この間、ドイツのジャーナリストがCIAとBND(ドイツの情報機関)と協力して記事書いてました、こんな人たちばっかりなんですよジャーナリストってという告白を行ってちょっとした話題になっているという記事を書いた。
ドイツ人ジャーナリスト、プロパガンダ報道に加担してきましたと告白
ちょっとした話題どころではなくて、このフランクフルター・アルゲマイネ紙の元編集者だったUdo Ulfkotteさんの告発本がドイツでベストセラーになっている模様。7位だという話。今ドイツのAmazonを見たら、ジャーナリズムのジャンルで1位、この本にコメントが60以上付いている。ってことは、マジで話題になってるってことなんだろうね。
Gekaufte Journalisten: Wie Politiker, Geheimdienste und Hochfinanz Deutschlands Massenmedien lenken | |
Udo Ulfkotte | |
Kopp Verlag |
タイトルはそのものずばり、英語との直訳だとBought Journalist「買われたジャーナリスト」。日本語版になるなら、買収されたジャーナリストって感じですかね。
Russian Insider(RI)というサイトに出ていた記事によれば、要点は、ドイツの主要紙のジャーナリストはCIAとドイツの情報機関から買われてる、それらの機関からの資金援助をなんとも思ってない体制になっていて、当然のことながら彼らのための記事を書く習慣になっちゃっている、というところで、それぞれ結構な証拠があるからこそ本になっているということのようだ。
本についてのインタビューで著者が語っている重要点はこんな感じ。
- 自分で書くのではなくCIAのエージェントが書いたものを自分の名前で出したことさえある
- ドイツのジャーナリストは、German Marshall Fund、the Atlantik-Brücke等の機関と非常に密接で、一回そういう機関と接触しだすと、選定されたアメリカ人たちと友達になることになって、こっちは友達同士で協力しているんだと思っていると、そのうち「お願いがあるんだけど」になっていくんだよ、と。
ジャーマン・マーシャル・ファンドはなにやらエージェントくさい団体だと思ってたことがあったので、やっぱりそうか!というところ。この団体がNATOがらみの世論調査をよく出してる。これって答えてる調査対象は誰なんだろうと結構不審に思ったことがあった。
- フランクフルト・アルゲマイネ紙はUlkotte氏の出版に際して、法的手続きを取ると脅したが、結果的には今のところ訴訟は受けていない。
「彼らはだって僕があらゆることに証拠を持ってるってわかってる」からできないんだろうと言っている。
■ アメリカとの距離を測ってるらしいドイツ
とういわけで、ドイツはスパイ問題の次はジャーナリズムとCIAでひと騒ぎしているわけで、去年の金(ゴールド)を返せ問題といい、ドイツはつまり国をあげてアメリカとの距離の取り方を変えてるってことなんでしょう。
多分、ユーロがらみで金融的には協力しろ、嫌だ、なんだと~という関係にあると思われるのでドイツ政府は強気に出れない、みたいな状況が現状ではないのかと思われる。それに対して産業界(つまり実業系)は、アメリカの産業スパイ問題が長いので、喧嘩というのじゃなくて、仕切りを高くすべしという姿勢でしょう。情報機関も強化してるようだし。
だから、その一環として、アメリカ直のメディア支配を崩すという感じになっているんじゃないのか(少なくとも善意の告発者がいるならそれを放置しよう、という気がある)。
そもそもドイツは自前の海外向けサイトもあるし、シュピーゲルみたいな代表紙も良くできた英語版を作ってるので、その意味では既に「自分の声を出す」体制にあるとは言えるので、ある種の、自立運動がかなり進行中ということなんだと思う。
■ 日本は?
ドイツの事例として見てるけど、日本も恐らくこれとまったく同一の機構なんだと思うな。重要事項については、エージェント通しで記事のサンプル原案みたいなのが出てるんじゃないかな、と。
今回のウクライナ危機は非常に良い例だったなぁと思う。
日本というウクライナと殆ど何の関係もない国の各社の記者がこれだけ同質の記事を書いたということは、おそらくテンプレート、サンプル記事がどこかから回っていて、それを翻訳してちょっと手を加えてるんだろうと思ってました。
■ RI
上で書いたRussian Insiderというサイトはつい2か月ぐらい前に出来たロシア系の英語話者によるサイト。まだベータ版。
ロシア国内では活発な議論があって、別にみんながみんな国営サイトを参照してるって話じゃないというのが外に伝わないのも問題だし、それ以上に西側メディアがいい加減なことを書きまくってる状況を放置できない、そこで手短な記事で西側報道の間違いを正したり、西側が載せないものを載せようというのをコンセプトとして、ロシア人の英語話者の投資家の人が立ち上げたようだ(自分で話しているのをどこかで見た)。
タス通信とかノボスチ、Interfaxみたいなのは公式発表としての機能は果たすし、利口な専門家の落ち着いた分析を出すのにも適してる。しかし、反撃機能がないってのが思えば弱点だった。
で、RIで書いている人は本職のジャーナリストだけでなく、本職は別にある人がその専門性を生かしてコメントするみたいな感じ。日本でいえば、ブロゴスとかアゴラとかと同じ発想だと思うけど、RIは短い記事にするという基本姿勢を取っているっぽいので、編集者の編集権は確立しているものとみえる。私がよく見るブロガーの人も何本か書いていた。
しかし、それよりなによりロシア語母語で英語を話す/書く人が世の中こんなにいっぱいいるっていうのは、思えばソ連解体後の混乱の最大の副産物(西側に流出した人が多かったしビジネス界は英語が幅をきかせた)だと思うんだけど、ロシア愛が全然すたれなかったってのはどういうことなんだろうかと、日本の敗戦後のことを思って驚く。