歩くたんぽぽ

たんぽぽは根っこの太いたくましい花なんです。

ノスタルジア in NHK教育

2011年06月06日 | 日記
夕方頃になると、”The子ども向け番組”がNHK教育で放送される。
対象は小学校に上がる前の保育園児から小学校の低学年くらいだろうか。

その時間帯は大概ニュース番組で、最近の話題はもっぱら管総理の退任時期、あるいは民主党や自民党から成る大連立政権などお上のお話。
少し気分を変えようと、チャンネルをNHK教育にまわす。
すると、淡い色使いのセットの中で、顔のある椅子たちがなにやらわいわい楽しげにしている。
そのまま見ていると、「にほんごであそぼう」というコーナーが始まった。
はじめに出てきたのが、ピエロの格好をした野村萬斎。
彼が狂言独特の口調で、戦争の時代からつらつらと昭和を語り始める。
ノスタルジアなんて言葉が幼い子どもに伝わるわけはないし、その怪しい語り口といい、シュールな画といい、子ども向けの番組とは到底思えなかった。
ハイセンスかつマイノリティな番組で、深夜の民放が少数の人向けに流すようなそんな印象である。

そんないちコーナーに感心している間もなく、すぐに次のコーナーが始まる。
すると今度は、子どものお遊戯会のようなセットに三味線を持った変なおじさんが現れる。
彼は最初におどけてみせて、少し太いけどとてもいい声で三味線に合わせて歌いだす。
なんと詩的な歌詞だこと。
一言も聞き逃すまいと身を乗り出した。
それもそのはず、それは宮沢賢治の詩であった。

雲の信号
               宮澤賢治
あゝいゝな、せいせいするな
風が吹くし
農具はぴかぴか光つてゐるし
山はぼんやり
岩頸だつて岩鐘だつて
みんな時間のないころのゆめをみてゐるのだ
  そのとき雲の信号は
  もう青白い春の
  禁慾のそら高く掲げられてゐた
山はぼんやり
きつと四本杉には
今夜は雁もおりてくる


私は休む間もなく感動した。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする