

今年は75年周年を記念して、ロシアはいつにもまして盛大にやる予定だったし、後で見てみればドイツも人を集めて、様々なことを考えるきっかけにしようとしていたらしかった。

今年の初めに、「ホロコースト」という問題が正しい理解へと一歩を踏み出したこともあり、また、ドイツとロシアの間でちゃんとしたデータの交換などが行われているのも良い傾向でしょう。いい加減与太者の歴史とはお終いという時期になってもいい頃。

「ホロコースト」犠牲者の4割はソ連市民

 

5月9日に行われるはずだったモスクワでのパレードは、6月24日に行われるそうだ。

Russia to hold Victory Day Parade on June 24 — Putin 

https://tass.com/politics/1160483

この日は、1945年6月24日に本物の第1回の対ナチス戦勝パレードがクレムリン広場で行われた日。なので、ある意味歴史に忠実になったようなもの。不思議なものだ。

 

■ 5月7日付けのドイツ外相の発言

 

書くタイミングを逃していたんだけど、ヨーロッパ戦線の終わりを記念した今年の5月8日の1日前には、ドイツのハイコ・マース外相が非常に興味深い見解をシュピーゲル誌に書いていた。

Keine Politik ohne Geschichte

https://www.spiegel.de/politik/deutschland/keine-politik-ohne-geschichte-a-d74deffe-c0f3-4ff7-a6af-dc713e74c6f3

 

私はドイツ語が読めないのでGoogleで英語と日本語にしつつ理解した。

 

歴史なくして政治はない

No politics without history

 

というタイトルで、現在欧州で懸案となっている、第二次世界大戦はヒトラーとスターリンが起こしたという話に触れている。

その件に関して、後半の方でこんな具合に明言している。

ドイツが単独でポーランドを攻撃して第二次世界大戦を始め、ドイツが単独で「ホロコースト」という人道上の罪を犯しました。それに疑問を投げかけ、他の人にその罪をなすりつけようとする人は誰であれ、犠牲者に不正義を押し付けようとしています。それは歴史を使って、ヨーロッパを分離させています。

Germany alone unleashed the Second World War with the attack on Poland. And Germany alone is responsible for the human crime of the Holocaust. Whoever sows doubts about it and pushes other peoples into the role of perpetrator inflicts injustice on the victims. It exploits history and divides Europe.

 

aloneを「単独で」と訳してみた。ドイツだけがやった、ドイツだけがやったと強調しているのは明らか。

なぜこんな言い方をするのかというと、言うまでもないが、再々書いている通り、ポーランドあたりを中心に、第二次世界大戦はヒトラーとスターリンに同等に責任があるという主張がなされているから。

そして、中・東欧に今こういうことを強力に主張させなければならないのは、いろいろ背景はあるにせよ、言うまでもなく、冷戦終結時にNATOをロシア側に東方拡大しないと言ったのに、クリントン政権の時に東方拡大をしたことが最大の問題になってるであろうと考えられる(仮想敵がないなら同盟なんていらない)。これこそ世紀の余計な行動だった。

NATO東方拡大:ゴルバチョフはマジで約束されていた

 

だから、そのおかしなトレンドに対して、問題の核心であるドイツのマース外相は、このエッセイで、そういうことじゃないから、とあっさり蹴った。

でも、マースが特別なのではなく、基本的にドイツ政府もドイツの歴史学の重鎮たちも、ヒトラーとスターリンを同一にして、この2人がポーランドを分割したのが第二次世界大戦だった、みたいな背景抜きの議論に加わったことはほぼない、と言っていいかと思う。

何度も、トラップはあったように見えるが、ドイツの歴史学会の主流になったことはないと思う(この話は日本にも関係があるのでそのうちエントリーする予定)。

 

で、時節柄そこに注目が集まったけど、マース外相のこのエッセイは、今後のためのプラクティカルなアプローチでもあるなと思った。

ロジックとしては、

(1) 歴史のない政治はない、そして政治のない歴史もない。

(2) 1945年5月8日は、旧ソ連の人たちにとっては英雄たちを思い起こしパレードをする日、西側の連合国も祝う。

(3) 旧衛星国であるポーランドやハンガリー、東ドイツの人たちはこれとは違う考えを持つ。

(4) しかし、5月8日は、1つとてもクリアなことを示している。私たちが人として、そしてnationとして誰なのかをこの歴史が形作ったということだ。

(5) ドイツの過去について、歴史修正主義に用心しないとならないのは、合理的な思考が国家的な神話に取り込まれたことがあるからだ。

ときて、

こういうことを道徳的だからという意味で言っているのではなく、過去にそういうことがあったからこそ、偽の議論を見過ごすべきじゃない、だからこそ、攻撃された人たちが攻撃者となるような議論を見過ごしにすべきじゃない、

となって、上で書いた、(6) ポーランドに攻め込んだのはドイツだ、ドイツ単独だ、という話に繋がっている。

 

なるほどだなと思う。

で、(4)が重要なんですよね、この構造は。いろいろ解釈はあるだろうけど、いずれにしても、多くの私たちは1945年5月8日を境にして出来た国を自分の国としているわけで、これをひっくり返すようなことをしてみてどうするのよ、みたいな感じ。

これはさりげなくとても重要。というのは、特にハンガリー、ブルガリア、チェコあたりは、ここを境にようやく国民国家が出来たようなものだから。

それ以前は、ドイツ系の上流階級が国を仕切って、一般人は非ドイツ系というのが基本構造だった。あんまり権利のない状態だったと言っていいでしょう(建前はともかく)。ハンガリー人の国、スラブ人優位の国になったのは実にまったくソ連の影響が及んで、ドイツ系の支配階級がいなくなったからという側面はとても大きい。ポーランドは(国家的とは到底いえない)一部ユダヤを介した支配階級が力を持たない状態は、ソ連というスラブ人主体の存在がなければ達成できてないでしょう。

 

ということで、ドイツ人とは思えない、こざっぱりとしたプラクティカルなことを書いたこのマース外相のエッセイは、当然のように西側メディアからは無視されてるけど、この先のドイツ人の多くも普通に受けいれられそうな態度ではあるように思える。

基本的に、こんなこといろいろ隠したって始まらないわけで、隠して偽の神話を作ってどうするよ、ってなる方がそりゃ健全。

ドイツ、ソ連軍捕虜の記録をロシアに渡す&産業的大規模殺人

 

 

■ 黙殺できないものはある

日本の場合はここらへんの話は黙殺することになってる。

渾身の冷戦護持派大勝利であるらしい日本 (2)

 

日本国内では、そもそも1945年に終わった戦争についてちゃんとしたメモリがない状態ですましているわけだけど、これって、支配層にとっては良いのかもしれないけど、一般日本人にとってのnationの形成には1ミリも役に立たない。

マースじゃないけど、歴史のない政治はないでしょう。その意味は、現在の政治的決着をするその人たちは過去を参照して生きている人たちなわけね。ということは、対峙するAとBで参照系があまりにも異なっていたら、話がうまくできない。

まして、決定的にどちらかが嘘を言っていたとしたら、まぁ信頼関係ってできないでしょう。普通に考えればわかる話。


 

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