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国連創設から75年のビデオ国連総会

2020-09-23 19:43:30 | アジア情勢複雑怪奇

国連創設から75年周年の国連総会はビデオ上映が主体の総会となった。

異例は異例だけど、だけど別に今までだって各国首脳のスピーチに誰かが質疑をするとかいう設定でもないから、国連に詰めてる外交官たち以外にとっては動画を見るという点で特に変わらないといえば変わらない。

もちろん外交官たちが交流しつつ話をしつつ、ということができない現状はよろしくない。首脳のスピーチとは別。

 

一つのトレンドとして、トランプがコロナは中国のせいだから責任取らせろと言ったという話が大きく取り上げられ、米中の対立が埋まりません、みたいな設計から書いているものが多くあるように見える。

中国政府とWHOが悪いと言ってるトランプの動画。

好きな人は好きでしょうがそうでない人にとっては、アメリカが文句ばっかり言ってる小国みたいになっとる、という感じかも。

 

それに対して中国の習近平は名指しを避けながらもコロナの政治利用を批判する一文は確かにあった。

しかし習近平の演説は他にも見どころがある。

どの国とも冷戦に入る意図はない、というのもそうだし

私としては、

どの国にも、グローバルな事象を支配したり、他者の運命をコントロールしたり、発展の利益を自分のためだけにしておく権利などない。

“No country has the right to dominate global affairs, control the destiny of others or keep advantages in development all to itself,” Xi said, adding that no nation should be the “bully or boss of the world.”

と来て、「ユニラテラリズムは行き詰まった(終わった)」と続けた下りがもちろんとりわけ印象的だった。

Unilateralism is a dead end

 

 

それに対して、ロシアのプーチンは安定の語り口というべきか、1945年はナチズムとアグレッションを終わらせて、国連というシステムができた年で、今年はそこから75年ですという現行システムの成り立ちを解き、国連憲章ができ、それが現在の国際法の主要なソースとなっていますという現行の世界にとっての重要事項をしっかり押さえた。そうなんです、既に慣習化するぐらいの年月が経っていることを意識しましょう。

 It was built on the ultimate foundation of the UN Charter that remains the main source of international law to this day. 

画像

 

その他諸々国連という機構が立ち上がっていることによって出来てきたこのいわゆる戦後世界の概論みたいなものが語られている。後で読み返して復習しよう。

http://en.kremlin.ru/events/president/news/64074

 

で、プーチンがずっと語っている常任理事国の拒否権の重要性に触れ、5つの常任理事国は世界の安定にとって非常に責任があるんだから会って国連の重要な原則を確認しあうべきだ、という最近の主張を繰り返していた。

前にも書いたけど、この件は、今年の初め頃には、中国、英仏はなんとなくこのG5サミットに同意していたような感じはあった。

プーチンは、

私たちのパートナーたちはこのイニシアチブを支持していることは心強いです。現在の疫学状況が改善したら、私たちはこのサミットを直接会う形でホストすることになっています。

It is encouraging that our partners have supported the initiative. We expect to hold such summit – in person – as soon as epidemiological situation makes it possible. 

と言ってる。

 

もし、上述したようにG5諸国がこの混乱を収集しようという気が本当にあるのなら、特に英米が本気ならできるんでしょう。

そこから考えると今年のこの騒ぎというのは、結局この流れへの抵抗だったんじゃないかという気も相当する。マジで。

米の代理人代表のトランプは、本気かどうかは依然不明ではあるけど、5月9日のロシアのビクトリーデーに参加したいと言ってたことは事実。

 

といった話の後に

ロシアのワクチンは他国にも供給し、かつ、国連職員が希望すれば無料で提供しますといい、

私たちの地球のすべての人々に平和と幸福がありますように

I wish all the peoples of our planet peace and well-being. 

