なにがどうなってか、この日の午後、古い元中学校の講堂の屋根裏に私たちはいた。
現在は鉄工所として使われているこの建物も、河川改修にともない、あと1年ほどで取り壊しが決まっている。この春ころから、私たちの間では、噂にはなっていた、とても魅力的な建物なのだ。
本当は、躯体より、外部周りのガラス窓に魅かれていたのかもしれないが…(苦笑)。(なぜって?わかるでしょう。ヒントは「歪(ひず)み」)
解体のことが地元ローカル新聞に取り上げられ、その記事が、Hさんの目に留まり、移築を視野にいれた、「見学会(調査会?)」となってしまったのだ。
こんな話がでると、日常の作業(大工)を「さっ」と放り出して、不思議と何人かが集結する。
![](/58000/u57196/1000/FI1881487_0E.jpg)
間口が8間(けん)、奥行きが14間(けん)。
一間(けん)ごとに合掌(梁)が13組ある構造。
階段の部分を入れると、建築面積は約115坪。
「どうやって解体していく?」という相談が、暗闇の中で行なわれる。
天井が貼ってあるので、そう感じないが、実際は、かなり高所の作業になるし、「合掌」という構造は、建築時には下で大きなトラスを組んでおいてから、両桁の上に乗せていっているだろうから、解体は、その反対で、かなり大きなもののまま、クレーンで吊って下ろすことになる。「建物の東側にクレーン車が入れるか?」「一時保管の場所は?」など、現実的な問題が大きくのしかかる。
![](/58000/u57196/1000/FI1881487_1E.jpg)
Hさんが、ふと冷静に「この建物って移築する価値あると思いますか?」と、あえて聞いてきた。
一つは、地域の文化財的な価値。一つは、木材資源としての価値。この二つは間違いなくある。
しかし、もう一つ、とても大事な「価値」がここにあることに気づいた。
それは、「木造技術の伝承」なのだ。…ただ、その場は言葉でうまく表現できずにいたのだが。
私たちは「切ってから」木が長く生き続けることを考えるのが仕事だが、彼は、まさに、立っている木を扱う仕事をしている。
以前に道路拡幅のために、「株」が畳一枚ほどの「モミジ」の老木の移植の相談を受けたことがあるという。
その木を見た彼は、「道路計画のほうを見直すよう」にとその場を去ったそうだが、それについて彼は語る。「移植すれば間違いなく枯れる。あんな老木は滅多にないから、これからの若い職人たちにもずっと見せてやりたい…」。
それだ!
この合掌建築も、これから大工をしていく若い人たちに「見せて」やりたいのだ!
「伝統(伝承)」が「伝説」になってしまっては手遅れなのだ。
まだまだあと50年以上は生きれるこの「講堂」。そう簡単に「殺して」はなるまい。
(9/22)
☆ 一口に住宅建築といっても、本当にいろいろある。工法の種類もさることながら、「デザイン」てやつは、いつも大工を悩ませる。
![](/58000/u57196/1000/FI1881487_2E.jpg)
現在は鉄工所として使われているこの建物も、河川改修にともない、あと1年ほどで取り壊しが決まっている。この春ころから、私たちの間では、噂にはなっていた、とても魅力的な建物なのだ。
本当は、躯体より、外部周りのガラス窓に魅かれていたのかもしれないが…(苦笑)。(なぜって?わかるでしょう。ヒントは「歪(ひず)み」)
解体のことが地元ローカル新聞に取り上げられ、その記事が、Hさんの目に留まり、移築を視野にいれた、「見学会(調査会?)」となってしまったのだ。
こんな話がでると、日常の作業(大工)を「さっ」と放り出して、不思議と何人かが集結する。
![](/58000/u57196/1000/FI1881487_0E.jpg)
間口が8間(けん)、奥行きが14間(けん)。
一間(けん)ごとに合掌(梁)が13組ある構造。
階段の部分を入れると、建築面積は約115坪。
「どうやって解体していく?」という相談が、暗闇の中で行なわれる。
天井が貼ってあるので、そう感じないが、実際は、かなり高所の作業になるし、「合掌」という構造は、建築時には下で大きなトラスを組んでおいてから、両桁の上に乗せていっているだろうから、解体は、その反対で、かなり大きなもののまま、クレーンで吊って下ろすことになる。「建物の東側にクレーン車が入れるか?」「一時保管の場所は?」など、現実的な問題が大きくのしかかる。
![](/58000/u57196/1000/FI1881487_1E.jpg)
Hさんが、ふと冷静に「この建物って移築する価値あると思いますか?」と、あえて聞いてきた。
一つは、地域の文化財的な価値。一つは、木材資源としての価値。この二つは間違いなくある。
しかし、もう一つ、とても大事な「価値」がここにあることに気づいた。
それは、「木造技術の伝承」なのだ。…ただ、その場は言葉でうまく表現できずにいたのだが。
私たちは「切ってから」木が長く生き続けることを考えるのが仕事だが、彼は、まさに、立っている木を扱う仕事をしている。
以前に道路拡幅のために、「株」が畳一枚ほどの「モミジ」の老木の移植の相談を受けたことがあるという。
その木を見た彼は、「道路計画のほうを見直すよう」にとその場を去ったそうだが、それについて彼は語る。「移植すれば間違いなく枯れる。あんな老木は滅多にないから、これからの若い職人たちにもずっと見せてやりたい…」。
それだ!
この合掌建築も、これから大工をしていく若い人たちに「見せて」やりたいのだ!
「伝統(伝承)」が「伝説」になってしまっては手遅れなのだ。
まだまだあと50年以上は生きれるこの「講堂」。そう簡単に「殺して」はなるまい。
(9/22)
☆ 一口に住宅建築といっても、本当にいろいろある。工法の種類もさることながら、「デザイン」てやつは、いつも大工を悩ませる。
![](/58000/u57196/1000/FI1881487_2E.jpg)