で演説を締めた。

まあその、リーダーだね、ほんと。

 

中国人が総力あげて対米で文句を言いまくる状況なので、それまで長いことそういうことのお当番だったロシア人は静かにバランス見てる、みたいな感じになっていて興味深い。

 

■ 一極支配妄想問題

で、習さんが言った「ユニラテラリズム」というのは、ウォルフウィッツ・ドクトリン、フル・スペクトラム・ドミナンスの一つの言い方ですね。

unilateralism、ユニラテラリズムとは、平易な日本語でいうのなら、一方通行主義でしょうか。

つまり、一方から指令が出て、出された側には受ける以外の機能も権能もない。

言い換えれば、一極支配のこと。私はこれを「一極支配妄想」と呼んでる。

また、ワシントン・コンセンサスという、主に経済分野で言われるそれも異口同音の趣旨。

ワシントンで作ったコンセンサスを他者は従うという設計。

 

だから、ロシアと中国が、mutual respect(相互尊重)という語をよく使うけど、これは単にご挨拶みたいに言ってるわけではなくて、一方通行主義に対するアンチなわけですね。他者にも意思はある、他者も主体だ、ということ。

 

で、一極支配妄想こそ西側の凋落のガンだという論は今に始まったことではなくて、アメリカ人の間でも、このポール・ウォルフウィッツが作成したという「ウォルフウィッツ・ドクトリン」が出た時、批判が出た。狂ってるやろ、お前という話。

で、この、ポール・ウォルフウィッツは、本人は米国生まれだが父親はポーランドのユダヤ人で米国に移民してきた人。

ここらへんはいわゆるネオコンの集団に多くみられる特徴。皆さんユダヤ人という点にだけ拘るけど、やっぱりポーランド、オーストリア、ドイツ、ロシアとそれぞれ特徴(グルーピング)はあって、ネオコンとネオリベは前2者が圧倒的に多い。

これは欧州史を考えればまぁ当然ですが、それはそれとして、この全球は全部アメリカが支配する、各国の「正統な利害」はアメリカが決めるという設計をしてみたはいいけど、各国の「正統な利害」を非常に贅沢に取り込んであげるよ、という仕様ならともかく、一方的に殺されたり、壊されたりする国が続出するわけだから、なんでお前の奴隷にならないとならんねん、という集団が出てくるのは理の当然だった。

90年代にソ連が壊れた頃は、やりたい放題できて、過激派とかテロリストというより、人倫に悖る存在としかいいようのない集団を使ってセルビアを貶めて、コソボを分割させてみたりしたけど、その基地外行動をきっかけにロシアが立ち上がり、いろいろあって、現在見るように、ロシアと中国が非常に密接に協働する政治勢力ができあがった。

この30年は、一極支配妄想集団による蛮行とそれに対する抵抗の歴史みたいなもの。

 

■ 「ルールに基づく」トリックの終わり

で、今後昨日のスピーチを基にいろんな記事が書かれると思うけど、昨日の「Moon of Alabama」ブログのドイツ人将校bさんのまとめは素晴らしかった。

「ルールに基づく国際秩序」の終わり

The End Of The 'Rules Based International Order'

https://www.moonofalabama.org/2020/09/the-end-of-the-rules-based-international-order.html#more

 

うっかりすると、ルールに基づく世界が終るのか、じゃあ野蛮社会に戻るんだなと読めるわけだけど、現在の国際政治の文脈において、「rule-based」という語を西側のリーダーたちが使う時、そこで含意されているのは、上述の一極妄想なわけです。

つまり、ルールはアメリカ(or ディープステート)が決める、そのルールに従う世界秩序を私たちは運行します、という話。

これは、現行の国際法および国際慣習を遵守して、という態度とはまったく違う。

bさんが上手く説明しているのでそれをちょっと改変して示すとこんな感じ。

「ルールに基づく国際秩序」には、民主主義や人権、基本的自由、多様性などのあいまいな概念が含まれる

これによって、「ルールに基づく国際秩序」への違反という事態を簡単に主張でき、そのような違反に対して、制裁や戦争という形で罰を科すことができる

That the 'rules based international order' is supposed to include vague concepts of 'democracy', 'human rights', 'fundamental freedoms', 'diversity' and more makes it easy to claim that this or that violation of the 'rules based international order' has occurred. Such violations can then be used to impose punishment in the form of sanctions or war.

 

よくやってますね。民主主義でない、人権を侵害しているということは「ルールに基づく国際秩序」に違反しているのだから、国際社会は一致して制裁を課すべきだ、とかいうやつ。

しかしまず第一にその主張は適切なのか、みたいな道筋はすっとばされる。主流メディアが勝手に「裁判」をしちゃうから。

1999年あたりのユーゴ解体とセルビア弾圧では、私たちは一貫してセルビアのミロシェビッチ大統領が非道なことをしたのが悪い、ヒトラーのようだとかなんだとか読まされ、聞かされ、捏造映像を見せられたわけですが、終わってからのハーグ国際裁判所の判定では、ミロシェビッチは有罪になっていない。

それどころか、西側諸国が「自由の戦士」と持ち上げたコソボ解放軍は、薬物売買、人身売買、臓器売買を手掛ける国際的な不良グループだったことが、当時から言われ、そして現在でもその疑いは消えていない。

シリアのISはアルカイダを善意の反政府主義者に仕立てたわけだし、リビアの場合は、騒乱を作るためにヒラリーの国務省グループが法外で米国法に違反する武器輸出を行って準備をして、ガーダッフィ―派の違法行為だか不法行為だかをメディアが書きたてた。

 

ということで、明らかに、明白に、現行法体系に違反しまくっている人たちが、国際社会において「ルールに基づく国際秩序」を言い立てるというこのトリックが問題なわけだけど、それが次第に多くの人に理解され、さらに重要なことは、2016年のロシアのシリア介入に見られるように、力には力で、そして捏造には、外交を通して事実関係を整理する知能と根性で、本当に抵抗する勢力が表れた。

そして現在のその抵抗勢力は、ロシアのみでも中国のみでもなく、ロシアと中国となって立ち現れている、と。

 

■ 論考

Moon of Alabamaさんの解説も役に立つけど、その中で紹介されている論考も役に立つ。様々なフィールドから、中露の関係がしっかりしたことで、もう一極支配妄想は立ち行かないという趣旨が解かれてるのが現状。

bさんが紹介している中でも、インドの元外交官のBhadrakumarさんの書かれた、中露の同盟は成熟した、と多少歴史的に振り返って書かれたものも素晴らしい。

 

■ プラクティカルに考えて

と、現状把握はいいとして、今後どうなるのか。アメリカの波乱は続き、それにつれて属国はより一層政治的自由を失うと思う。

でも、アメリカが、フルスペクトラムはまずかったっすよ、とか、一極支配妄想はやめますと自分で言うなんてことはもないでしょう。ルーズベルト並の人じゃなきゃできないでしょう、これは。

したがって、今と同様、一人で気張っていろいろ言うけど言うことを聞かない勢力がある、という感じで推移するだけでは?

もちろん、アバンガルドが発射され応戦するミサイルによって世界のあちこちが当分住めない事態になることが全くないとは誰にも言えないけどね。それは冷戦時代だって一緒。

で、これが進む。

そしてプロパガンダが残った

そしてプロパガンダが残った (2)

 

だから、こういう低下はイヤだと思った集団があれば、この破れ傘の「フルスペクトラム」から抜けようと思うはずだけど、だけど、西側全体にそういう議論ができそうな感じがない。これが今日最も大きな問題でしょう。政治議論が現状についていかなくなって久しい。

 

ということで、中露+イランがユーラシアの中を混乱させない恰好にしていって、中露とその間に挟まれた旧ロシア/ソ連関係国の領土を通る交易が順調であれば、いずれにしても、海側から通商妨害して相手国の経済を破壊しようとする古臭い「七つの海」支配を誇る人たちの立場は漸次低下する。

ロシアに資源があり、中国に市場があれば、それだけで自足的。そこに、東シベリア・太平洋石油パイプラインと、原子力砕氷船を含めロシアが総力あげてまもる北極海航路が加わったことが特段に大きい。

といった状況がただ続くと思う。

 


 


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1 コメント

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西側はアメリカ頼みの近隣侵略路線! (ローレライ)
2020-09-24 20:04:34
日本とかドイツやイスラエルなど西側諸国は近隣侵略路線でアメリカ頼み!だから狂人化したアメリカに反対で着ない!
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